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1-9 芝居

「おはよう!ウィル、結婚して!」


「……却下」


「今日もありがとう!わぁ、ベーコンエッグ!完璧な半熟具合ね!美味しそう〜!」


「…………」


 スルンガルドに来て10日目の朝。ウィルとのこのやり取りにも随分と慣れてきた気がする。宣言した通り、爽やかにできているし余計な気も使わせていないだろう。私もやればできるじゃないか。そう感慨深く感じながら、満足げに朝食の席につく。


 こんがり焼けたパンに瑞々しいサラダ、フレッシュなオレンジジュース。そしてゴースさんの絶品ベーコンエッグ。私の大好きなメニューだ。


「ん〜〜幸せ〜〜〜!」


「……なんかあまりにも慣れ過ぎじゃないか?」


「そう?とにかくゴースさんの朝ごはんが美味しすぎるのよ。このベーコンエッグも昨日食べたフレンチトーストも、信じられないぐらい絶品よ!未来永劫引き継いでいってほしいわ!」


「…………」


 何故かウィルは微妙に不機嫌そうだった。何か気に障ることでもしただろうか。


 そんな朝食の席。ゴースさんはウィルの様子も気にすることなく、私にニコニコ顔でオレンジジュースのおかわりをくれた。


「そんなに気に入って頂いて光栄です、リズ様。呪いの方も毎朝順調に処理できているようで何よりです」


「ありがとう!なんかもう挨拶みたいなものかなって」


「ふふ、ふふふ、挨拶ですか」


 逆にゴースさんは妙にご機嫌だ。魔族は笑いのツボが違うのかもしれない。そう思いながら、カリカリのベーコンと半熟卵を口に運ぶ。


「ん〜〜〜!おいひい!!」


「……よかったな」


 ウィルは呆れた顔でそう言った。そんなウィルを視界の端に入れながら、もう一口卵を食べる。


 ――挨拶みたいなもの。正直言って本当は恥ずかしいのだ。勢いがないとやってられないわ、こんなこと。


 なんて酷い呪いだと頭の中で悪態をつきながら、オレンジジュースを一気に飲み干す。ぷはぁ!と今日も元気に振る舞う私を、ウィルはじとりとした目で一瞥してから、ヌルヌルとコーヒーを飲んだ。


「んで、お前は魔獣の世話はうまくいってんのかよ」


「もちろんよ!みんなすごく可愛いわ。特にこの間来たばかりの豚っぽい魔獣たちは……って、いけない!まだみんな慣れていなくて大変なんだったわ!!!」


 そうして。あっという間に朝食を平らげた私は、数分後には獣舎にいた。


『ピギィ!』


『ブヒィ』


「おーよしよしよしよし」


 群がる小さな豚っぽい魔獣たちを撫でながら餌を配る。肩には目玉が飛び出した鳥のような魔獣。その向こうにはうっかりこちらの世界に来てしまった小さな小鬼が泥だらけになって遊んでいる。


