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東方兄妹記  作者: 面無し
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コラボ後編

次回は普通に本編です。

 俺の家、外観は平屋の一戸建て、幻想郷ではそれなりに大きい方の建物だ。

 まぁ、それは外見の話で、中身は幻想郷最大の敷地と幻想郷最強のセキュリティを誇る要塞なのだが、その機能は使うことは殆ど無く、付けれるので付けてみた程度でいつもは鍵以外作動していない。

 そんな俺の城の一室。宴会に使用している適当に四つ程設けた大広間の内の一つで、俺を含めた男ども四人は料理が運ばれてくるのを待っていた。


 合計人数六人、しかも大部分が大食漢、それだけの量の料理を用意するなら、手伝うのが普通なのだろうが、それができないのは、姫ちゃんいわく、台所は私の城ということで、俺以外は男子禁制でだからだ。

 俺はなぜ手伝わないのかというと、多分言っても断られるのが解っているからだ。それに、俺より姫ちゃんの方が料理が上手いから、人に食ってもらうという点からして、俺は出ない方がいいだろう。


「暇だなぁ」


「暇だねぇ」


「暇ですねぇ」


「暇だよなぁ」


 手持ち無沙汰な四人が天井を見ながらつぶやく。

 台所は、今どうしているのだろうか。


    ****


「料理とは愛、愛とは料理、私の兄さんの口に入るのですから、今できる最高の料理を作ってください。でないと……叩き潰します」


 そう言ったのは零のお嫁さんである神姫さんだった。その言葉に嘘はなくて、多分手を抜いたら本当に叩き潰されるのだろう、ミンチみたいに。

 だからこそ、私は自分のレパートリーから絞り出してきた料理をせっせと作っていたのだが……いかんせん隣と比べると地味に見える。

 いや、地味というより隣が派手すぎる。早い、多い、美味い、三拍子が全部付いている。

 包丁で捌くのなんて目にも止まらないし、一人で七つも料理を並行で作ってるし、しかもその上で全部の料理が今まで食べたことないくらいに美味しい。極めつけは十数人にまで分身している。

 同一人物が高速移動して数百の料理を同時に高速で作っているように見えるのはあまりにも派手で、分身していない私が地味なんじゃないのだ。

 悔しいけれど、やっぱりこうも上手いと眺めてしまうもの。分身して動く彼女に見とれて手が止まっていると、分身した神姫さんが同時に話しかけてきた。(分身なのだから考えることも同じなのだろう)


『なにか、気になることでも有りましたか?』


「ううん。ただ、すごく早いなぁと思って」


『慣れですよ、慣れ。何億年と兄さんの御飯作ってますから』


 神姫はなんでもないことのように言う。私も何億年と練習すればいつかこうなれるのだろうか?

 なんとなく、無理な気がしてきた。私は普通でいいだろう。すごいが欲しいとは思わないから。


 そんなこんなで会話をしながら、私は自分の料理を完成させた。頑張ったので出来は大丈夫だ。

 まぁ、そんなことよりも私はまた目の前の光景に信じられないものを感じていた。


「なにこれ?」


『帰ってきたお皿の山です』


「こっちは?」


『今から送る料理の川です』


 目前にはそびえ立つお皿、お皿、お皿、洗われる速度を超えて積み上がったお皿の山があった。

 そして、横に目をそらせば、分身した神姫さんの作った料理がまるで川のように供給されていく。


「なに、この状況?」


『家の宴会でよく見る状況です』


 この状況がよくあるって……ここがほんとに幻想郷なのか心配になってくるわ。

 この料理の川、一応さっきから私も何品か追加しているけれど、大半が神姫さんのもの。

 私の周りを除き、神姫さんの手元や空中には今から使う食材や調味料が常に飛び交っていた。

 なんだか、厨房というよりは料理の工場のようにも見えてくる光景は、強い以外は普通の女の子である私には少々異常な光景に見えた。


『さてと、エルミーさんもそろそろ兄さんたちのところへ行っても大丈夫ですよ』


「えっ、でも神姫さんはこれからも作るんだし、手伝いを申し出たくせになんか悪い気が」


 しかも料理の大半は彼女なのだからと、私は少々断りにくかった。

 でも、彼女はそれを分かってますと言いながらもそれをダメだといった。


『お客さんにあんまりお仕事させられません。久々に誰かと作れたし、手伝ってもらいましたし、十分ですよ。これくらいどうってことないので、悪いななんて思わなくてもいいですしね』


 一人だけ手を止めた神姫さんが、大丈夫というように私に手を振ってくれた。

 ここは、甘えておこう。親切を断るのはそれこそ悪いだろうしね。


「じゃあ、行ってきます」


『言ってらっしゃい、エルミーさん』


 流れる川を伝いながら部屋へと歩みをすすめる。宴会の部屋には二つの川が流れていた。料理の川とお皿の川。二つの川を見て思う、この先も異常な光景が有るのだろうと。

 でも、大丈夫、さっきの厨房を見たのだ。私はだちょっとやそっとじゃ大丈夫だ。


「うん、行ける!」


 自信満々に、私は部屋へ飛び込んだ。



    ****



 目の前の光景に、僕は負けじと食べた。まだまだ若いし、食欲も有る方だ。たくさん食べるなんて言われるからたくさん料理が来ると言われても大丈夫だと思っていた。

 でも、まさか川のように来るなんて思ってなかったし、それが、吸い込まれるように消えていくとも思っていなかった。


「お前の嫁さん、料理上手だな」


「でしょう? あっ、これエルミーのだな。味が違う」


 零さんと夜さんの二人は、流れてくる料理を吸い込むように食べていた。

 夜さんはまぁ鬼とよく似てるし、たぶん胃袋じゃなくてそれっぽいものがあるんだと思う。

 零さんは、消化、吸収と、それの保存、そのすべてを食堂と胃袋の間に設けた空間で行っているらしい。

 まぁ、僕達にはそんなことは出来ないので普通に食べているのだが、どうにも二人に押されて地味に見えてくる。


「竜平さん」


「言いたいことはわかる。だが、こんなもんだよ」


 目前の二人が規格外すぎるために少々の疎外感を感じていたのだが、それは僕だけじゃなかったらしい。

 共感できる相手がいて少しだけ安心した。でも、ほんとうによく食べるものだ。

 そもそも、この料理の量も本当にどこから食材が来ているんだろうと不思議な気分だ。

 

