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名もなき詩

作者: さいれ~す

「早くっ、どれにするのよっ!」


「え…?えぇっ!?」


「何でそんな棒一本で戦えるわけないでしょ!何考えてるのよっ!」



何が起きたの?

ってここは何処なんだよ…?

僕は何をしてるの!?



「あなたがファー・セカンドから来たデュエリストって聞いたから安心したのに、何ぼさっとしてんのよ!!ヴァイスクローネ軍が攻めて来てるのよっ!早く手伝いなさいよっ!」


ファー・セカンド?

デュエリスト?

ヴァイスクローネ軍!?


何それ…僕はここで何してるの?



「もうっ!あんたがトロいからレッサーデーモンの大群が押し寄せて来ちゃったじゃない!!」


うわ…何だよ、あれ

めちゃくちゃ恐ろしい形相の鬼?いや、デーモンだから悪魔なんだな。100は超えてるな…

で、あれが襲ってくるんだ…




「って、じゃあ僕も襲われるの!?」


「はぁ?当たり前じゃないのさ、だからアンタが奴らを倒すために応援に来たんじゃない」


応援って何だよ…、あんなの僕に倒せるハズないじゃん…



「ああっ!もう限界っ、この役立たず!!あたしが行ってくる!」


「待ちなよ!君ひとりで戦えるわけないでしょ!」


「私だってエレメンタルの端くれ、このままギルドを見殺しに出来ないわよっ!」


ヴィー…ヴィー…

何だよ、こんな時に携帯の着信かよっ?

ん?なんだこのヒリヒリする熱さは!?


シャツの胸ポケットが熱い

更にポケットから何か出てきたよ!?



カード?


「エルダードラゴンを召喚!シールドカードからリリムとエンプーシをサポート召喚」


「うわ~、アンタは炎のデュエリストだったんだ!エルダードラゴンなんて初めて見たよ!」


「君のエレメントスキルは何?」


「わ、私は風のエレメント、ホーリーウインドでいいかな?」


「構わない、力を貸してくれ」


レッサーデーモンの大群が間近に迫って来た


「リリムのスキル、『タイムトラップ』とエンプーシのスキル、『エアシェイディ』を発動!」


軽い時空間の捻れでレッサーデーモンの進軍が止まり、レッサーデーモンの背中の羽が閉じた


「今だ、エルダードラゴン、スキル『烈火の放鳴』発動、更にホーリーウインド発動!!」


エルダードラゴンから放たれた炎はドラゴンそのもの、更にホーリーウインドの『風』が加わり炎の勢いが増した

恐ろしい形相のレッサーデーモンが一気に焼き払われた



「すごい!すごいすごいよ、君はっ!!」



何が起きたの?

それより僕は今、何をしていたんだ?

僕の胸ポケットからカードが出て…


胸ポケットには携帯電話しか入ってないハズだし、あんなカード知らないよ

それに召喚って…、僕にあんなこと出来るハズないじゃん…


「エルダードラゴンの召喚なんてすごいね、立派なデュエリストなんだね、君は」


「僕はデュエリストなんかじゃないよ…」


「何言ってるのよ、目の前でエルダードラゴンを召喚したじゃない」


確かにそうだけど…



「それより君は誰なんだい?ここは一体…?」


「私はクレトス、風のエレメンタルよ。ここは私たちのギルド『ハイシャパラル』よ」


「エレメンタル?ハイシャパラル?」


「エレメンタルを知らないの?私は風を操ってギルドを防衛しているのよ」


じゃあエレメンタルはスキルを使っての防衛隊って感じなんだな…


「さっき『どれにするのよっ!』って言ったよね?他に何のエレメンタルがあるの?」


「風の他に火、水、大地、森、太陽、月、星とかあるわよ」


「そんなにあるんだ」


「私はギルドの王、ヴァーミリアン様から仰せつかり、君のサポートに来たの。それなのにトロいから、ハラハラしたわよ…」


「それでヴァイスクローネ軍ってのが攻めて来ているんだ」


「そうなの、ヴァーミリアン様の側近だったルードが裏切ってギルドの結界を破壊したの。このハイシャパラルだけは何とか持ちこたえているけど、周りのギルドはことごとくヴァイスクローネ軍に殲滅されたわ…」


「クレトスはあんな怖い悪魔みたいなのと毎日戦っているの!?」


「いつもはレッサーデーモンが5人くらいしか来ないのに今日の数には驚いたわ…5人でも厄介なのに、総攻撃を仕掛けてくるつもりなのね。でも私たちにはあなたがいるわ、炎のデュエリストさんがね!」