「……馴染みすぎじゃないか?」


 少しして様子を見に来たウィルが呆れた顔で呟いた。それを満面の笑みで振り返りながら、肩の上の鳥っぽい魔獣にエサをあげる。


「そう?それなりに馴染めたかな」


「馴染んだも何も、前からいた奴らよりも魔獣と戯れてるだろ」


「まぁ祝福持ちだから?」


「ドヤ顔で言うなよ。あと祝福持ちだからってここまで馴染まないからな普通」


 えっそう?と首を傾げる。すると、横にいた魔獣のお世話係の獣騎士のトニが、目を潤ませてクワッと手を広げた。


「本当ですよ!祝福持ちのご令嬢というから、聖母のように魔獣に手を差し出す感じだと思ったのに!見てくださいこの勇ましい姿を!」


 そんなに勇ましいか?と我が身を見下ろす。


 青いツナギの作業服に首に巻いたタオル。魔獣と戯れたおかげで結んだ髪の毛はほぐれていて、大きくて頑丈な長靴は、あちこちが黒く汚れていた。


「勇ましいというか、みすぼらしいの間違いじゃない?」


「何を言いますか!」


 他の獣騎士さんがズイッと身を乗り出してきた。


「踏まれたり吠えられたり威嚇されたりで、心身ともにしんどかったんです!」


「こうやって祝福持ちのリズ様が戯れてくれるから掃除は倍速だし!」


「耳掃除だって、ブラッシングだってできますよ!!!」


 獣騎士さんがそう言うと、豚っぽい魔獣達は短い毛を自慢するようにフンッと胸を張った。


「もーみんな可愛いなぁ」


『ピギィ!』


 嬉しそうに豚っぽい魔獣達が駆け回る。その隙にと足元の糞やら何やらをささっとスコップで掃除した。


 うん、これでスッキリ。にこやかに顔を上げると、先ほどの獣騎士さん達がうるうるした目でこちらを見ていた。


「ほら!こうやって絶対ご令嬢が触らないようなやつも片付けてくれる!」


「最高!」


「俺たちリズ様についていきます!」


「もう……お前たち」


 私はスコップ片手に腰に手を当て、ドヤ顔で言った。


「リズ様なんて呼ぶなって言ったろ?」


「「「リズのアニキー!!!」」」


「はっはっはっは」


「お前はいつから性別変わったんだよ」


 ウィルが柵の向こうで不機嫌そうに頬杖をついている。おや、もしかして悔しいのかとニヤニヤとしながらウィルの顔を覗き込んだ。


「もしかして私がみんなの信頼を集めて妬いてらっしゃる?」


「んなわけねぇだろ」


「そう?でも不機嫌そうじゃない」


「お前が調子乗ってるからだ」


 やっぱりウィルはちょっと悔しそうだった。それを見たトニがニヤニヤと笑う。


「ふふふ、リズのアニキにかかるとウィル様も俺たちと似たようなもんだなって気がしてきますね」


「なにそれ」


「リズのアニキ……これでもウィル様は帝国の中央ではモッテモテなんですよ?」


「それゴースさんも言ってたけどほんとなの?」


 そう首を傾げると、いよいよウィルも頭にきたのか口を真一文字に結んで私を睨んだ。


「皇国に送り返すぞ」


「ごめんって。冗談だよ。ちゃんとかっこいいよ?」


「……お前ムカつく」


「えぇ〜?」


 ケラケラ笑いながらウィルにうざ絡みしていると、そばで嬉しそうに私たちを見ていたゴースさんが、おや?と宙を見た。


「ウィルフレド様。どうやらお客様ですよ?」


「お客様?誰だよ、今は訪問の時期じゃないだろ」


「訪問の時期?」


『帝国だと縁結びの時期があるんだよ』


 そう言うロズの声に振り返ってびっくりした。


 美しい黒髪にボンキュッボンの美女が艶めいた黒いドレスでそこに立っていた。


「っっっ、びっくりした!ロズね!?」


『ふふ、そうだよ』


 口元を隠していた扇を外すと、美女の珠のような頬に猫の髭が生えている。思わずその顔に吹き出した。


「ちょっ…笑わせないで!何でそんな姿なの!?」


『またウィルに求婚しにご令嬢が来たんならいつもの作戦で追い返すのかなって』


「いつもの作戦?」


『悪魔公爵の恋人作戦。ここまで盛りに盛ったら勝てないでしょ?大体のご令嬢は、僕がこの姿でウィルの膝の上に乗った段階でみんな帰るよ』


 そう言うとロズはぷるんとたわわな胸を揺らした。


「め、目のやり場に困るわ……ウィルはこういうのが好みなのね」


「なんでそうなる。断じて違う」


「えっそうなの?」


「…………」


 またウィルが不愉快そうな顔になった。最近この顔をよく見るのだけどなんでだろう。


 ウィルは私のきょとんとした顔を見て、がくりと肩を落としてため息を吐いた。


「で……ゴース。今回は誰が来たんだよ」


「んー……どうやらご令嬢では無いですねぇ」


 そう宙を見つめていたゴースさんは、なんだか少し怖い顔でニヤリと笑った。


「……いわくつきの方のようですねぇ」


「いわくつき?」


 はてと首を傾げた私に、ゴースさんは再び穏やかな笑顔に戻り、ニコニコと説明し始めた。


「皇国の方ですね。遠視してみましたが、あのフニャフニャの小洒落た金髪をみた感じ、噂のリズ様の元婚約者かと」


「えっ!?ロスナル!?なんで!?」


