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Realistic Dream【Contact of START】

作者: 南 勇希

この物語は、実際に体験した夢の話です。

信じるか信じないかは、読んだ方々にお任せいたします。


この話は…。

俺が昔見た摩可不思議な夢の話しをしたいと思う。

どうしてって思うだろぅ。

それは…。

今日、昼寝をしていた時に見た夢である。

ちらっとだが彼を見た。

無性に震えた…。

鏡を見るのが怖い、…今も…。

その男とは…。


あれは、俺の記憶が確かなら22歳の時だったはずだ。

誕生日の近い冬だったはずだ。

いつものように眠りについた俺は、冷たい風に目を覚ました。

そこは、霧に包まれた、草原であった。

深い霧で先は全く見えない、が、俺は何かに呼ばれている様に先に進んだ。

すると、6本の木が三角形に生えている場所が見えた、俺は立ち止まり。

その木の下にいる人影に気付いた。

女だ!白いドレスの女は、俺に背を向け立っていた。

俺は、その場で少し女の様子を伺った。

…これは夢?…。

そう思っていた。

どうしたらいいのであろうかと悩んでいると、女は、ゆっくりと横に顔を向けた。

女が見た方向から黒いマントを羽織った男が近付いてきた。

俺は、これから何が起こるのか薄々気付いていた。

男はシルクハットを被り襟の高いマント姿であった。

顔は見えない。

女の横に男が来ると、女の肩に手を回して何かを語りかけていた。

その後、女は頷き歩み始めた。

男は、女の肩から手を外すと俺に気付いたのか、こちらに顔だけ小さく向けた。

男の顔は……。

仮面?その奥の瞳だけが不気味に浮き上がっていた。

俺は、体全体に痛い程の恐怖が走っていたが、その場で男を凝視した。

男は何かを言っている…。

仮面が小刻に動いていた。

だが、俺には、聞こえない。

男はその後、女の後を追って歩き始めた。

…あの子は、ダメだな……。

何故か、そう思った。

…そして…。

俺は、目が覚めた。

何か心に残る夢だった。

うっすらと鳥肌がたっていた。

…が、全ては夢とその時は思って気にも止めていなかった。

…その時は…。

一年後の夢に繋がる夢とは………。



それは、突然やってきた!!

あの夢から約一年後。

俺は、以前感じた事のある冷たい風に目を覚ました。

しかし、そこは以前とは違う風景だった。

ゴツゴツとした岩肌に囲まれた洞窟……それも、幅の広く先の見えない洞窟だった。

俺はふと上を見上げた。

そこには、ぽっかりとあいている三角形の口が見えた、その向こうには満天の星空が見えた。

その口は、這上がる事は出来そうにはない程の高い位置にあった。

俺はため息をつきながら出口を探そうと思い、薄暗い洞窟の前後へと目を向けた。

わかる訳がない……。

途方にくれていると、子供の声が微かに聴こえてきた。

……?

俺は、とりあえず、子供の声の聴こえてくる方へと歩み始めた。

どの位歩いたか分からないが、やがて目に見えたものは、木製で見上げる程の大きな扉だった。

その横で数人の子供らが遊んでいた。

俺は、その扉が出口だと思い近付いた。

俺に気付いた子供らは、俺を黙って見ていた。

その目は…。

俺は、扉の前に立つ。

すると、左の手首をまったく毛の無い色白で目玉の大きな男の子が掴み、盛んに「うぅ、うぅ…」と声では無い、獣の様な声で扉を指差している。

…やっぱり?…

と思いながら左手を扉に向けると、男の子は薄い笑みを見せた。

……?

