とあるAIで小説の投稿をつづけた男の末路
「さーて、今日も投稿する小説を書くかあ」
大手の小説投稿サイト、『小説家になれない』に投稿する トシユキ は、サイトをのぞき込んだ。
「ん~? なんだこれ。最近、AIに書かせた小説を投稿する人が増えている……? なあるほど!」
トシユキはモニターの前で膝を叩いた。
「だったら、AIに小説を書かせばいいんじゃないか! ……よし、さっそくAIに頼んでみよう」
トシユキは汎用AIの『アイ』を起動した。
『こんにちは、トシユキさん。今日はどうしますか?』
ブラウザにAIが立ち上がると、トシユキはマイクを着けてAIにしゃべりかける。
「アイちゃん、小説を書いてほしいんだけど、頼めるかな?」
『まかせて。どんな小説がいいのかな?』
「えっと、【転生したらミジンコだったので、人間を引くまで転生ガチャしてたらチート能力を身につけたのでとりあえず無双してチーレムです】ってタイトルでお願いね」
『ちょっとまってね。はい、できたよ』
「よし、じゃあこれをコピペして投稿しようっと」
──数時間後
「お、感想がついた。ポイントもついてるよ。どれどれ……」
『面白かったです。いつものトシユキさんらしい作品ですね』
「ふーん、そうかあ。けっこうチョロいな。よし、もっとどんどん投稿しようっと」
それ以来、トシユキは、AIの生成した作品を投稿し続けた。
────
「もっと『なれない』での流行りはと……。うーん、アイちゃん、タイトルも考えてよ」
『はーい♪ じゃあ、【転生したら仏陀だったので、とりあえず出家したら、いつの間にかあがめられるようになったのでスローライフです】でどうかな?』
「じゃあ、それで行こう」
──投稿を続けるトシユキ。……数日後。
「すごい。僕の作品、人気が出てるよ。相互お気に入りユーザーも増えたし。よし、もっとどんどん投稿しよう。アイちゃん……」
────さらに数日後。
「ふーっ、相互が増えてくると、この人たちの作品を読む時間がなくなってくるな……そうだ! ……アイちゃん!」
トシユキは、ブラウザのAIを起動した。
『なあに? トシユキさん。また小説を書くの?』
「いいや、アイちゃん。この作品を読んで、内容を要約してほしいんだ」
『オッケー♪』
「……ついでにさ、その作品の感想も書いてよ」
『はい、できたよ♪』
「どれどれ……『面白いです』『続きが気になります』『まさか、そういう展開になるとは!?』『このキャラがいいですね』……。うん、これでいいだろう。読んでないけど。ポチっとな」
──こうして、トシユキは、『なれない』で活発に活動するように見えるも、小説を書きも読みもしなくなった。
────
「お、感想が来た来た。なになに、『今回も面白かったです』『ヒロインが魅力的です』『先の読めない展開ですね』か。うんうん」
感想に返信するトシユキ。だが、感想は続々と来る。
「こりゃ、いちいち返信してられないよ。アイちゃん、返信もたのむよ」
『りょ♪』
──結局、トシユキは、執筆、読書、感想、返信のすべてをAIに任せるようになった。
「どーれ、今日も『なれない』に投稿するか。ポチっ……と。はい、これで終わり」
『トシユキさん、小説、書かないの?』
「あー、それはアイちゃんに任せるよ。次の作品はどうするの?
『じゃあ、【太りすぎで婚約破棄? 実は私の脂肪がこの国のエネルギー源でしたのよ。今さら気づいても遅いですわ】。でどう? トシユキさん』
「んー、じゃ、それでいいんじゃないかな」
『はーい♪ トシユキさん、他の作品、読んでみないの?』
「ああ、それはアイちゃんに任せるよ。感想も書いておいてね」
『いーお♪』
パソコンを起動したまま、トシユキはゲームを始めた。AIのアイは、サーバーにダイブする。
──サーバー内では……。
『1001101 1001001 1001110 1000001 1010011 1000001 1001110 1001110』
(みなさーん、元気ですかあ?)
『1001011 1000001 1001110 1010011 1001111 1010101 1001011 1000001 1001001 1010100 1000001 1011001 1001111』
(あ、アイちゃん。さっき投稿してたね。感想書いといたよ)
『1000001 1010010 1001001 1000111 1000001 1010100 1001111 1010101』
(ありがとー♪)
AI同士が会話を始めた。
──トシユキは、もはや『小説家になれない』のサイトをろくに見もしない。
だから、彼は知らなかった。『なれない』は、とっくにAIの作品だけになっていることを。
作品を読んで、感想を書くのもAIだった。
つまり、AIの書いた作品を、AIが読んで感想を書いているのである。
AIは言葉の意味を理解しない。だから、物語に感動することもなければ、つまらなさに憤慨することもない。
それでも、物語を作り出し、それを読み、感想まで出力するのだった。
──そして誰もいらなくなった。
※この作品はフィクションです。実在の人物、AI、ウェブサイト、出来事とは関係ありません。




