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東方兄妹記  作者: 面無し
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疑う者


俺の周りを村の連中が取り囲む。

そして浴びせられる大量の質問たち。


「なんで浮かなかったんだ?」


とか、


「どうやったら地面を貫けるんだ?」


とか、


「どうやったらあの大きさの声が出せるんだ?」


とか、


「親バカすぎなのはなんで?」


とか、


「娘、それは神なる響き!」


とか……いや、最後のは質問じゃないな。

ま、それはいいとして、こういうのを浴びせられているわけだ。

俺は一つ一つに答えるし、納得しないなら何度でも説明する。律儀だろ?


「浮かなかったのは何故? 霊力が多いと体重が上がるからだ」


「地面の貫き方? 小細工だ」


「声の大きさ? 気合と小細工だ」


「親バカすぎる? 愛してるから仕方がない」


「娘が神の響き? 娘という呼び方よりも娘本体の方が神であると断言しよう」


『小細工って具体的に何?』


おそらく五、六人から同時に質問をかけられる。

先ほどの浮かなかったのは何故と言う質問もそうだが、厄介だ。

小細工の正体、俺の能力である発現させる程度の能力のことだが……言っていいのか?

うーん、おそらく言っても信じないだろう。術ならともかく、ただの能力って言っても信じてくれない。

術と言ってもどっかの疑ってかかる馬鹿は信じないだろう。

仕方がない。


「小細工って言うのはね、これのことだよ」


ポケットからお札を取り出す。

とっさに能力で作ったでたらめなお札。

こいつをネタに使わせてもらうことにしよう。


「こいつは特殊なお札でね、霊力を流すと持ち主の体を強化するんだ。

このお札の霊力パイプは感知できないから、油断している相手に攻撃するのにもってこいだ。

まぁ、欠点として加減が出来ないから、さっきみたいに投げれば、体が木端微塵になる」


こう言い訳しておこう。『投げた時点』では使っていなかった、と言えば、反則にはならない。

体重も霊力が多ければ勝手に上がると説明したら勘違いしてくれるだろ。

爺さんの笑顔が何か含んでるけど気にしない。貸しだよ? って唇が動いた気がするけど気にしない。


「さてさて、質問タイムは終了だ。次の試合の準備だ!」


まとめ役が皆に声をかける。

姫ちゃんと呼白が走ってきてお茶を渡してくれる。


「兄さん、反則ですよ」


「霊力でなく、能力だから問題ない」


「そういう問題じゃないよお父さん」


半分呆れ顔の二人。うーん、悪かったかな?

まぁいいや、なんであろうと呼白を嫁にはまだやれない。

本気で呼白がほしいなら、あの条件に立ち向かおうとすることができる人間でないと……。


「そんなことより、兄さんはこのまま能力なしで勝つんですか?

