表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方兄妹記  作者: 面無し
33/138

祭り一回戦


俺と国建以外の参加者が来たのは、

俺が来てから三十分ほどの事だった。

今は他の野郎も含め、四人での食事中。

正方形になるように座っている。


「うまし、うまし」


神様に供えられてた食材で作った飯うめぇ!

かすかな神力も感じるし、諏訪子の力もあるかもしれない。

姫ちゃんの料理の次にうまかったものにランクインさせよう。


「よく食うなぁ零は」


向かいの席で食べている国建が言った。


「だろう」


俺は少し胸を張っていった。

まぁこんなことをしても相手には見えないんだけど。

なぜかって? そりゃあ。


「今度はこっちの山を食うか」


「じゃあ俺こっち」


「「……またすごいのが出たなぁ」」


料理として出てきたお膳じゃ足りなかったから、

どんどん作って、どんどん重ねていたら山になっただけだ。

同じようなことをしてるのは国建だけだ。

あ、大丈夫、山といっても能力で浮遊させてるから料理にはなにも触れてない。


「うまし」


「うまし、うまし」


俺の目の前の山、常人には高い。

しかし、4つの世界を回った俺からすれば低い!


「すいませ~ん、これ十皿追加ー」


「こっちもおねがいしますー」


料理作ってくれてる人を呼んで追加を頼む。

俺と国建以外の二人は普通のお膳だ。

まぁそれでも大食い選手みたいに多いが……だが俺にはかなわない!


「もっとだ、もっと食うぜ!」


「おうよ! まだまだ満腹には程遠いぜ!」


「「なんか波乱の予感がする……」」


------------------------------------


「それで? お前の名前は?」


俺は隣の男に聞いた。

ここに来た男の片方は、

いかにもおっさんやってるビゲのおっさん。

俺より十センチは身長があるし、横幅も大分差がある。

服装は普通の服(現代で言えば、一番近いのは作務衣だろうか)。

もう片方はおっさんではなくお兄さん。

体が俺より随分とでかいのはおっさんと同じだが、

服装は少し違っていて、一見は貴族みたいな感じだった。

俺の隣は貴族っぽいやつだ。


「私か?」


男は首を傾げた。俺は首を立てにふる。

ちょっと行儀は悪いが、食べる手はお互い止めなかった。


「私は束錬たばね、縄を束ねるの束に、精錬の錬で、束錬だ」


「束ね、練り上げる…そういう意味か?」


「ああ、そのとおりだ」


男は箸をおいて自分の手を見た。

長く生きると人の表情から感情が読めるようになる。

束錬の表情には自分の名を誇る感情があふれていた。


「いいねぇ、いいねぇ、

名前の意味を聞くのっていいねぇ」


「そういうお前は何なんだ?」


束錬の言葉に俺は手を止める。

親から一応意味は聞いている、親も一応考えてはいたようだ。

零なんて名前は珍しいからね。


「零、無を意味する文字だ」


「そうか、だがそれは字の意味だ」


「そうだな、名前の意味は、何者にもとらわれないもの」


いやはや、あの二人もむりやりな意味をもたせたと思ったね。

とらわれるものがない=障害無し=ゼロ=零、だもんな。

で、よみがぜろだとおかしいから、れいにしたってとこか。


「……名前と意味のつながりがよくわからない」


「ははは、だろうな。最初は俺もよくわからなかったよ」


とらわれるものがない。

両親がつけた名前通りの存在に、俺はなれているだろうか。


「……なれてるといいなぁ」


俺はそう呟いた。

意味を教えてくれた時の両親の顔が目に映る。


「いい両親か?」


「ああ、最高だよ」


少しドジなところがあるけど。


「ふむ、会ってみたいものだな」


「そいつは無理だな、ふたりともいない」


「む……失礼した」


束錬が頭を下げる。俺は首を振った。

昔は悲しかったが、今は懐かしい、年食ったからかな?

まぁいい、


「食おう、しんみりすると飯が台無しだ」


「ああ、分かった」


その後でわかったことだが、束錬の職業は陰陽師だそうだ。

得意な術は身体強化系、体を鍛えてるのも納得だね。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「予選からのルールの変更点は一つ、

