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東方兄妹記  作者: 面無し
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叩く

 正直に言おう。他の奴らなんて眼中にはいない。いてもいなくてもあまり変わらない。

 呼んだのは、豊聡耳と同じ思想を持っているというのが許せなかったからであり、それに対する叩きは目の前で豊聡耳を潰せば十分だと思っていた。

 だから、名乗りを上げようが自己紹介しようが彼らの相手はほとんどするつもりはないはずだった。

 が、どうにもこうにも、俺はバトルジャンキーらしい。

 少々、遊びたくなった。


 目前にいた物部の首をつかむ。

 対処できない速度で掴まれ、一瞬で変化した状況に物部は目を見開いた。

 その目に向けて笑顔を返しながら、蘇我に投げつけた。

 蘇我は物部を受け止めた。

 そこにめがけて俺は手を広げる。


「『流星の尾』」


 いつものと言っても差し支えない紅いエネルギーが手から溢れだす。

 視界を埋め尽くすほどの太さを持つそれに、二人は結界を広げた。

 紅い奔流が結界にぶつかる。軋む結界を支えながら二人は足を踏ん張っていた。

 期待していたよりはかなり弱いが、仕方ないだろう。


 俺は踏ん張る彼らの真後ろで見物する。

 やっとこさそれに築いた彼女たちを軽く押した。

 軽くと言っても強化した肉体からはなったもの。二人はたやすく吹き飛んだ。


 地面を転がりながら、二人は擦り傷だらけになって立ち上がる。

 手を出してもらえないのも物悲しい。俺は二人が立ち上がるのを待って、手を広げて待ってみる。

 それをどう受け取ったか、二人は懐から札を取り出し発射した。

 なんの術なのかはわからない。だが、面白そうなのでノーガードで受けてみる。

 あたったところが凍りついた。ついでに言えば、足が凍って釘付けにされた。


 二人の眼の色が変わった。

 釘付けになった俺に、これ幸いと札を乱射してくる。

 あたったところは熱を持ち焼けていく。退魔用ではなく人に対する武器か。

 全身が焼けていく、何度もあたった場所は焦げて黒くなっていく。

 痛覚遮断に感謝しなきゃならないな。これは動くのも一苦労だ。

 嵐のような札の攻撃が途絶えた。全てを受けきって全身黒焦げの俺を見て二人は得意気だった。


「それみたことか、人は人、我らに敵うはずもない」


「英雄といえど、勢いが合ったのは最初だけ。拍子抜けするほど弱かったわね」


 ほう、それはそれは随分と油断していらっしゃるもので。

 相手が絶命したかはちゃんと確認を取らないといけないものだぜ?

 それをしないから、形成を逆転される。


「こっちだ」


 俺は背後に転移した。

 俺が消えたことをまだ分かっていない二人の腹部を腕で貫いた。

 二人の口から血が溢れた。そこまで来て、二人はやっと声を出した。


「は?」


「う…そ」


「嘘じゃないさ」


 腕を引き抜く。倒れこんだ二人の眼前で、俺は体は修復されていく。

 焦げて黒くなった人体が、視覚でわかるほどの速度で元に戻っていくのを見て、二人は呆然とした。


「お主……化け物か」


 物部は信じられないものを見る目をしながらそう言った。

 酷い言いようである。そんなへんてこなものに俺はなった覚えはない。


「残念ながら俺の種族は人間だ。今も昔もこれからもな」


 不老不死であろうとなんだろうとそれは変わらない。

 俺の言葉に、物部は笑った。


「ぬかせ、人がこのような意味のわからぬ力などもつものか」


「もつさ。ないといえば何もできなくなってしまう」


 超能力出なかったとしても、科学や道具で、人はそれに類する力を持つ可能性がある。

 だから、


「僕は化け物じゃない。人間だ」


 彼女達を拘束する。俺のライバル用に作った特性の拘束具で。

 豊聡耳の方へと歩みながら、おれは物部たちに言う。


「お前らもただの人間だ。仙人などというからってあまり特別だと思わないことだな」


 豊聡耳に向き直る。彼女は特に驚いた風もなくそこに立っていた。


「予想してたかい?」


「もちろんです。貴方の活躍ぶりは調べましたから」


 それはどうもどうも、ありがたいことで。

 