俺は不審に思った瞬間、右手首を今度は女の子が掴み、

「その扉は、決して開けてはいけないよ。出口はあっちだよ。」

と右側の薄暗い洞窟の向こうを指差した。

男の子を見ると、目を丸くして女の子を見ていた。

今にも襲いかかりそうな形相であった。

俺は、女の子の差す方に歩み始めた。

数歩行くと、女の子が歩みよりしゃがめといった。

俺は女の子の言う通りにしゃがみこむと、女の子は耳打ちをした。

「…これは【夢】だから…」と。

意味は分からないが、妙に引っ掛かった。

しかし、俺はその意味を理解しようとはせずに歩き始めた。

何度か振り返り、子供らを見た。

子供らは、俺を見ている。

色白の目玉の大きな男の子は、うつ向きかげんで睨んでいるようだった。

女の子は、瞳が少しうるんでいた。

そして、子供らを肉眼で確認出来なくなった時、暖かい陽射しに目が覚めた。

いつもの朝がきたつもりであった…。


あの夢は?…。

妙な違和感を抱きながらベッドから起きると、自分の部屋を後にして階段を降りて台所に向かった。

台所に着くとテーブルには、朝食が並んでいた。

俺は席に着く、すると、母親が俺の向かいに座り、突然涙を流しながら俺に一言。

「さよなら」と言い、席を立つと台所を後にした。

俺は、…?

意味が分からない。

母親を追い掛け、その意味を尋ねたが何も言わない。

ただ「出ていけ!」と物凄い形相で叫んだ。

俺は何が起こったのか分からず、とりあえず、車に乗り込むと会社に向かった。

会社に着くと、仕事場に向かった。

仕事場では、仲間が輪になって何か話しをしていた。

その輪に入ろうと近付いたら、俺の気配に気付き、仲間らはクモの子を散らしたようにバラバラになった。

…?

何が起こったんだぁ?

俺は、仲間を追い掛け、その真意を聞こうとしたが、彼等もただ「出ていけ!」や「話しかけるな」と言うだけだった。

まったく、何が起こったのだ?

と焦る。

行く宛てなく、社内をさまよっていると、その会社で仲良くしていた爺さんに聞こうと思いたった。

俺は、爺さんのいる管理部門の部屋に入ると爺さんを捜した。

爺さんは、自分の席に座り、まるで俺を待っていたかの様にこちらを向いていた。

「爺さん、みんななんか変だ!」

爺さんは、片方の目が偽眼である、

その偽眼が金色になっていた事に少し驚いた。

「お前はとんでもないものを見た。鏡の中の住人は怒っているようだ、お前はもうダメだよ、お前にこれから長く接する者も、お前と同じ運命を辿る。夕べの夢に出てきた!だから、お前と誰も接しないのだ。だが、俺はもう長く無いからな…」

と笑みを見せた。

「どうしたらいいのだ?」

「解らない…、だが、自分の信念を持ち、接する事だよ。後は念ずるのだ!」

…訳が解らない。

鏡の中の住人とは誰だ?俺は、混乱していた。

宛てが無い…とりあえず、管理部門の部屋を後にした。

部屋を出た所に、同僚のTがいた。

Tは、「A子ちゃんが、『駅前で待っている』と、さっき電話があった。頑張れよ・」

と言うと、そそくさと俺から離れた。

A子…彼女は、バイトで来ていた女の子だ。

妹の気持ちで接していた女の子だった。

その時は、すでに東京で働いているはず…。

俺は、嫌な胸騒ぎを抱えつつ車で駅前に向かった。


駅前のロータリーに着き。

俺は、A子を捜した。

ロータリーにいる人達は、俺とは目も合わせない。

仕方ない事か…。

バス停そばに車を止めると辺りを見回した。

すると、建物と建物の隙間から彼女が駆け足で近付き、車に飛び乗ってきた。

彼女は大きめのサングラスにスカーフを被り。

花柄のワンピース姿だった。

真っ赤に塗られた口紅がヤケに嫌らしく娼婦の様に感じた。

彼女は、うつ向き、何も言わない。

俺は、とりあえず、車を出した。

何処に向かうでもなく、小さな町を俳廻した。

どの位そうしていたかわからないが、最初に言葉にしたのは、彼女だった。

彼女は「ありがとう、待っていた。ずっと…」

と、俺は意味が解らなかったが、微笑んで頷いた。

すると…、

彼女は「これからは、【現実】だから。」と真っ赤な唇をゆっくりと動かして言った。

…えっ、なに?現実…?

俺は、再び意味が分からなくなった。

夢ではない?現実なんかぁ?