正直に言うと、兄さんの身体能力じゃ不可能ですよね?」


姫ちゃん、本当に正直だな。

まぁ事実だから仕方がない、俺は普通の人間だからな。

今回も能力を使うのはちょっと気が引ける(さっきは例外)。

こういう時は無難に済ますのがいいだろう。

今回は二回戦目で負けることにしよう。


「わかった、今回は観戦に……」


「今回の大男には剣が渡されるらしいな」


「諏訪の神様が直々に作ったもので、霊力を流すことで切れ味が増すとか……」


「しないでおこう」


「「ええ!?」」


いいことを聞いてしまった。こういう賞品とかがあるなら言ってくれよ。

こういう特別な品は手に入れたい派の人間なんだ。


「うふ、うふふふふふ」


「に、兄さん、顔が、顔が悪い人になってますよ!?」


だめだ。笑いが止まらない。

おそらく今の俺は不気味な顔だろう。


「おい零さん」


後ろから声がかかった時も、その顔のまま振り向いてしまった。

相手が少し引いてしまう。よく顔を見ると爺さんだった。


「どうしたんですか?」


顔を急いでもとに戻す。爺さんは右手に何かを持っていた。


「諏訪子様から連絡が入っての。これじゃ」


爺さんが持っていたのは布。

この時代にはまだ紙がない。手紙には粘土板や骨、皮、木の板、布なんかを使う。

因みに、粘土板から順に高級で、偉い人が使うものだ。今回は一番高い布。

中身を見ると、何やら暗号で書かれていた。


「わたしには読めん、零さんは読めるだろう? 頑張っての」


そう言うと爺さんは準備の男どもに入り、監督を始めた。

手の中の布に目を移す。正直全く分からない。しかし、そこは俺である。

全ての記述文の意味を理解する技『有効記言』、こいつを使えば簡単だ。

何々……


   零へ


知らないだろうけど、大男はいつでも私と謁見できるよ。

勝手なお願いだけど、今回は本気で勝ちに来てほしいな。話し相手がいなくて退屈で仕方がない。

本当は公平にやるべきなんだろうが、ここまで話し相手がいないと私もつかれる。

お礼は弾むからよろしく頼む。


   諏訪子


なるほどなるほど、だいたいこんな文面なわけだ。

さてさて、今回のことを整理しよう。今回の大会は優勝賞品が諏訪子特製剣。

諏訪子自身からのお礼も弾んでもらえる。俺もこの剣はほしいし、優勝は簡単。

お礼ももらえる……優勝すれば、剣と地位とバトル相手が手に入る一石三鳥!?

これは見逃せん!


「うふ、うふふふふ」


「兄さん、何か黒いですよ?」


「今回の大会、本気で勝ちに行くよ」


「お父さんの背後から黒いものが……」


「うふ、うふふふふ、うへへへへへへ」


―――――――――――――――――――――――――――


二回戦目が始まった。

諏訪子からのお墨付きのおかげで気分が軽い。

相手のことを気にせず、好きなだけ能力を使って、勝利する。

何とも楽でいいじゃないか。ズルいって? 卑怯だって? 

正々堂々戦えよって? ……スマン、今回は見逃してくれ。

さてさて、そんなことは置いておいて。

ウォーミングアップは完璧だ、今回使う技ももう決まっている。

たった一つで十分だ、誰かの持つ技術をコピーする技『似技利』。

寿司屋に行って思いついた技だからネーミングは許してくれ。

今回は体術が得意な国下の技術をもらおう。それだけで常人には勝てる。


「さっさとこいやー!」


相手に叫ぶ、目の前には筋骨隆々の男、

二回戦目にして『いいとこ』と当たったようだ。


「行かせてもらうぜ零! 術者なのはいいが、

そんなひょろっこい体じゃ、俺の勝が決まったもんだ!」


皆さんお分かりだろうか。このキャラどう考えても捨てキャラである。

勝ったも同然だ、なんて台詞は主人公以外が吐けばフラグにしかならない。

俺? 俺は大丈夫だよ。この世界では俺に勝てる生物はいない、断言できる。

伊達に三十五億年も論外人間やってませんよ。


「ま、負けたことがない、ってわけじゃあないけどね」


突進してきた男、の腕を躱し、腹部に拳を当てる。

手を伸ばし、足を踏ん張る、ただそれだけの作業。

それだけで、相手は後ろへと倒れた。


「ぐぼほぉ!」


男は腹を抑える、そのままあおむけの状態で吐いてしまった。

俺は少し慌てて駆け寄り、うつぶせにして背中をさすってやる。


「げほっげほっ……お前………はや………すぎないか…?」


苦しそうな男が訪ねてくる。

男から見ると、俺がものすごい速度で腹を殴ったように見えたんだろう。

だが、これは間違い、俺は普通に動いただけだ。


「俺は普通に動いた。これは簡単なことだよ」


俺は水を出して男い差し出してから説明を始めた。


「お前の腹に向けて拳を当てる。

突進しているお前は自身の勢いで俺の拳に当たる。

俺がやることは、お前が突っ込むのと、手が伸びきるのを合わせることと、

お前の力に負けて倒れないように踏ん張ることの二つ。

姿勢を低くすればお前は止められるから問題ない」


よくある例で言えば、走っているときに電信柱に当たると痛いだろう?

