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東方兄妹記  作者: 面無し
22/138

番外・子供薬

そう、これは都市でのお話。


「さぁ、これを飲むのよ神姫」


「いやです」


「そんなこと言わずにちょっとだけだから、ね?」


「永琳さん、なんか悪い人みたいです…」


ここは都市中心近くの永琳の家。

そこでは少女と女性がもみ合っていた。

もみ合うと言っても少女が押し倒された体制なだけなのだが。

少女、神谷神姫は、ただ今永琳に謎の薬を進められていた。


「大丈夫、今回は改良もしたし、実験は零で済ませてあるから…」


「それ子供薬ですか!?」


永琳が持っているのは以前に零が使った子供薬の改良版。

効果に性格の幼児化が付加されたものだ。

いやいやともがく神姫に、永琳はさらに体重をかける。


「うふふ、さあ…味もちゃんとおいしくなるようにしたから…」


「あ…う…」


永琳が薬の入った瓶を傾ける。

薬が神姫の口に落ちようとしたその時、

永琳の視界に何かが映った。

その何かは神姫の口をふさいで薬を妨害、神姫を一瞬にして持って行った。

その正体は


「永琳、お前姫ちゃんに何しようとした?」


「零···」


永林は少し黙って話を続ける。


「神姫を子供にしようと···」


「その心は?」


永林は人差し指を会わせながら答える。


「可愛いと思って」


「さあやれ」


零はその言葉で態度を変更、

神姫を羽交い絞めにして永琳の目の前まで持ってきた。


「兄さん!?」


予想外のことで動揺する神姫、

目の前には永琳の薬ビンが…


「はい、あーん!」


「うみゅ!?」


神姫の口に刺さった。


―――――――――――――――――――――――――――――


「神姫に飲ませてよかったの?」


普段は防ぐはずなのにと、永琳は言った。


「いいんだよ、だって可愛くなるんだろ?

一回みたいじゃないか!」


零は子供のように目をキラキラさせて神姫をお姫様抱っこする。


「まぁ可愛いとは思うけど、起きたときに怒られても知らないわよ?」


「はーい」


零がそう答え終わった時、神姫が煙を出して

爆発(と言っても童話のような可愛い爆発)で変化した。

そしてその寝顔を見た零は以後五百年はその時の事を聞くだけでへにゃへにゃの笑顔になったとか。


―――――――――――――――――――――――――――――――


「う…ん…」


姫ちゃんが子供化してから十分ほど、

俺はその寝顔を笑顔で観賞していた。


「ふへ、ふへへへ、ふへへへへへ」


その笑い方が異常であることは別として、

尋常じゃない笑顔は幸せと言うこと、問題ない。


「んにゅ?」


姫ちゃんが目を覚ます。

俺はすぐにクシャっと髪を撫でた。


「おはよう姫ちゃん」


その言葉に姫ちゃんは二、三度瞬きして答える。


「おあようございましゅ」


天使だ。ただ一言そう思った。

舌足らずなところがまたいい。

容姿は娘とよく似ている。

たまらず抱きしめてしまう。


「姫ちゃーん、可愛いねー」


「あいがとうですお兄ちゃん」


お兄ちゃん…だと。お兄ちゃんと呼んだか?

…お兄ちゃんも…いい! 最高だ、もっと呼んでほしい!


「もうお昼の時間だよ、待っててね、お兄ちゃんが用意するからね」


「だめです、お兄ちゃんのごはんはわたしがつくうんです」


立ちあがった俺の腰に抱き着き、

姫ちゃんが俺を見上げる。

男がこのような天使からのお願いを断れるだろうか?