「ぼ、僕なんか何も出来ないよ!」


「何も出来ないデュエリストがエルダードラゴンを召喚出来るハズないでしょ~、謙遜しなくていいわよ。さ、もう今日は奴らも攻めて来ないでしょうからあなたを城に案内するわ」



ギルド『ハイシャパラル』のお城か…

本当にここは何処なんだよ…



お城が見えて来た

ヴァイスクローネ軍に攻められた跡があちこちに見受けられる

陥落するのは時間の問題なのかもしれない



「ヴァーミリアン様、ファー・セカンドからの応援の使者をお連れ致しました」


だからファー・セカンドって何処なんだよ…それに僕は使者なんかじゃないし…



「ご苦労であった、クレトス…」


「勿体なき御言葉!ヴァーミリアン様!!」


この人がヴァーミリアン様か…疲れきった顔をしているけど、見ているだけで心が優しい気持ちになれる

わからないけど温かな空気と言うか…何かに包まれているような…


「ありがとうございます。ファー・セカンドから応援に来てくださったのに、王である私がこのような様では申し訳ないですね…」


「いえ、王様…ご病気なんですか?」


「クレトスからヴァイスクローネ軍の侵略は聞いておられるか?」


「はい…。側近のルードが裏切って結界を破壊したとかも聞きました」


「このハイシャパラルの世継ぎ、息子のシャロームがヴァイスクローネ軍との戦いで亡くなってしまったのだ…私の弟であるヒースガルトも…」


そういえばこの城に男がほとんどいない、子供の男の子はいたけど…

もしかしたらみんな戦死したの!?


「ぼ、僕にこのハイシャパラルを救えと…」


「このギルドにもう戦士はいない…ファー・セカンドの使者、いや勇者よ、そなたのお力で我々を救いたまえ…」


王様の澄んだ瞳から一筋の涙が

その涙を見た途端に僕の胸が熱くなった



「わかりました、僕に任せてください!」


うわぁ~!何言ってるんだ僕は!?

そんなこと出来るハズないじゃんか!!

あんなデーモンとか他にも怖いのが絶対にいるんだろ?

マンガじゃないんだ!出来る訳ないじゃん…

なのに「任せてください」ってバカじゃん!!


「ありがとう…」


そう言って王様は深い眠りについた

僕に安心したのか久しぶりの睡眠と側にいたクレトスが言った



僕は一室に案内された

窓からは森があり、大きな川が流れている。その向こうに怪しげな城が見える、恐らくヴァイスクローネ軍の城だろう



クレトスが呟いた

「助けて…ください」


「え…?」


「お願いだから…私たちを助けて…」


「クレトス?」


クレトスの瞳は涙で溢れていた。我慢していたのか、拳を握り締め震えていた


「私の父も兄も…ヴァイスクローネに…」


「もう何も言わないでいいよ…僕がいるから」


そう言うとクレトスは僕の胸の中で泣きじゃくり、そして眠りついた

毎日あんな化け物と戦っていれば堪らないだろ

まして家族を失ったなんて…クレトスは僕よりも年下だろう?それなのに…


僕はわからないうちにヴァイスクローネ軍に対する憎悪を抱き、ヴァーミリアン様、そしてクレトスの涙に必ず報いることを誓っていた



翌朝、早々にヴァイスクローネ軍は攻めて来た

レッサーデーモンは昨日の倍以上いる

それに見たことのない化け物も空を飛んだり、駆けて来たり


僕がコイツらを倒すのかよっ!?