彼女は、下を向いたまま言う。

「わたし、危険なの。」

と言いながら、サングラスとスカーフを外した。

肩まである髪が綺麗に揺れながらおりてくる。

いい香りが車内に広がり。

「わたしを助けて。」

といいながら、俺の手を掴んだ。

彼女の言葉の意味は解らないが、助けを求めているなら助けなければ、と言う使命感に被われた俺は、彼女を乗せたまま、町を離れた。

…助けるとは?…。

宛てもなく俺は、彼女と海や湖。

アミューズメントパークや映画などを楽しみ、数日過ごした。

彼女の事を守る事だけを考えながら…。

会ってから6日目の夜。

ホテルで彼女は、急に家に帰ると言い出した。

ソファーに横たわっている俺の側に来るなり。

「ありがとうね。思い出が出来た。楽しかった…」

「どうして?」

と俺は聞くと、

「帰らなければならない。明日帰ろう、もう迷惑はかけられないから…」

「迷惑なんて…」

と言っている俺の唇に彼女は自分の唇を重ねた。

そして……。

次の日の夜、俺はA子を家まで送り届けた。

別れ際、彼女は微笑みながら、

「何かあったら、私の生きた証を探して…、形見にしてね…」

と、俺は、彼女に向かって、

「明日、また来るよ!」

と言うと、彼女は微笑み頷きながら車のドアを閉めた。

そして、自宅へと歩き始めた。

俺は、その後ろ姿を黙って見ていた…。

確に現実なのだろう。

今もまだ、A子の温もりをはっきり感じている。

俺は、彼女が自宅に入るのを見届けると、家路についた。

そして、彼女との長い一週間は過ぎて…。


翌朝、居間のソファーには両親が並んで座り俺を睨んでいた。

…迷惑はかけない。

その視線を背中に感じながら、俺は家を出た。

暖かい陽射しが瞳に痛い。

丸形のサングラスをしながら車に乗り込むとA子の家に向かった。

十数分後にはA子の家に着いた。

すると、そこには見慣れた車が止まっていた。

K子だ!!

付き合っている彼女が待っていた。

俺の心拍数が上がった、そう、後ろめたさからだった。

K子の車の脇を通り過ぎ、A子の家の前に停め、ルームミラーでK子の車を見た。

…?

「ねぇ!!。」

彼女の声に、俺は、驚いて助手席を見た。

そして、助手席に座っているK子に気付くと、心拍数が物凄い勢いで上がった。

…いつ乗った!!

K子は、鋭い瞳で俺を見ている。

視線を合わせられない。

「あなたを見ていたわ。あなたを誰よりも愛しているわ。あなたが選ぶ事は出来ないわ。全ては、シナリオ通りだから。」

…全く意味が解らない。

「K子。聞いてくれ、弁解じゃないのだ、A子を助けたい。だから…」

「だから、行くの?」

K子が言っている

『行くの?』の意味が、理解できない。

『何処に?A子のところに?何で?守るため。それから?……どうなるかわからない。交わったから?そういう訳ではない。これからもずっと?……いるのかぁ?俺は…A子と…わからない…。』

そう自問自答したがどうしたらいいんのかわからない、とりあえず、A子が心配なので、A子の家に向かおうと思いドアノブへ手をあてた。

すると、

「行きなさい。わたしは待っている、あなたと一緒になれるなら、あなたと同じ道を歩む。ただ、これだけは覚えていてね。ここからは、【夢か現実か】貴方が決めるの!」

というと、車を降りて自分の車へむかった。

…決める?今までは、現実…?俺は、あの夜の事を思い出した。

A子の唇の感触や暖かい胸の温もり、そして、小さく震えながらも一つになった時の微笑み、そして、熱く、同じビートを打った吐息…。

現実なのか?俺は、K子を見送り、そして、A子の家へと歩き始めた。

現実か夢かを考えながら……。



A子の家へと向かう。

門を通り過ぎると直ぐに何かにぶつかった。

…なんだ?

多分、はたから見るとパントマイムをやっているようだったろう。

そこには、確に透明の板らしき物があり、先には進めない状態だった。

すぐそこにA子の家があるが行けないもどかしさに、俺は、何度も彼女の名前を叫んだ!

…どうして?

彼女は、既にいないと感じている自分に腹が立ち、いつしか、叫び声も泣き声に変わっていた。

…ごめん…。

心の奥で呟き、その場に崩れ堕ちた。

幾分か泣き、やがて冷静さを取り戻した時に、足元で小さく光っているものに気付いた。

俺は、その光っている物を手にする。

それは……コンタクトレンズ?