不可能だ。


「いいとも」


二つ返事で了承してしまった俺は悪くないのだ。

その後抱き上げてキスしてしまったのも悪くないのだ。


「今日は何作るのかな?」


台所来た俺は隣の姫ちゃんに聞いた。

子供姫ちゃんはあちこちの棚を開けながら答える。


「おみそしうとお魚さんです…お兄ちゃんおなべどこぉ?」


ああ、可愛い、可愛すぎるぞわが妹よ。

それとお鍋は今漁ってるところの三つ右だ。


「すぐ見つかるよ」


「うーん…あ、あったぁ!」


ぽわぁと笑顔になる姫ちゃん。

ヤバい、今日は一緒にいる以外に何もしたくない。


「さ、つくいまひょう」


「うん☆」


そこからの姫ちゃんは危なっかしかった。


「うひゃあ! お兄ちゃん、火がぁ、火がぁ」


「姫ちゃん落ち着くんだ、お兄ちゃんがいるから大丈夫だ」


「うん…」


コンロの火を大きくし過ぎてあわてた姫ちゃんに萌えたり。


「ひゃ…」


「危ない!」


「あう…お兄ちゃん?」


「大丈夫?」


お皿を持ったままこけそうになった姫ちゃんを

助けて、そのしょんぼりした顔に萌えたり。


「おいしいれひゅ」


「よかったね、姫ちゃん、俺もおいしいよ」


「そうれすか、よかったれす」


笑顔の姫ちゃんを襲いそうになったり。


「俺、今日で死んでもいい」


まぁ死ねないのだけれど。

っと、時間を見ると三バカの修行の時間だ。


「よし、自慢しに行こう」


―――――――――――――――――――――――――――――――


子供になった姫ちゃんをおんぶして

都市の門に通じる大通りを歩く。


「わー」


姫ちゃんは俺の背中ではしゃいでいる。

町の様子が面白いらしく、身を乗り出している。

バランスが悪いので安定させるのが大変だ。

まぁ可愛いから問題ない。

そしてしばらくしたとき、


「…」


急に我が姫が黙った。

ある一方をじっと見つめている。

目を向けるとそこには大人たちが集まり、

一つの家に石を投げ入れていた。


「あんな奴らもいるんだな」


「…」


姫ちゃんは黙っている。

しかし、その眼には涙がたまっていた。


「姫ちゃん、ここで待っててね」


姫ちゃんを背中から降ろす。

姫ちゃんはしばらく俺のコートを持っていた、

でも少しすると自分から話して俺の方を見た。


「いってあっしゃい」


その眼は真剣で、聴く以外に選択肢がなかった。


「おい」


大人たちの集まりによって行く。


「あん? お前さん誰だい?」


中でも一番大柄な男が俺の方によって来る。

身長は俺より十センチほど高い。

男は目線を俺に合わせ睨んでくる。


「お前らが、家に石投げ込んでるからさ。

それはやっちゃいけないことじゃないのか?」


俺が指摘すると、男は鼻で笑った後答えた。


「いいんだよ、ここの子供は化け物だからなぁ」


化け物と言う言葉に少し反応してしまう。


「どういうことだ?」


言葉に力が入る。

今の俺は男を睨む形になっているだろう。


「どうもこうもない、ここの小僧は妖怪なんだ、

奇怪な技で俺達の考えを読む不気味な奴なんだよ」


「ふーん」


事情を聴いて一気に気が抜けた。

その程度のことで人を差別するのか。

心を読むくらいで差別されるなら、

俺はとっくの昔に差別されてるはずだが?


