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東方兄妹記  作者: 面無し
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嫌いな人





「あと二人いるってよく分かったね」


「仏教を使い、この先の宗教対立を隠れ蓑にするのであれば、両陣営に内通者が入ります。

 自分に賛同するもので計画を話していいほど信頼できる人となれば少なくなります。

 人を管理するなら少ないほうが容易いことだということも踏まえれば、両陣営に一人ずつ。それなりの立場にいる人がいるはずです」


「なるほどねぇ」


 おれは姫ちゃんの話を聞いてただ頷いた。反論なんて出来そうにないしね。

 さて、約束を取り付けたことまでは良いとして、あとはどこでやるかだな。

 今回、俺達が行うことはただの八つ当たりと同じだ。あいつが自分は凄いぞって言ってるのがうざいからボコってしまおうってだけだ。

 親の説教というよりは、同級生の喧嘩レベルだな。

 でも、俺としては自分が特別だと言う彼女の行為はどうしても受け入れがたくて、タコ殴りにしたくなる。

 だから、年長者としてではなく、個人としてあいつを叩きのめす。


     ****


 呼び出して集まったのは郊外の平原。

 並ぶ四人に向けて俺達は笑顔とともに振り返った。


「よく来たね。待ってたよ」


「要件は……いえ、貴方の考えることは分かっています」


「なら、話は早いね」


 俺は一歩踏み出す。豊聡耳についてきた三人の内、二人が庇うように前に出た。

 姫ちゃんの言っていた協力者の二人なのだろう。俺を睨みつけて威嚇している。

 俺が来た理由は話されているのだろうし、行くと言った豊聡耳を守るつもりで来たんだろう。

 白髪で身長の低いほうが吠えた。


「止まれ! お前ごとき凡人に神子様の相手はさせん!」


 随分ないいようである。凡人を否定はしないがそれを言うのは酷くないか。

 それに、相手はさせないというが、お前らでは俺に勝てないだろう。そして、豊聡耳はそれを理解している。最初から彼女は俺の相手を自分がするつもりだろうに。

 だが、初対面だし言ってやる義理もない。俺は黙って足を踏み出した。

 その時、俺の顔をの横を霊力弾が通りすぎた。警告……といったところらしい。


「動くな。お前の相手は我等だ」


 睨みつけてくる二人に俺は笑顔を向ける。豊聡耳に感化されて、自分が特別だと思っているであろう彼女達に向けて。

 今からするのはただの喧嘩みたいなものだ。ただ、仕掛けたのは俺で、しかも理由は幼稚。豊聡耳は俺の嫌いな価値観をしているだけで、悪いやつではないから、買わないのなら小言入っても喧嘩をする気はない。