確信は無いが、それはA子の物だと感じた。

A子が言った。

「何かあったら、私の生きた証を探して…、形見にしてね…」

の言葉を思い出し、俺は、ハンカチにコンタクトを包み、ポケットにしまいこんだ。

そして、俺は、このままでは終われない何かと彼女を守れなかった憤りに押され立ち上がり。

考えた。

…どうしたらいいんだ?

自ずと糸口はひとつに絞り込めた。

…爺さんに会おう!!と。

車に乗ると、会社に向かった。

会社に着くなり管理部の部屋に真っ先に進んだ、その最中にも多くの罵声を浴びたが、事は終焉に近付いていると思い、その声には反応しないようにした。

管理部の部屋に着くと、爺さんはまた、俺を待っていたかのようにこちらを見ていた。

「教えてくれ!どうしたらいいんだ!やつは何処にいる。」

「そろそろ、時間かな?」

といいながら立ち上がり。

「裏の公園に行こう」

と俺を促した。

俺と爺さんは裏の公園に向かった。

細いトンネルに入り進んだ。

そして、トンネルの出口手前で爺さんは立ち止まり。

「ここからは、一人で行け。そして、強く願う事を忘れるな。必ず願いは形になるから」

と言う、偽眼が激しく金色の光を放っていた。

そして、俺の背中を一つ叩くと、元来た道を戻り始めた。

俺は、爺さんを少し見送るとトンネルの出口へと向かい、まもなくトンネルを抜けた。

そして、そこにある風景に驚嘆した。

……まさか……。


その風景を見たその時、俺の背筋に悪寒が走った。

あの夢の場所…、草原に6本の木、それも三角形を作り出して立っている。

…思い出した。

あの後ろ姿は……。

俺は夕べ見た、A子の後ろ姿を思い出した、そして、横顔…。

何故気付かなかったのか…。

彼女は俺を待っていたんだ。

鏡の中の住人にみ染められた自分をたぶん、最近では一番可愛がっていた俺に助けを求めていたんだ…。

夕べ気付いていたなら、帰さなかったのに…。

後悔の波が次々に押し寄せてきた。俺は俯いてしまった。

…まだ、間に合うか…。

…まだ、間に合うだろう…。

…いや、まだ間に合う!!…。

俺は顔を挙げてその木が生えている場所を見据えた。

…根拠は無い。

…だが…助ける、そして、今を終わらせる。

強い決心に俺は、その場所を目指し歩きはじめた。

木が生えている場所にくると、その場を見渡した。

…どこかにあるはずだ、入り口が……。

何度もその場所を散策したが、見付からない。時間だけが過ぎて行った。

俺は、その場に座り込み木々を見ていた。

…!三角形!はじまりの夢で見上げた口は、確に三角形だった。

俺は勢い良く立ち上がると、三角形の中心に立った。

その下は、芝生が夕日に照らされ赤みかかった薄く、そして、正気がある緑色で生えていた。

その時、爺さんの言葉を思いだした。

『強く願うんだ…』

…もしかして。

俺は、目を閉じて願った。

『口よ、開いてくれ!』

すると、一瞬、全てのものの動きがスローになり、俺は宙に浮いた感覚を覚えた、と同時にあの冷たい風が体の中を突抜けると一気に急降下をはじめ、まもなく地面に叩きつけられた!

