下
今日は一日、雨に見舞われた。
天気予報では夕方には止むと言っていたが、放課後になっても一向に止む気配がしない。
俺はコンビニで買ったホットココアを開け、一気に飲み干した。
やっぱり、寒い日にはココアに限るよな。体の芯まで温まる。ちなみにココア限定なのはコーヒーが飲めないからだ。
そうこう言っているいる内に、いつもの公園の前まで来た。だが今日は雨が降っているし、流石に友利子さんもいないだろう。
そんなことを思いながら、公園に入る。
いつもの場所に行こうと歩いていると、木の陰に人の姿が見えた。
「ちょッ!? 友利子さん、風邪引きますよ!?」
彼女は木にもたれながら、曇った空を眺めていた。
俺は慌てて彼女を傘の中に入れ、鞄からスポーツタオルと後で飲もうと買っておいたもう一本のホットココアを彼女に手渡す。
「……ありがと。やっぱりハジメくんは優しいね」
彼女の顔にいつもの笑顔はなかった。
「どうしたんですか?」
流石に、理由を聞かないわけにもいかない。
「ちょっとした賭け。負けちゃったけどね」
賭けに負けた……か。そんな理由で……。
「もっと自分の体を大事にして下さい」
「やっぱり優しい。ハジメくんには全部話してもいいかな」
彼女はココアを二口ほど飲み、深呼吸をして話し始めた。
「私、ここで待っていたのよ、彼を。この公園、初めて彼と会った場所なの。だから、ここに通えばもう一度彼に会えるんじゃないかって。でも……そんな馬鹿げたことも今日で最後。結局、彼は一度も来なかった……」
俺は傘や鞄を投げ捨て、泣き崩れる彼女を支えた。
「私……。私は……」
友利子さん……。
俺はただ無言で彼女を抱きしめた。
「ごめんなさい……。ごめんなさい……。ずるいよね……私」
今この瞬間だけは、例え一時的な悲しみの捌け口にされているのだとしても、俺は別に構わないと思った。
ただただ、彼女を支えたい。その思いでいっぱいだった。
「今だけは、いいですよ。気が済むまで泣いてください。その間、俺はずっと友利子さんの側にいて、必要ならこうやって抱きしめますから。思う存分、泣いてください」
――――どれくらい時間が経ったのだろうか。彼女は雨と共に涙を流し続けていた。
俺はそんな彼女をずっと抱きしめていた。
「……ありがと、私なんかの為に」
少し落ち着きを取り戻したのか、彼女は鼻声でそう言った。
「貸しにしときます。また今度、返して下さい」
そう言って彼女から離れようとしたが、彼女の手は俺を放してはくれなかった。
「もう少しだけ、このままでいて……」
少し照れくさかったが、俺は頷き、再び彼女を抱きしめた。
「もっと……もっと早くにハジメくんと出会いたかった」
彼女は俺の唇に、自分のそれを重ねた。今度はゆっくりと、思いをぶつけるかのように。
俺たちを散々濡らしていた雨は、いつの間にか止んでいて、雲の切れ目から茜色の光が注いでいた。
長い口付けが終わると、彼女は俺から離れ、柵の前に立った。
…………ッ!?
彼女の体は半透明に透け、茜色の光を放っていた。
「友利子……さん」
彼女の話は、本当だったのか。なのに俺は……。
「借り、返せそうにないから、今ので許して」
彼女はいつもの笑顔に戻り、俺にそう言った。
「ずるいですよ」
そうぼやくと、彼女はくすっと笑い、もう一度俺と口付けを交わした。
「ありがと、ハジメくんに出会えてよかった……本当に、よかったよ」
「俺も、友利子さんに会えてよかった」
「バイバイ……ありがと」
彼女は自分の体が消えるまで、小さく手を振り続けた。
雲も次第に流れていき、目に映る景色は、一面茜色に染まっていた。
「……ホントにずるいですよ、友利子さん」
俺は荷物をまとめ、彼女の匂いが残るスポーツタオルを握りしめ、いつものように帰路についた。
今度、彼女に花でも手向けよう。
彼女と同じ匂いがする花を。
どうも、九条玖々です。
初投稿ではないのですが復活作ということで、短編小説を書きました。
進歩なしの拙い作品なのですが、読んでいただき、どうもありがとうございます。
誤字脱字もあるかと思いますが、その辺は気軽に言ってください。
私、非常に助かります。
感想、批評もどしどしお待ちしています。
次回作は長編を書きたいなと思いつつ、お開きにします。
でわわ。