変なこと引き受けちゃったな…と思った時


「信じてるから…」

僕の手を握って小さな声で泣きそうな顔でクレトスが言った

そしてカードを僕に渡した


「私のエレメンタルの仲間達のスキルをカードにしたの、役に立つかわからないけど…」


「ありがとう、大丈夫だよ、君たちを守るって僕は約束しただろ」

クレトスの手を握り締め、正面を向いた




ヴィー…ヴィー…


胸ポケットからカードが出て来た


「エルダードラゴン、リリム、エンプーシを召喚!タイムトラップとエアシェイディ発動!」


次々に襲いかかってくるレッサーデーモン達


「豪火の放鳴!」

ものすごい勢いの炎がデーモン達を焼き払う

それでもまだ化け物達がやってくる


空だけじゃない、陸にも化け物はいる


「まずはどちらかだけでも片付けないと…」


僕はカードを取り出し

「太陽のスキル『シャイニング・ウィザードリィー』と『マグマコロナ』発動!」


灼熱地獄と化した空は真っ赤に染まり、空にいる化け物達の動きが鈍り始めた


「エルダードラゴンのスキル『ラストフェザー、烈火放炎』発動!!」


呻き声なのか、表現のしようがない声で化け物達は焼き払われた


陸上には無数の化け物達が川を渡り始めた


僕はエルダードラゴンの背に乗り、川の岸に向かった


トカゲのような、恐竜のような、熊のような、ライオンのような…

とにかく化け物達だ


川岸に降り立った僕は化け物達を引きつけて


「雷のスキル『サンダーエレメント』と『ライトニング・ボルグシャウト』発動!!」


雷は水を通す性質を使った攻撃に化け物達は溺れるように苦しみ続けた


「雪のスキル『ブリザードロック』、氷のスキル『アイスロック』を同時発動!!」


広い川は瞬く間に凍りつき、化け物達は哀しくもアイスブロックに閉じ込められた


「大地のスキル『マザーズアース』発動!!」


ものすごい地響きと共に巨大な岩が降り注ぎアイスブロックに閉じ込められた化け物達は無残にも砕け散った



「うわぁ~、すげぇよ…あの化け物達を僕が倒したよ…」


クレトスのくれたカードのスキル、どれもスゴいじゃないか

これだけあればヴァイスクローネ軍だって倒せるだろう


「とにかくあの城に行ってヴァイスクローネ軍を滅ぼさないと」


僕はエルダードラゴンの背に乗りヴァイスクローネの城に向かった



城門に着くと


「誰だぁ、てめぇ?ハイシャパラルにエルダードラゴンは居ねえハズだかな~」


「お前がヴァイスクローネか?」


「ヴァイスクローネ『様』だろ、言葉を気をつけろ!オレはこの城の門番のベルリッヒ様だよ。まぁ我が王様に間違えられるのは悪い気がしねえがな~」


「僕はお前達を倒しに来た!クレトスの家族の仇を討ちになっ!」


「は!?オレ達を倒しに来た?寝言は寝てから言いなよ、小僧。笑わせてくれるな~」


「僕をこれ以上怒らせるな…」


「なぁ小僧、悪いことは言わねえ、戻るなら今のウチだよ…」


「怒らせるな…」


「近頃のガキは聞き分けねぇな~。レッサーデーモン達はこんなガキにやられたのかよ、だらしねぇな、まったく…」


「怒らせるなと言っているだろ…」


「クレトスだかクレパスだか知らねえが、どうせハイシャパラルのエレメンタルだろ?そんなのこれっぽっちの価値もねえんだよ、小僧!」



「クレトスを…家族を侮辱するなっ!」


「仕方ねぇな、ちっとだけ遊んでやるか。かかって来いよ、小僧」



「アイビス・ヒルデ召喚!」


「なんだ、お前デュエリストか。ってことはファー・セカンドから来たヤツだなぁ?じゃあ少しは楽しめるかな?」


挑発的に薄ら笑いを浮かべている


「お前がヴァイスクローネじゃないなら構っている暇はないっ!スキル『絶情』を発動!!」


クレトスを侮辱した怒りが頂点に達した僕の力が乗り移ったアイビス・ヒルデの『絶情』は一気にベルリッヒを切り裂いた



「う…そ…だろ…」


ベルリッヒは地に臥した


「クレトスを侮辱することは僕が許さない!ヴァイスクローネも許さないんだ!!」


「ヴァイス…クローネ様は…お前みたいな…ガキを相手に…」

そう言うとベルリッヒは息絶えた



門番を失った城に僕は歩を進めた

まだ怒りに震えながら


おそらく城の一番高い所にいるであろうヴァイスクローネを目指した

その途中に次々に現れるヤツの部下や化け物をなぎ倒した


城のあちこちから炎や黒煙が上がる



「ヴァーミリアン様、見てください!ヴァイスクローネの城から炎が上がっています!」


「ファー・セカンドの勇者が…クレトス、勇者の名は何と言う…」