『痛っ』

俺は背中から叩きつけられたのだ、息が苦しく、少しむせびながらも深呼吸をして、痛みを和らげた。

俺は、痛みが引けると同時に立ち上がると、上を見た。

…思った通りだ。

そう思っていると、微かな子供らの声が聞こえて来たのに気付き、俺は、あの扉に向かった…。

全ては、扉の向こうにあると信じて……。


扉の前に来ると、子供らは遊びをやめ、俺を見ていた。

俺は、真っ直ぐに扉に向かって進んだ。

扉に着くと、女の子が俺の前に大きく腕を広げて立った。

「ダメだよ、この中に入ったら、全て終わってしまうよ。」

俺はしゃがみ込んで、女の子に、

「大丈夫だよ。わかっている、でも、ここ入らなければならない。おねぇちゃんを助けなきゃなんないんだよ、おねぇちゃん来たろぅ?」

女の子は何も言わない、が、あの男の子が女の子の前に来て頷き、扉の方へ指を差した。

…やっぱり。

男の子は、女の子を突き飛ばすと俺の手を扉に誘った。

女の子は泣きながら立ち上がると、俺に抱きつき、

「ダメ、入っちゃダメ…」

と泣きじゃくるが、俺は、重い扉を開けた。

「剣は抜かないで、まだ扱えないから…これだけは覚えておいて、パ……。」

と女の子は言いながら、腕を離した。

最後の方が聞こえなかったが、俺は扉の向こうに踏み込んだ。

2・3歩進むと、重々しく扉が閉まり始めた。

すると、さっきまで何も言えなかった男の子が目を大きく見開いて…。

「もう………終わりだよ。」

と言い、薄く笑みを浮かべながら扉を閉めきった。

その顔は餓鬼。

俺はそう思った。

扉の向こうは煉瓦作りの廊下だった。

先に光が見える。

俺は、その光へと歩み始めた。

十数m程歩くとその光は、部屋から漏れている光とわかった。

尋常ではない輝きに目を覆いながら、部屋に入った。

目が明るさに慣れてくると、部屋の概要を見渡した。

その部屋は、真っ白い壁。

壁には大小様々な形の鏡が数えられない程並んでいた。

中央には、ベッドがあり、その上には……。

白いシーツをかけられ眠っている…A子がいた。

俺は、そばに駆け寄り彼女を見た、微かだがテンポの良い息をしていたので少し安心をした。

その時だった。

…ん?

俺は、後ろを振り返った。

確に誰かが後ろを通った気配を感じた。

が、誰もいない。

鏡が無造作に飾られている壁だけだった。

…ん?今度は前の方で気配を感じ、そちらを見た。

心拍数が上がる。

そして…。

A子を見た、その時。

俺は、ゆっくりとA子の顔を見てからその先にある影に目を向けた。

あの男だ!