「何も知らない奴が口出しするんじゃねーよ」


男が家の方に向き直る。

その時に少しいい考えが思い浮かんだ。

また石を投げようとしたところでそれをつぶやく。


「『それに、こいつには計画を潰された借りがあるんだ』…って思った?」


「どうしてそれを!?」


男がすごい勢いで振り向いた。

驚きで見開かれた目を見る。

少し笑いながら言ってやった。


「なめるなよガキンチョ、こちとら何千年生きてんだ。

心を読むなんて簡単なんだよ」


「なっ…まさかお前も妖怪か!?」


「はっはっは、違うよ、れっきとした人間で、

この都市の用心棒だ。どこにでもいる普通の人間だよ」


ずい、と前に出る。

男は後ずさった。


「ちょっと特殊なだけで妖怪扱いや差別はいけないんじゃないかなぁ?」


「…」


「ちょっとお話ししようか」


そこにいた大人たちを一瞬で影に閉じ込めた。

影を自由自在に使う技『陰気な遊び』

さ、影の中でお話ししようか。


――――――――――――――――――――――――――――――――――


「ただ今姫ちゃん」


「あ、お兄ちゃん」


我が天使がその太陽のようにまぶしい顔をこちらに向ける。

俺は男たちとのお話を終えて姫ちゃんの元へ戻った。

男どもはもうからかいには来ないだろう。

だって…うふ、うふふふふ。


『ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい』

『死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない』


ほら、全員病院でカウンセリングがいる状態なら、

しばらくはあの家の住人は無事だろう。


「さ、行こうか姫ちゃん」


「はい」


姫ちゃんを背負いなおす。

門までくると門番が近づいてきた。


「零さん、こんにちは」


「おう」

「こんにちは~」


「ん? 今日は娘さんと一緒ですか」


あ、やっぱり気づいてない。

俺の背にいるのが姫ちゃんだよ~。


「娘じゃないとしたら?」


「違うのですか? では姫さん…ではないですね、

彼女はここまで幼くないはずです」


悩んでいる顔がまた面白い。

もっと悩め。


「孫ですか」


「違う」


「いとこ」


「違う」


「捨て子」


「ここ数年いないはずだ」


「三弟子の娘」


「どこをどう見たら妖怪なんだ」


「では?」


「姫ちゃん本人だ」


「えええええ!?」


「黙れ」


「すいません」


ネタばらしをしないと気付かないらしい。

最近の門番の勘はどうなってるのやら、

こんなんじゃ三バカに勝てないぞ。


「まぁいいや、三バカは?」


「もう来ていますよ、先ほどからうるさいです」


「ん、わかった」


姫ちゃんを背負い直し、門へ向かう。


「またねー」


「はい、また」


ニコニコ笑顔で笑う姫ちゃんに門番が笑顔を返す。

普通は土下座でお礼を言わせるところなのだが、今回だけ許してやろう。


「ふむふむ」


門の影から外をうかがう。

三バカは今日も絶賛元気なようで、

ギャアギャアと俺を出せコールをしている。


「不意打ちでもしてみるか」


「ひどいのはやっちゃやめ」


技を出そうと振り上げた手を姫ちゃんにつかまれる。

むっとした表情で姫ちゃんが睨んできている。

姫ちゃんは子供でも優しい。


「これは練習なんだよ、だから、大丈夫、勝負ならやっちゃだめだけどね」


理由を説明する。

姫ちゃんは持ったまましばらく考えて、


「わかいました」


手を放した。


「さて、避けてみやがれ『流星の尾』」


俺の手から極太のレーザーが出る。

狙いは三人が立っていた地点だ、外すことはないぜ。

三人が一斉にこちらを向くのが見えた。

しかし、次の瞬間にはレーザーが地面に当たった土埃で見えなくなった。


「さぁて、どうなるか」


土埃を凝視する。

すると、中から何かが光った。


「む、『過剰捕食者』」


自分の手にエネルギーを捕食する蛇を引っ付ける技だ。

展開が出来て間を開けずにレーザーが返ってきた。


「あーーーーー」


大口を開けた蛇が、レーザーを飲み込む。

ネックは自分の手についてるから防ぎながら移動がしにくいことだな。


「お兄ちゃん、うえ!」


姫ちゃんに言われて上を見る。

小さな点が見える…天か!