「被害のとてつもなく少ない英雄だって?」


「いえ、敵の最終兵器にして、死者のいない戦争にした者達の一人だと。

 そもそも、周りへの被害が少なかったのはあなた方の力がお互いに向いていたからでしょう?」


「そのとおりだね」


 俺と創とのアレはお互いだけしかターゲットがいなかったからで、他にもいたら多分あたり一面浄土だったろうさ。

 

「まぁいいさ、さっさと叩きたい気分だ」


「結末も分かっていますし遠慮しておきたいのですが」


「部下は遠慮なくぶつかってきたけど?」


「それはそれです」


「ふーん」


 特に興味もないので曖昧に返す。豊聡耳はもう無理だと解っているらしく、こちらに向けて剣をとった。


「できればお手柔らかにお願いします」


「お前が気に食わないからあんまり出来かねる。できればってところだな」


 俺は彼女に手を振るう。地面が、砕けた。



    ****



「もう一回ですね」


 地面に剣で貼り付けられた青蛾さんに向けて私は笑顔でそういった。

 もう一回というのはここから私が傷を直してあげてもう一回戦おうということ。

 兄さんが物部さんの相手をしている間に私は数回彼女の相手をしていた。

 剣を引き抜きながらついでに傷も直して行く。

 無傷になったところで彼女を起こす。


「起きてくださーい大丈夫ですかー?」


「ううん?」


 目を覚ましたところで青蛾さんを立たせ、私は元の位置へ帰っていく。

 これで最初の状態に逆戻り。またもう一回戦える。


「え? あれ? 私は」


「どうかしましたか? まだ始まってませんけど?」


 証拠も隠蔽して、何事もなかった風に青蛾さんに話しかける。

 青蛾さんからすれば目の前の出来事がループしているように感じるのだろう。

 だが、私にそんなことは関係ない。今はもう一度彼女の相手をするだけだ。

 理由は単純、自分以外どうでもいいという彼女が許せないから。

 勝手で自分勝手だとは思うけれど、ゆるせないから仕方がない。


「ま、待って」


「なんです?」


「私、貴方に倒されたわよね?」


「まだですよ?」


 めずらしく嘘をついた。まぁこの人相手ならいいだろう。


「さっ、やりましょう?」


 私は彼女へ向けて足を踏み出した。

 瞬間、青蛾さんが、消えた。


「は?」


 一瞬の出来事に私はマヌケな声を出した。

 そんな声を出した私の顔に、彼女の拳が刺さっていた。


「嘘」


 青蛾さんがそういったのが聞こえる。

 ああ、この人は私が嘘をついたと分かっていて乗ったんだろう。

 でも、いいや。

 倒れる瞬間に地面に手をつき、そのままの勢いで足を振り上げ彼女の首へとかけ、そのまま締めた。

 倒れこむ青蛾さんに、追撃とばかりに拳を振る。骨のひび割れる音がした。


「どんな感じです?」


 少しだけ足をゆるめて聞いてみる。


「最悪」


 答えは予想通りだった。少しだけ気分が晴れる。幼稚だけど、単純に。

 拳を振る。何度も、何度も。

 その可愛らしかった顔が腫れ上がるまで殴りつけた。

 最後の一撃を加えたところで、私は彼女の顔を直した。


「私が気に喰わないのよね?」


 青蛾さんはそういった。さっきまでの私の暴力なんて何でもなかったかのような笑顔で。

 私は頷く。特に隠すことでもないから。


「自分が良ければ他がどうなろうとどうでもいい、その考えが嫌です」


「自分の利を考えちゃいけないと?」


「そうではありません。ただ、他の方の不利益を無視してもという部分が許せない」


 他人を蹴落とし、他人を不幸にして、幸せになろうとするその心がわからない。


「他人を助けろとは言いません。何なら無視しても構いません。ただ、他人を不幸にして這い上がるのは受け入れられません」


「優しい人」


 私は首を振った。優しくありません。ただの幼稚ないちゃもん付けですから。

 そんな私の顔に、青蛾さんは手を当てる。


「でも、これは私の生き方。他人に指図されようとは思わない」


「分かっています。貴方の生き方を変えろとは言いません。ただ、気に食わないから叩くだけです」


「単純ね」


「ええ、単純です。わかりやすい方がいいでしょう?」


「その通りね。一応夕方までよ?」


「分かりました」


 私は青蛾さんの上から腰をどける。

 立ち上がった彼女に向けて。もう一度駆けた。



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