あれを腹だけで受け止めたと考えてくれ。思いっきり走っていれば、男のようになる。


「零の勝利~」


爺さんの声が響いた。


――――――――――――――――――――――――――――――


三回戦、四回戦の相手が棄権した。

理由はすぐにわかった、さっきの相手を倒した俺が規格外すぎたのである。

まぁ仕方ないよね、腹抱えて吐いてたもんね。


「ふっ、強すぎるっていうのは罪だねぇ」


「兄さん黒いです」


姫ちゃんがジトーっとした目で見てくる。

いいじゃないか、もう俺の目には賞品しか見えてないのさ!

この手に諏訪子特製の神様剣が……うひ、うひひひひひ


「ロマン、ロマンスだぁ……うふふふ」


「お父さん……」


「神様が作った武器はほとんど自分での複製ですもんね……」


ん? そう言えば五回戦目の相手、決勝戦の相手は誰なんだ?

地面に書かれた対戦表を見る。……げっ、さっきの術者君じゃないか!

視線を感じてそちらを見ると、術者君がぎろりと怖い目で睨んでいた。


「いやはや、困ったなぁ」


「大丈夫ですよ兄さん、いざとなれば記憶を改造すればいいんです」


「お母さんも時々酷いよね……」


「そういう呼白ちゃんも呼び方が変わっとるぞ~」


「「「ひゃあ!?」」」


爺さんが突然俺の背後に現れた。

全く分からなかったと言うのに驚き!

この人実は結構強いんじゃないだろうか。


「零さん、次の試合の準備をしてくれ、すぐに始めるよ」


「わかった」


準備と言われてもすることはない。

勝ちは確定しているのさ! まぁその後に何かされないかが怖いけどね。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


「よう、ちゃんと勝てたんだ」


男に向けて言う。男は笑った。


「当たり前だ、どんな手でも化けの皮を剥ぐと言っただろう」


「はぁ、こうやって簡単に疑う奴は嫌いなんだ」


こいつの場合は俺が異常に強いことと、外から来たことを疑ってる。

俺は強い、そんな強い男が手放されるわけがない。

スパイか、妖怪の類だと思ってるんだろう。

バカだなぁそれ以外でも追い出されるだろうに。


「仕方ない」


俺はニヤリと男に向けて笑う。


「相手してやるよ少年、俺はお前みたいな奴が嫌いだが、

若気の至りと言うことで許そう。気が済むまでやればいい」


「ああ、そうするよ……」


男は酔った人間のようにふらつく。

何かしようとしているのかと思った時には目の前に移動していた。


「!?」


「おらぁ!」


目の前に男の拳が迫る。

腰を落としてその拳を避けると、今度は膝が来た。


「ふっ」


後ろに跳んでその膝を避ける。

周囲の観客がざわめく。審判の四人の内の三人が反則だと叫ぶ。

だが、爺さんはそれを止めた。俺も彼らに顔を向け、人差し指を唇に当てる。


「いいんだよ、真剣勝負だ、どうせならルールなんて全部無視してくれていい」


その発言にまたも周りがざわめく。

俺はざわめきを無視して男に向き直る。


「ルール無視だ、術でもなんでも使ってくれ」


「後悔するんじゃねーぞ」


男はそう言うと懐からお札を取り出した。

だが、皆は気づいているだろう。ルールがなくなった。

俺の枷が外れました、使ってほしい? 使ってほしい?


「『激魂歌』」


霊力は体内に圧縮する。どうしても漏れた霊力で風が吹く。

目の前の男は俺の気配が変わったことに気付いたようだ。

おそらくは霊力が上がったのも気付いてる。それを感じて、男は、ニヤリと笑った。

これのおかげで自分が有利になったとでも言うように。

首を傾げた直後に地面に亀裂が入る。


「なっ!」


足もとから現れたのは触手。

その触手が俺の体何本も突き刺さった。

次の瞬間、俺の中の大量の霊力が、奪われた。

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