「おい、そこの二人。食べるのが遅いぞー!」


 そういったのは零さんだ。一緒にしないで欲しいと言いたいが、あの人のことだから聞き入れてはもらえないのだろう。

 でも、できるのであればいくらでも食っていたいとは思う。それだけここの料理は美味しい。


「さすが姫さん」


 僕は一人でつぶやいた。

 そこに


「なに……これ……」


 手伝いから帰ってきたエルミーさんの声が聞こえた。


「ああ、おかえりなさい」


「ただいま……って、四人じゃなくて二人で消費してたの!?」


 この料理の山がたったの二人で崩されていっていたことに驚いているらしい。

 僕としては毎回のことなのでそれほど驚きはしないのだが。(あきれはするけれど)

 

「いつものことだよ。特に零さんはね」


「ここの世界が私の知ってる幻想郷と違いすぎて恐ろしくなってくるわ」


「だよね。ここの幻想郷にいる人ってだいたい反則レベルで強いし」


 そう、負けるはずないと思っていたお父さんに勝てる人が複数いるなんて、僕の知っている幻想郷と違いすぎるのだ。

 エルミーさんが呆れた目で料理を吸い込む二人を僕らの間に座った。


「こんなのにぼろぼろいられたら私達の幻想郷なら毎日異変が起きるわね」


「ですね」


「普通の範疇でよかったじゃない? 退屈はしないんだし」


「そうですね」


 なんとなく諦めて、目の前でがっつく二人を眺めていた。その時、二人が同じ料理に手を伸ばし、その手がぶつかった。

 衝撃で幾つかの品が吹き飛んだ。


「あ?」

「は?」


 二人の視線がぶつかった。


「俺のなんですけど?」


「いやいや、俺が先に手を伸ばしたね」


「俺の嫁が作ったんですけど?」


「客人を優先するべきじゃないかい?」


「……なに?」

「……なんだい?」


 二人の視線が威圧を帯びる。その端でも違う料理に手を出しているから締りがないが。

 でも、その威圧感は本物だ。放っておいたらどうなるか、想像は容易だった。


「やるか?」


「いいよ、さっきの続きをやってやろうじゃないか」


 零は手紙を紙飛行機にして、料理はもういいことを姫さんへ伝えると、席を立って別空間への扉を出した。


「行こうか」


「いいとも」


 二人が若干の殺気とまた戦える嬉しさを発しながら扉へ消えていこうとした。

 そのとき、二人が床にめり込んだ。


「「え?」」


 めり込んだ二人が訳がわからないように固まる。

 そんな二人とは別にゆっくりとこちらへ来る足音が聞こえる。

 寒気がした。足音を聞いているだけなのに、えも言えない悪寒が体を巡って、身動きが取れなくなる。

 足音の主が、部屋に入ってきて、言う。


「料理、吹き飛ばしましたね?」


 その顔はさっき見たような怒りに満ちた無表情で、僕は思い出した悪夢に震えが止まらなかった。

 言われた二人も、顔からは血の気が引いて、瞬きもできずに固まった。

 でも、そのままでは危ないからと、少し声を震わしながらも訳を話す。


「いや、姫ちゃん、あれは不可抗力なんだ」


「そうそう、手がぶつかった衝撃なんだよ」


「お二人ならとんだ料理のキャッチも出来ますね?」


 その言葉は確認のようだったが、実は確認なんて必要でなくて、本当はただ単に自分の責任だと言わせたかっただけなのかもしれない。

 ただ、二人も押し切られては困ると講義する。


「いや、さすがの俺でも瞬時に反応は」


「そうそう、俺だって手の伸びる範囲しか動けないし」


 姫さんの目が細くなった。


「出来ます」


 もう一度彼女が言った。

 殺気に、二人の男は負けた。


「はい、出来ます」

「ああ、できるね」


 お仕置きはひどかった。



    ****


「今日はおとなしく帰るよ」


 夜はそういって帰っていった。

 おれも、しばらくはあのお仕置きが頭から離れないだろう……出来るだけ考えないようにするのが一番だ。


「じゃ、また来るわね姫さん」


「ええ、またエルミーさん」


 俺を他所に姫ちゃんはエルミーに別れを告げている。

 あの美しい笑顔からあんなお仕置きをされたなんて……信じたくないもんだ。


「零さん、大丈夫ですか?」


「顔真っ青だぜ」


 竜平と仁くんが俺を気にかけてくれる。俺は首を縦に振った。

 二人にも別れを告げないといけない、またしばらくして強くなったらまた相手をしてもらおう。


「じゃあね、お二人さん。待ってるよ」


「正直、相手はしたくないもんだ」


「それなりに期待してて、またお父さんに相手してもらうしね」


 二人はそう言いながら扉へ消える。

 残った俺とヒメちゃんで顔を合わせた。


「かえろうか」


「はい、兄さん」


 手を繋いで、家に帰る。

 明日からはまた退屈な日々が続くのだろう。

 また我慢できなくなったら同じことをしよう。次は誰が来るか、楽しみだ。


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