あの男が、A子の枕元に立ち、彼女を見ていた。

そして、ゆっくりと瞳だけを動かし、瞳に俺を映し出した…。


男は、黒いマントにシルクハット…。

あの時の夢の男…。

そう一年前に俺が見た夢の男だった。

瞳が、はっきりと仮面の奥から異様な輝きをしていた。俺は覚えている。

男は、再び彼女を見た。

「彼女を返してもらう!」と言うと、

男は、再び俺の方を見るなり、じゃがれた声で「無理だ。」と言った。

「なぜ?」

「この女は、私との契りと破った。」

「殺すのか?。」

その問いに首を横に振り、壁を指差した。

…?。

俺は男の指を差した方向を見た。

「その鏡を見てみろ」

俺は、その言葉に、壁に近づき、壁にある鏡のうちの一つを覗き込んだ。

すると……。

暗い鏡の中には、裸の女性が胸を隠すように腕を前で組んでぼんやりと浮かんでいた、それは、眠っているようだった。

俺は、その横にある鏡も覗き込んだ、やはり違う女性が同じようにしていた。

…なんだこれ?。

「その鏡の中に居るものは、私のコレクションだ!」

俺は男を見た。

男は、彼女を見つめていた。

「A子もこの中にいれるのか?。」

男は首を横に振り。

今度は違う鏡を指差した。

その鏡は、表面が細かい傷でくもり、鏡の役目が出来ていない感じがしていた。

俺は、その中を覗き込むと、

……!!。

あまりものの光景に目をそむけてしまった。

…その中には、

体が傷だらけの上に髪もボサボサのみすぼらしい女性達が引きつった表情でこちらを見ていた。

「その中の女たちは、私との契りを破った女達だ、今は、私の慰み者…、好きな時に私の相手をしてくれるペットだ!。」

…はぁ?。

俺は、男の狂気じみた言葉に怒りが込み上げてきた。

「契りとは?。」

「純潔だ。……私に見初められ一年純潔を守ると、鏡の中での永遠の美を与え、破ると、そうなるのだ。」

「…おめぇ、何様なんだ?。」

男は、その横の鏡を指差し。

「お前と同じ事を言ってきた者がそこに居る」

と言った。

そこには、同じ様な鏡が隣にあり、俺はその中を覗き込んだ。

そして…。

……うっ!。

胃から込み上げてくる汚物を感じ、あまりものの無惨さに腰を抜かした。

その中は、無惨に引き裂かれ、内臓を露出し、体の各部位を切断たりされ、哀れな姿になっても尚、生きている男達がこちらを見ている。

その光景に俺は、背筋が凍りついた…。

そして、嫌な気配を後ろに感じ俺は振り返った。すると…。


男は、俺の後ろに立っていた。

俺よりも背は高く、脅威を感じさせる雰囲気をだしていた。

俺は、転がりながらその場から逃れると身構えた。

その時、A子の足元に岩に突き刺さっている3本剣が目に入った。

…あれを使うか…。

おれは、駆け足でその剣に近づき、柄を握ると引いた。

…嘘だろう…。

その剣は、抜けない。

別の剣も引いたが同じであった。

「剣には、男と女と子供らの念が入っている。その念に嫌われたか?」

…意味がわからない。

俺は、再び身構えた。

男は、ベッドを挟んで俺との間合いを狭めてきた。

…どうすればいい…。

ベッドのまわりをゆっくりと回りながら、A子の顔の近くまで来た時。

……!!

俺は確かに宙に浮いた、そして、壁の方へ弾かれた。

…ヤバイ!!…。

俺は壁に叩き付けられた。

「チッ。もう少しで仲間入りだったな…。」

俺は上を見ると、ゾッとした。

そこにはあの男達がいる鏡があった。

俺は立ち上がり、再び身構えた。

…さて、どうする?俺……。

男は、自分の腰から怪しい光を放つ剣を引き抜きながら俺に近づいてきた。

…ヤバイ…。

俺は、生唾を飲み込みながら考えた。

そして…。

身構えるのをやめ、立ち尽くした。

「諦めたか?」

男は、そう言いながら近づいてくる。

俺は、ニヤッと微笑んで見せると。

横にある、鏡に力一杯肘打ちをした。

すると、鏡は、クモの巣状にひびが入った。

「なにぃ!!」

男は仮面の中の瞳を丸くして、剣を投げ出し駆け足で割れた鏡へと近づいた。

その時、割れた鏡から悲鳴と共に女性が上半身を出した。

「うわっ!!」

俺は、転がりながらその場から離れた。

男は両手を広げて、呪文を言い始めている。

…今しかない。俺は、A子の側により、A子を揺すりながら起した。

「起きろ!!逃げんぞ!!」

A子は、「う、う〜ン……」と言いながら、目を覚まし俺を見て微笑んだ。

俺も微笑み返すと。

「待っていたよ。必ず来るって思っていた。」

俺は頷きながら、男を見た。

男は鏡の修復を終えて、ゆっくりと振り返りながら

「絶対に許さん……」と言った。

俺は、本気でヤバイと確信すると、再び剣の方へ駆け、剣の柄を持ち思いっきり引っ張った!!

…そして…。


俺は…。

剣を引き抜く事が出来なかった…。

男は自分の剣を拾い上げると、俺達をジッと睨んでいた。

女の子の言葉を思い出した…。

『剣は抜いちゃダメ…』

と言う言葉を。

俺は抜いちゃダメじゃなく、抜けないんだろう、今は無理なんだろう…!!

と思っていた。

「その女の味はどうだった?若者よ」

男はゆっくりとこちらに歩き出した。

……。

俺はA子を見た。

A子は、男を見ながら俺の後ろに隠れている。

「共有しよう、同じ女を抱いたと言う事で、お前にもその女を抱かせてやる!!鏡の中に入っても快楽を与えてやる!!」

…こいつ狂っている…。

俺は間合いを取りながら壁沿いに進んだ。

「女をよこせ!!」

「おめぇ、今までの男がその言葉に屈して、鏡の中でその時を待っているんだな。なんかわかってきた。だから、死ねないんだな…」

「鏡の中は永遠、中に入ると死は無い。」

「いや、性欲と言う欲だけで生きているんだ、やつらは死んでいるんだ!!」

男は、立ち止まり。

ため息をつくと

「欲だけに生きる。何が悪い!!若い男は性欲で生きている、それを見る事が悪いのか!!」

「おめぇ…狂っているな……やっぱ」

そして、俺は片っ端から鏡を割り始めた。

「うぉ〜〜!!」

男は怒りの声を上げながら割れた鏡に駆け寄った。

「どうすれば出られる?」

A子に俺は聞いた。

「何か現世での証は持っている?私が持っていたもの…」

俺は、ハッとして、ポケットからハンカチを取り出すと、コンタクトレンズを見せた。

すると彼女は微笑みながら頷いた。

「次は…?」

「わからない…」

……へ?