クレトスは青ざめた

「名前…知らな…い、聞いてない…でし…た」


何故、名前を聞かなかったのか

クレトスは後悔と自責の念に駆られた

もし、あのデュエリストがヴァイスクローネに敗れたら…ハイシャパラルに戻って来なかったら…


クレトスはその場にへたり込んだ

一筋の涙が、またも瞳からこぼれた


「信じてる…彼を信じてる!ハイシャパラルに戻って来ることを!!」

クレトスは拳を握り締め、また彼が握り返してくれた手の温もりを思い出していた




目の前に漆黒の大きな扉が現れた

これより先はない、ここがヴァイスクローネの居場所に違いない


扉を蹴り飛ばし中に入ると大きな剣を携えた男が背中を向けていた

男はハイシャパラルを窓から見つめていた



「お前がヴァイスクローネか!!」


「君に呼び捨てされる筋合いはないけど?」


「つべこべ言うな!お前を倒しに来た!!」


「じゃあ誰かと間違えているね、僕は倒されるような存在ではないよ。少なくともデュエリストなんかにね…」


ベルリッヒ同様に薄ら笑いを浮かべて…


「ルード、相手をしてあげなよ」


そう言うと背後から首を絞められた



「くっ…、ル…ルードっ、お前が…裏切り者の…」


「そうだ、私がヴァイスクローネ軍の参謀長ルード様だよ」


「な、何故…ヴァーミリアン様を…」


「ハイシャパラルを我が物にしようとクーデターを仕掛けようとしたんだがな、あのバカ息子に気付かれてな。処刑される前に牢獄から抜け出して結界を破壊、ヴァイスクローネ軍に翻ったのさ。ヴァイスクローネ軍が侵略してくる予見はしていたからな。まともに攻め込まれたら一溜まりもないからな~」


「お前…最低…だ…」


僕は遠退きそうな意識の中で

「エルダー…ドラゴン、召喚…」


僕の気持ちが乗り移ったのかエルダードラゴンも真っ赤になっていた


手を離したルードから逃れる僕


「デュエリストが我々に勝てるものか!あれを見てみろっ」


部屋にある鏡がハイシャパラルを映す

レッサーデーモン達がハイシャパラルの街を壊していく


「そんな…アイツらは倒したハズなのに」


「だから言っただろ、ヴァイスクローネ軍が負ける訳などないと!」


ギルドにも火の手が上がっている


「クレトス…」


「ん、クレトスだと?あの小娘を知っているのか、小僧よ。あぁ~、そういえばクレトスの家族は全員、私が切り裂いたっけな~」


ハイシャパラルの侵攻を目の当たりにして跪いた僕…


「どうしたら…クレトス…ゴメンよ…」


涙がこぼれ落ちた




ヴィー…ヴィー…


胸ポケットから光が差した


「何だ!?」


クレトスがくれたエレメンタルのカードが宙に浮いている

その中で大地のカードが鏡に向かっていった


大きな鏡が割れた

いや、割れたのは鏡の上に貼られたスクリーンだった

更に大地のカードは窓に向かって飛んでいき窓ガラスを壊した


眩しい光が更に強まり、室内が明るくなった

窓から見えたハイシャパラルは火の手などあがらずに佇んでいる



「幻影?なのか?」


とにかくハイシャパラルは無事なんだ



「エルダードラゴン、ルードもヴァイスクローネも、まとめて倒すぞ!スキル『豪火放鳴』発動!!」


「デュエリストに負ける訳などないと言っただろ!!」


ヴァイスクローネの持つ大きな剣はエルダードラゴンの炎を受け止める


「しかし、さすがにドラゴンだ。こんなパワーは過去に受けたことがない!」


ヴァイスクローネは少しずつだが後退する

ルードも剣を出して盾とするが、真っ赤に焼けている


僕はエレメントのカードを出しまくった


「雷のスキル『ライトニング・ボルグシャウト』、月のスキル『ムーンリッジ』、太陽のスキル『グランドコロナ』、森のスキル『静寂の剣』を一斉発動!!」


ものすごい轟音と共にルードは消え去った

焼き払われた、の方が正しいか…

僕のエレメントカードも発動後に無くなった、力を全て注いでくれたのだろう…


ヴァイスクローネの剣はところどころに亀裂が入り、剣先は欠けていた

ヴァイス自身も傷つき手負いの状態にある


「私の剣を傷つけてくれるとは…許せん!!」


「僕はお前のやったことを許しはしない!お前もルードのように消え失せてしまえっ!」


ヴァイスクローネは最期の力を振り絞り、鬼の形相で剣を振りかざし突進してきた


「死ねぇー小僧!!」


「氷のスキル『アイスロッド』、水のスキル『ウォーターパニッシュ』、雪のスキル『ブリザードロック』、星のスキル『永遠の眼差し』、花のスキル『沈黙の鼓動』、一斉発動!!」