こけたらアウトだったのが、気絶する、もしくは降参するになる」


御飯の後、部屋に入ってきた爺さんが最初に行ってきた。

それほど変わってはいないようだね。

過度な暴力はなし、そのルールが有るなら投げ飛ばせばだいたい落ちる。


「組み伏せれば終わりだね」


そう国建が言った。

外見はお俺より少し上くらいだが、そこからはオッサンの気配がする。

いや、気配なんかではなく半分オッサンはいってる。


「まぁ毎年のことだ、俺達例年組は大丈夫だな」


髭のオッサンがそういう。


「そうだな、関係あるのは俺だけだ」


俺はそう言った。

今回の決勝大会で初出場は俺だけ、まぁ説明しとかないとだめだよね。


「そんなに変わらないから大丈夫だよ」


爺さんがにっこり笑顔を向ける。


「そうですね、まぁ予選の通りにやっていきます」


こちらも笑顔で帰した。


「うん、それがいい」


爺さんは満足そうに頷いた。

さて、と言って束錬が手を打つ。


「面倒な説明はいいから出ましょう。

国の一大イベントですし、神だって見物なさるのだから、

目上の者を待たせるのはいけないでしょう?」


「そうだね、出ようか」


爺さんは拝殿から出ようとする。

俺達はその後を追って、ふすまを開けた。

聞こえたのは歓声。その大きな音は、空気の震えを顔で感じれるほどだった。

爆音で耳が痛い。しかも何を言っているのかはよくわからない。

目の前の三人は涼しい顔をしている、びっくりだ。

まぁおそらく慣れっこだからだろう。


「行こうぜ、この人混みの真中に行くんだ」


「ふぇ!?」


国建の言ったことはよく聞こえなかった。

けど、爺さんが寄ってきて引っ張ってきたから理解できた、大丈夫だ。

俺達が進もうとすると、人の壁が割れる。

人間モーゼ再臨の巻。


「さ、行くぜ」


「「おう!!」」


「あー新人にはこのノリがきついわー」


俺は三人の少し後ろを歩いた。


-----------------------------------


トーナメント形式らしいが、俺の相手はオッサンになった。

国建と束錬は俺の後に試合をやるらしい。

というわけで、目の前にはオッサンが一人。


「新人のあんちゃん、大丈夫か?

その細い体でよくここまでこれたなぁ」


「それはどうも、まぁそれなりに経験積んでるからね」


そう、万能超人の究極お嬢様と戦ったり、

極限の反射速度をゲーム内で出せるのと戦ったり、

一京の能力を持つ天然チートの人外と戦ったり、

ほぼ回復不能の攻撃をしてくる鬼みたいな奴と戦ったり、

それはもう、いろいろな奴と経験を積んでますとも。


「そうかそうか、まぁでも悪いな、

国建には負けても、新人に負けるほどワシは弱くない」


オッサンが腰を落とし手を構える。

柔道に似ているがよくわからない、

何処かで柔道につながってるかもしれない。

さて、俺は特に構えを持ってない、専門外だからな。

仕方ないから、手抜きないつもの姿勢でいこう。

脱力するだけの手抜き姿勢、だが、

俺はこの姿勢でずっとやってきた。


「これでいいか」


そうつぶやいてオッサンに目を向ける。

脱力した俺の目はおそらく眠そうな半眼だろう。

しかし、その眠そうな目に、精一杯の眼力を込めさせてもらった。

だが、そこはさすがの決勝大会出場者なのか、

目を細めて、こちらに眼力による殺気を送ってきた。

ああーやめて、痛い痛い、オッサンの目が刺さるー。


「始めていいかい?」


爺さんがそう聞く。

今回の審判中最年長だった爺さんは、

主審みたいな立ち位置らしい。


「いいよ」

「いいで!」


俺とオッサンは同時に返事をした。


「そうかい…じゃあ、始め!」


爺さんの声が響く。

その合図の後、オッサンは俺に向けて叫んだ。


「あんちゃん、全力やで?

そうやないと……怪我するで!」


オッサンが距離を詰め、胸ぐらに手を伸ばす。

怪我をするか……


「あんたじゃないのか?」


伸びてきたオッサンの手を避け、左手でつかむ。

そこ後、右手でオッサンの方を掴み、横向きに力を掛けた。

一方向に進もうとしている時、他の方向からの力は問答無用で姿勢を崩させる。

急な横向きの力をかけられたオッサンは、地面に転がる。

俺は倒れたオッサンにまたがり、両手を足で抑えながら、その顔面に拳を向けた。


「はい、終了」


俺は笑顔をオッサンに向けた。


「お前……」


オッサンは目をパチクリさせている。

当たり前だろうな、目の前の人間が、

普通の五倍くらいの速度で動いたんだから。

俺は力の流れを読むような技術を持っていない。

流れを視覚化する技『流体観察』

時間を弄る技『壊れすぎた時計』

二つの小細工を発動して、俺の体感時間を遅め、

オッサンの力の流れを呼んで、力を入れただけだ。


「国建みたいなのが二人もいないと思った?

ここに来てるのが俺の時点で気づいておこうぜ」


目を白黒させているオッサンに俺は笑顔を向ける。

若いからって舐めてくれるなよ?


「そうじゃないと……寿命が縮むかもよ?」


オッサンが降参したのは三秒くらいしてからだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