「さぁ、なんででしょうね?上品そうな吟遊詩人っぽい人も一緒ですよ?」


「吟遊詩人!?ますます意味が分からないわ」


 ギョッとして声を上げる。もはや私に用など無いはずだ。一体何なんだろうと慌てていると、向かいにいたウィルが、至極悪そうな顔でニヤリと笑った。


「なるほどな……まぁ大体予想できたけど」


「えっ、ウィルはロスナルが何しに来たのかわかるの!?」


「アホか。大体想像つくだろ」


「いいえ!?全くわからないわ……一体どうしたんだろ」


 困惑した私に、ウィルはやれやれと呆れながら説明した。


「美辞麗句ならべてお前を連れ戻しに来たか、名誉挽回しに来たに決まってんだろ」


「んん???どういうこと?」


「ほんと、お前はこういう話の察しが悪いな。まぁいいや。せっかくだしこっちも同じ手で遊んでやろうか」


 そう言ったウィルは、引き続き悪そうな表情でゴースさんに顔を向けた。


「ゴース、街の新聞記者とか旅の商団とか、噂好きそうな奴集めて。それから……そこの作業服女をいい塩梅に着飾らせて」


「はっ!??」


 驚く私に、ウィルがクククク……と悪そうな笑みを向ける。


「あのクズ男にも……お前にも、しっかりと思い知らせてやるよ」


「なんで私も!?」


 意味がわからんと思った、数十分後。私は本当に美しく着飾られてスルンガルド城の謁見の間の脇にいた。


「ウィル……なんなのこれ」


「いいから。とりあえず言われた通りにしろよ」


 そうこうしているうちにロスナルが城に到着したと知らせが入った。慌てて玉座の横の見えない位置に隠れる。


 少しして。ギィ、と開いた扉から入ってきたのは、本当にロスナルだった。


「スルンガルド公爵閣下におかれましては、ご機嫌麗しゅう……」


「儀礼は不要だ。それで、何か用?」


 珍しくちゃんと公爵っぽい服を着たウィルが、不機嫌そうにロスナルの挨拶を切り捨てた。因みに今日は悪魔の仮面を付けていないけれど、後ろには笑みの一切無いゴースさんがまさに魔人という出で立ちで立っている。


 これはちょっと怖い。ロスナルの顔も心做しか青ざめている気がする。


「っ、リズはどこですか!」


 ロスナルが突然悲壮感を漂わせながらそう叫んだ。えっ何!?と驚いていると、ロスナルは更に胸に手を当てて語りだした。


「私は愛に溺れ、彼女を呪いで縛り付けようなんて馬鹿な真似をした。それは赦されないことでしょう。だけど!この異国の城でリズが泣き暮らすのを黙って見ていることなどできない!私の命はどうなっても構わない、リズを、リズを返してください!」


 その情熱的な言葉に驚いて両手で口を塞ぐ。ロスナル、あなたは………本当にどういうつもりなの?全く分からない。連れ帰されてもウィルがいないと死ぬんだけど。


 頭にはてなマークが大量に浮かぶ私をよそに、玉座に座るウィルはロスナルの口上をふん、と鼻で笑い飛ばした。


「へぇ。夜会で俺にクズ呼ばわりされたのがそんなに響いたのか。もう皇国の女には見向きもされなくなったか?」


「っ、な、なにを……!」


「で、後ろの吟遊詩人は、この話をキラッキラに美しく仕立て上げて広めるために金で雇ってきたってとこか?おかげで今日はギャラリーが多くて賑やかだな」


 ウィルはニヤニヤと意地悪く笑った。因みに窓の外にはスルンガルドの新聞記者と旅の旅団と画家と噂好きのおばさまたちが大量に窓に張り付いていて、こちらを興味津々で眺めている。それを見て、ロスナルはギリ、と歯を食いしばり、顔を赤らめた。


「ふざけないで下さい!私はリズのためにわざわざ国境を越えてここまで来たのです!」


「そうするしか無いぐらい切羽詰まってんのか?大丈夫かよ、まさか女以外にコネが無いとか言わないよな」


「っ、ここまで私を愚弄するとは、やはり悪魔公爵と言われるだけのことはありますね」


 なぜか上から物を言っているが、全くウィルに勝てていない。ロスナルってこんな感じだったかなとぽかんと様子を見ていると、ウィルがチラッと私の方を見た。


「リズ、こっちに来い」


 頷いて、玉座横のカーテンからそっと進み出る。その私の姿を見て、ロスナルはぎょっと目を見開いた。


「なっ……リズ……なのか!?」


 上質な生地のマーメイドのブラックドレスに、丁寧に結い上げられた栗色の髪の毛。そして、おどろおどろしい悪魔の仮面。それらを身に纏い、私はゆったりと玉座に歩み寄り、そしてゆっくりと仮面を外した。


「久しぶりね、ロスナル」


「な…………」


 もちろん仮面の下は美しくお化粧をしている。スルンガルド城にいたメイドさんが超特急でやってくれたんだけど。普段お化粧をしていないからか、はたまた肌が丈夫だからか。想像以上にツルンと美しく仕上ったその顔を、できるだけ整った無表情のまま保つ。


「おい、誰が仮面を外して良いと言った?」


 事前に示し合わせていた通り、ウィルのその言葉を聞いて、できるだけゆったりと仮面をつけた。因みにこの後は『とにかく黙ってじっとしてろ』とのことだった。一体この後どうする気なのかと変な汗が出てくる。もちろんロスナルは私を凝視したままだ。