 ただ、今回は買ってくれるようなのでありがたく売ろうという感じだ。

 さて、目前の二人だが……先に相手をしてくれるのならありがたい。


「いいとも、君たちから先にやってみようか」


 俺は彼女たちに向けてそう告げる。いつもの不敵を貼り付けて。


「じゃあ、私はあっちの仙人さんの相手をしてますね」


 やり取りを聞いていた姫ちゃんが俺にそう告げる。

 豊聡耳は譲ってくれるらしい。遠慮なくいただくことにしよう。


「やろうぜ、お二人さん。同時に相手をしてやるよ」


「っ! 舐めるな!」


 俺の煽りを受けて、白髪は飛びかかってくる。

 そんな彼女の後ろに転移し、その白髪を撫でつけながら言う。


「遅いよ? 二人で向かってきなって言ったろ?」


「!?」


 俺から飛びのきながら、白髪は何が起こったのかと目を見開く。

 そんな彼女にお構いなしに、俺は続けた。


「それから、喧嘩をするなら名乗ってからだろう?」


 睨む白髪が、俺の後方にいるもう一人の方へと目配せをする。

 頷いたもう一人と白髪が名乗った。


「我は物部布都」


「私は蘇我屠自古」


「そっか、よろしく。神谷零っていうんだ」


「ああ、大戦の英雄か。だが、只の人間がなぜまだ生きている?」


 先ほどの強さに納得したように言った物部が、今度は疑問を口にする。

 俺ははぐらかすことにした。特に面白くもなさそうだし、早く始めたい。


「さてね」


「答えぬか。だが、英雄か……」


「英雄だったら豊聡耳に変わってくれる?」


 ほとんど期待せずに一応聞いてみる。答えは案の定だった。


「無理だな。それでもお前の相手は我だ。

 英雄といえど、ただの人間に負けるものか」


「そう。じゃあ、頑張ってね」


 特にもう聞くことはない。

 俺は物部に向けて、駆けた。


     ****


「霍青娥さんですね?」


「あら、名前を知ってもらえて嬉しいわ。神谷神姫さん」


 私の問いかけに青いワンピースを着た女性は楽しそうに答えた。

 雰囲気としては陽気で可愛らしい印象の有る人だ。

 私は彼女のことを知りたくて、聞いておこうと思っていた質問をした。


「なんでこの国に来たんですか?」


「この力を自慢したかったからよ」


「道教の仙人であることをですか?」


「そうよ。私の国の仙人は私のことを邪仙なんて呼ぶんだもの」


 彼女の目を見る。特に偽りの色は見えないし、悪いことを企んでいる様子もない。

 仙人というものがどういうものかを私は詳しく知らないから邪仙かどうかはわからない。

 ただ、あまりにもこの人の目はあまりにも悪意のような濁りがなく透き通っていて、私は言いようのない気持ち悪さを感じた。

 そこで気づいた。この目と同じ目を私は知っている。彼は自分のことしか考えていない人だった。他の人がどうなろうと知ったことじゃないと、自分の目的のためだけに行動する人。


「一つ聞いても?」


 私は確認をとった。


「ええ。何かしら?」


「あなた、自分が良ければ他人がどうでもいい人ですよね?」


 私は素直に聞いた。隠そうとも考えず、まっすぐに彼女の目を見て。

 少しだけ、否定してくれることを期待して。


「その通りよ」


 でも、彼女は肯定した。なんの臆面も無くその首を縦に振った。


「残念です」


 心の底からそう思った。

 そして、この人は私の嫌いな人だと理解した。


「ごめんなさいね」


 彼女は謝った。その瞳は謝るというよりは面白そうだった。


「いえ、いいです。貴方に手を出す口実も出来ましたので」


 私はそうつぶやく。それにも、彼女は楽しそうに答えた。


「貴方強そうだし、期待しちゃおうかしら」


 ああ、そうしてください。その面白さを感じられなくなるくらい叩きのめしましょう。

 自分が良ければそれでいい。それだけの人間なんて……嫌いです。


「行きますよ」


「そうぞ」


 笑顔の青蛾さんに向けて、私は踏み込んだ。



     ****



「師匠の気配がする」

「先生の気配がする」


「何さ唐突に零の気配とかなんとかって。男色趣味でも有るの?」


「「ねーよ!!」」


 諏訪の神社にて、妖怪二匹は否定した。

 そう、ただ単に自分達の師が日本に帰ってきた気配がしただけなのだ。本当に。

 そんな趣味はないし、しかも片方は既婚者だ。断じてそういう趣味はない。

 ため息を付きながら、鬼の祖は答えた。


「師匠が帰ってきたんだよ。うん万年あの人の霊力を目標として見てきたからな。

 ここから北の異民族がいるっていゆう雪の降る土地までぐらいなら師匠の感知ができるんだよ」


「そんなことができる時点で半分男色に突っ込んでない?」


「「ない!!」」


 諏訪の祭神は生返事を返し、一つ彼らに問う。


「で、何しに帰ってきたの?」


「「さぁ?」」


 気配が分かるくせにそこまでかと、祭神は呆れる。

 が、その祭神の予測していないところから、答えが出た。


「多分、仏教を推してるっていう、豊聡耳様でも叩きに来たんだろう」


 祭神の旦那の答えに彼女は答えなかった。彼の予測は十中八九あたっているだろうから。


「問題が起こったり」


「「「するだろうね」」」


 三人、いや、四人の意見は同じだった。

 二人の弟子が、立ち上がる。


「行ってくる」


「俺も」


 そして、二人の答えも待たずにさっさと出て行った。


「どうなると思う?」


 祭神は少し思案しながら旦那に問うた。

 旦那は特に迷うこともなく答えた。


「変わらないさ。面倒事になるよ」



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