「でりゃあああああああああああ!!!」


叫びと共に影が一気に加速し、消える。

あいつの加速は異常なのだ。

まぁ


「『急がば帰れ』」


俺に届くことはめったにないが。

『急がば帰れ』は、薄い壁を張り、それに触れた物の動きを逆にする。

ネックはレーザーなんかは対象外なところだ。


「うおおお!?」


天が動きを逆にされ、空へと飛んでいく。

見上げていると地面から拳が出てくる。


「その技は地面まで届かないもんなぁ!」


国下が地面から俺に向かって拳を繰り出す。

人間にはものすごい速さだ。


「『停止』」


「あ」


『幽言実現』を発動して国下に停止してもらった。

おそらく先ほどのレーザーは尾都か。


「『転送』」


尾都と天を目の前に転送。


「きゃ」


「ぬおっ」


「『陰気な遊び』」


そのまま二人の手足を影で縛って拘束。


「さて、『流星の尾』を防いで反撃に出れたから

今回は結構いい結果だったな」


「むー」


「俺の拳は当たったと思ったのにー!」


尾都がむくれ、国下がぬあーっと叫ぶ。


「俺なんて戻りたかったのにずっと逆なんだぜ」


「それはさっさと対応しなかったお前が悪い」


その言葉で天が学理と肩を落とす。


「お兄ちゃん、はなしてあげて」


背中の姫ちゃんが俺の肩をたたきながら言う。

いや、もう抜けられるはずなんだけどね、

こいつらが抜けないだけなんだよ。


「あれ、その子は誰だよ?」


国下は気づいていないらしい。


「というか天使じゃないの!

さっさと放しなさい、愛でたいわ!」


尾都よいつでも抜けてくれて結構だ。

だが愛でるのは俺の役目だ。


「というか姫さんはどうしたんだ? 留守番か?」


「そんなわけないだろう」


「じゃあどこだよ」


天が不思議そうに聞いてくる。


「目の前のこの子」


姫ちゃんを抱っこに変えて、三人の前に持ってくる。


「「「は!?」」」


「かみやしんきです」


三人が口を開けて唖然とする。

てかお前らは俺が飲んだ子供薬を知ってるだろうに。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「なるほど、姫ちゃんは現在子供なのね」


「そういうことだ」


国下の家にて四人でお茶をすする。

三人の修行は終わらせた、というか戦闘するだけだしな。

姫ちゃんは尾都の尻尾が気に入ったようで、

俺の膝の上で尻尾をモフモフしている。


「この菓子美味い」


「ちょっと、天はとり過ぎじゃない」


尾都と天がお菓子の取り合いをする。

おいお前ら、落ち着け、一休みが肝心だぞ。


「なぁ、零」


「なんだ?」


国下が少し真剣な目で俺の方を見た。


「なんで血の匂いがするんだ?」


「…」


気付かれたか。


「誰か、殺したのか?」


「いや、殺してないよ、お仕置きしただけだ」


「何があったんだ?」


国下に聞かれたので詳細を説明する。

いつの間にかほかの二人も真剣な顔になって聞いていた。


「…と言うわけだ」


「なるほど、まぁ妖怪でも、奇妙な能力の奴は嫌われたりするしなぁ」


「生き物ってそういうもんだろう」


「でもその家の子はかわいそうね」


三人がしょぼんと、顔を俯ける。

だが少しすると国下が気付いたように手を打った。


「じゃあ俺がやめさせる」


「は?」


「俺が、その家の奴と会って、話し相手になってやればいいんだよ、

どんな能力化は知らないけど、正直な気持ちでいれば大丈夫だって」


「「「馬鹿だなお前」」」


俺と二バカが半眼で国下に言い放つ。


「そうだよ、馬鹿だよ!

いいよ、もう決めたからな!」


そもそも都市に入れないと思うんだが?


「尾都に何とかしてもらう」


「私!?」


「おう!!」


「…勝手にしろ」


天はあまり興味がないようだ。

まぁ結論としては尾都に手伝ってもらって都市の内部に

国下が入ることになった。


「約束だ、人は襲わないこと」


「おう、俺は嘘が嫌いなんだ、

この約束は破らないぜ」


人間に偽装された国下は走って都市へ向かって行った。


「さて、俺達も帰るか」


「はい」


国下がいなくなってお開きと言うことになったので

二人で都市へと帰る。

家に着くとご飯の匂いと永琳がいた。


「お帰りなさい」


「「ただいま」」


今回の歯磨きは、姫ちゃんの為に子供用の甘い奴を使って磨く。

姫ちゃんが戻ったのはその夜、布団に入ってからだった。


「子どもと言うのは不思議な感覚でした」


俺の胸に顔をうずめて姫ちゃんが言った。


「そう」


「でも、兄さんの背中がいつもより大きかったです」


「小っちゃかったからな」


「兄さん、血の匂いはわざと消さなかったんじゃないですか?」


「どうだろうね」


姫ちゃんがこちらに顔を向ける。


「兄さんは優しいです」


「それはどうも」


布団の中で二人でキスをする。


「お休み」


「おやすみなさい」


今日のキスの味は甘い味でした。


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