スキルカードは粉々に砕け散った

エレメンタルの全力が注がれたスキルはヴァイスクローネを確実に弱らせた


「どうした小僧、終わりか…?まだ私は倒れてはいないぞ…」


剣を支えにして立っているのがやっとだろう

それでもこの強がりは軍を統治する男の精神力がもたらす物だろう



「終わりじゃないさ…お前を倒すのは僕じゃない。クレトスが倒すんだ!」


僕は風のスキルカードをかざした


「僕の怒りとクレトスの悲しみ、全てをお前にぶつけてヴァイスクローネは滅びる!!」


「やってみろ…小僧…」


「エルダードラゴン!全力で戦え!!スキル『ジ・エンド・オブ・センチュリー』発動!」


今までにない炎の竜がヴァイスクローネを襲う

ヴァイスの剣も盾の威力を持ってはいない

それでも軍を統治した男のプライドは避けることを許さず、鬼の形相のまま…まさに仁王立ちだった


「クレトス、君がこの戦いを終わらせるんだ…風の最高スキル『トルネードプロテクション』発動!!」


炎の竜に烈風が加わり、全てを焼き尽くさんとエルダードラゴンは轟火と化した



ヴァイスクローネは僕を睨みつけたまま…

そして跡形もなく焼け散った




戦いは本当に終わった



僕はエルダードラゴンに飛び乗りハイシャパラルに戻った



ギルドに戻るとみんなが出迎えてくれた


その中にクレトスはいない

エレメンタルのみんなもいない




聞けば僕が戦いに出てからクレトス達は倒れたという

自分たちのスキルをカードに注ぎ込むことに全霊を掛けたのだろう…



僕はクレトスの部屋に向かって走った

ノックなど礼儀もわきまえずに扉を開けた


「クレトス!帰って来たよ、起きてよクレトス!ねぇ!!」


クレトスは微動だにしない

深い眠りにつくクレトスの手を握りしめた


わずかにクレトスの温もりが僕の手に伝わる

それだけで少し安心した



「ただいま、クレトス…ゆっくり眠っていいよ。僕は待っているから」



そう言うと僕もいつの間にか眠ってしまった

ただクレトスの手は離さなかった



気が付けば朝になっていた

僕も一晩このまま眠っていたようだ…

誰かが起こしに来たようで食事がそばに置いてあった



クレトスはまだ目を醒まさない

僕は喉が乾いたから置いてあった飲み物を一気に飲み干した

何か体中に新鮮な血がどんどん巡るような気持ちがした


「何か生き返ったような気分だな」

と呟いていた


「おかえりなさい」


突然の声


クレトスが目を醒ました



あまりに突然過ぎて驚いてしまった


「目が醒めたんだ、クレトス!ただいま!」

と言って、僕はいきなりクレトスを抱きしめてしまった


ビシッ!!


クレトスから強烈な平手打ちを食らった

それでも僕はニコニコとして、クレトスの覚醒が嬉しかった


「クレトス、ヴァイスクローネを倒したよ。クレトス達の全霊を込めたカードのおかげだよ…本当にありがとう」


「私こそ、このハイシャパラルの為に危険な思いをさせてごめんなさい…、でも本当にあなたが帰ってきてくれて良かった。信じていたけど、とても不安だったの…」


「大丈夫だって言ったじゃないか」

僕は悪戯に笑ってみせた


次の瞬間



クレトスの唇は僕の唇を重ねていた




「やった~!!」






………

・・・・・・



「おい、お前…試験中にグッスリ眠って、更に『やった~!!』って寝言とは大したモンだな~」


「ヴァイスクローネ!?」


「…はぁ!?お前バカにしてるのか!今は国語の試験中だぞ!後で教員室に顔出せ!!」



「夢…なの…?」



そうだよね、夢だよね

僕はクレトスに会った時には鉛筆を持っていたんだから…

僕はただの中学生、デュエリストなんかじゃないんだからさ



ヴィー…ヴィー…



「お前!試験中なのに携帯の電源切ってねぇのかよっ!堂々とカンニングたぁ大した度胸だ!!」


「す、すみません!直ぐに電源切ります!」



確かに僕は試験前に電源切ったハズなのに…それに携帯はカバンにしまったよ、確かに…



ヴィー…ヴィー…

ヴィー…ヴィー…

ヴィー…ヴィー…





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