俺は彼女を見ながら落胆した。

この後が分からなければ…どうする俺?…あっ!!。

爺さんの言葉を思い出した。

『願えばそこに道は出来る』

…願うんだ!!俺は一か八か願った。

【出口よ、この夢、この場所から逃れる扉よ開け!!】

すると、壁に扉が現れた。

俺は、その扉を開けるとまずはA子を外に出し、

次に俺が扉から出ようとした時に!!

強い力で後ろから首と顔に手がかかり、後ろに引っ張られた。

「お前だけは帰さない!!」

男の声がすぐそこから聞こえた。

俺は痛さに

「痛って〜、放せボケがぁ〜」

と力一杯抵抗し肘打ちを食らわす。

すると、男は仰け反りながら倒れた。

俺は外に出ると再び念じて扉を閉めた。

「お前だけは許さないぃ〜」

と言う声が聞こえてきていた…。

俺はその場に崩れ、

そして…、

眠りに着いた…。

その後、優しい声で…。

『もう、起きる時間だよ』と言う声で俺は目を覚ました……。


俺は…その声に目が覚め、布団から起き上がると鼻に違和感を感じた。

手を当てると鼻血が流れていた。

ベッドから出ると部屋に付いている鏡を恐る恐る見た。

鏡に映し出されたのは…。

鼻血を流し、顔と首に手の平の様な赤い跡が残っていた。

瞼も腫れ上がっていた。

痛い体をゆっくりと動かしながら、俺は階段を降りる。

とりあえず、台所に向かった。

台所に入ると母親が朝食の準備をしていた。

「おはよう」と声をかけると、母親はなにも言わない。

…まさか?と思いながら、再び声をかけた。

すると振り返り。

「どうしたの!その顔。また喧嘩してきのか?さぁ、風呂入って来な」

と俺を巻くし立てた。

俺はホッとした。

風呂に入ると肘が血だらけになっていた。

…あれは、現実?

俺は、朝食を食うと会社に向かった。

会社に着くと、誰もが俺を見て心配していた。

あれは…夢だよなぁ〜、でもこの傷は…?

俺には、まったくわからなかった。

会社が終わり、また一日が暮れた深夜。

家の電話が鳴った。

俺は、その電話にでた。

「もしもし…」

次の瞬間、俺は耳を疑った。

…A子。

そう、A子からの電話だった。

「久しぶりたね。どうしていたぁ?」

「あぁ、変わり無しに生きていた。そっちは?」

「ん?私も変わり無しだね」

他愛も無い話しをして、数十分、そろそろ電話を辞めようと思った時、彼女が言った言葉に、俺は背筋に悪寒が走った。

「ねぇ〜…ありがとう。これがいぃたかった」

…嘘だろう!俺は、曖昧に答え電話を切った。

………。

あれから10年以上が立ち、彼女も結婚したと言う噂を聞いてホッとしついた。

もう…終わった……はず……。

俺は、別の会社で働いている。

その日も、いつもの様に昼飯を食って昼寝をした。

そして、昼休みが終わり用を足して鏡を見たら、

…!!

男は俺を見ていた。

鋭い眼孔で……再び戦慄が体を駆け巡った。

そして、目が覚めた。俺は再び、あの世界に足を踏み込んだのか……。

その時は、近いと言う気がしている……。



…そして、2年後の…。

…【断片的な夢】へと繋げたい…。


誤字、脱字で読みにくい点もあったかと思いますが、最後まで付き合って頂き心から感謝しています。

コメなどありましたらよろしくお願いします。

本当にご閲覧ありがとうございました。


誤字、脱字で読みにくい点もあったかと思いますが、最後まで付き合って頂き心から感謝しています。

コメなどありましたらよろしくお願いします。

本当にご閲覧ありがとうございました。

【モバげー】のサイトにて、続編を掲載中です!!


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