 どうやらこの作戦は美しく着飾った(?)私を戦力としているらしい。でもあのぽかんとしたロスナルの様子を見た感じ、やっぱり無理があったのではと半泣きになる。胸だってツルペタだし。背だってちょっと高いし、女らしさも色気も微妙だ。さっきのロズの姿とは雲泥の差だ。もう帰りたい。


 が、そんな焦る気持ちは、次いで聞こえたウィルの言葉に一気に霧散した。


「俺のために着飾ったのに、他の奴にその顔見せてんじゃねぇよ」


「!?」


 仮面の下で驚愕の顔になったのと同時に、ウィルはぐいっと私の手を引いた。思わずよろけて、玉座に座るウィルの膝の上に尻もちをつく。


「っ!?」


「……黙っとけよ」


 耳元でウィルが小さくそう囁いた。思わず口を真一文字に結び、息を止める。


 そして、ウィルは私を横向きに膝の上に乗せたまま、私の瞳――じゃなくて、悪魔の仮面のおでこあたりを妖艶に見つめた。


「残念ながら、お前はもう俺がもらったからな。帰りたいって言っても帰さないからな」


 そして首筋に落ちていた私の髪の毛を一房取って持ち上げた。口に触れはしなかったけど。多分ロスナルの角度からは口づけたように見えるはずだ。


「さぁ、もういいだろ。そろそろ戻ろうかリズ」


 そう言ってウィルは私を横抱きにしたまま立ち去ろうと腰を浮かす。


「っ、あの!お待ち下さい、スルンガルド公爵閣下!!!」


「なに……お前、まだいたの」


 ウィルはけだるそうに私を膝に抱いたまま座り直した。そして、ロスナルに目を向けると冷たく言い放った。


「お前に興味ないから。リズも渡さない。さっさと帰れ」


「っ、しかし私は――……っ、!?」


 両脇から、ぞろぞろと悪魔の仮面をつけた人達が現れる。よく見たら屈強な獣騎士さんたちだった。流石のロスナルもその背後の騎士や吟遊詩人も、大量の悪魔の仮面に囲まれて顔色が悪くなっていく。


「何度も言わせんなよ。早く帰れ。俺のもんに二度と手出そうとすんなよ」


 突然大きな天窓がガタン!と開き、ロンがぬっと顔を出した。そして、歯をむき出してギョエェェェ!と吠える。小鬼がカーテン裏から出てきてケラケラと笑い、豚に似た魔獣がピギィィィと窓の外で鳴く。


 ウィルは凄みを利かせてニヤリと笑った。


「喰われる前に早く帰ったほうが良いぞ?」


 玉座横の外につながる扉が開き、魔獣達がなだれ込んできた。


「ウワァァァァ!!!」


「お客様のお帰りですな」


 ゴースさんが楽しそうに出口側の扉を開けた。魔獣たちに追いかけられて、ロスナルや吟遊詩人達が慌てて走り去って行く。そしてその後ろを新聞記者と旅の旅団と画家とおばさまたちが嬉しそうに追いかけて行った。


 ドドドドドという遠ざかっていく足音。それを聞きながら、呆けたようにウィルに顔を向けた。


「なにこれ……」


「悪魔公爵っぽいだろ?」


「やり過ぎじゃない?」


「理詰めよりこの方が手っ取り早いだろ。お前の元婚約者みたいな面倒な奴には特に」


「確かに……」


「ほほ、二人とも名演技でしたぞ?」


 ゴースさんが満面の笑みでそう言った。それをウィルがドヤ顔で受け取る。


「だろ?しかも呪いに影響のなさそうなギリギリの言葉を選んだからな。これでクソ男の女遊びもお終いだ」


「えぇえぇ、完璧でございます。まさかこんな情熱的なウィルフレド様を見られるとは」


 そう言うと、ウィルはより得意げな顔をした。


「分かったかリズ、俺は浮名は流してないが、断じて冴えない男じゃない」


「ま、まぁ……ちょっと遊び人っぽかったけど」


「っ、あ、遊び、人……!?」


 思いの外ウィルはショックを受けた顔をした。冴えてる(?)男だと証明したかったんじゃないのかと、訝しげにウィルを見る。


「違うの?なんか女慣れしてるっていうか……」


「っ、慣れてるが慣れてない!」


「なにそれ」


「ホッホッホ、ウィルフレド様、落ちついてください。リズ様、ウィルフレド様はとてもおモテになりますが、普段は王宮をあの手この手で逃げ回っている方ですぞ?」


「そうなんだ?」


 へんなの、と思いながらおもむろに悪魔の仮面を外す。案外重かったので疲れた。ただ、演技が苦手な私としては、とても役に立ったけど。


「仮面ってやっぱり使い勝手がいいわね。無表情を続けられなかったから助かったわ」


「だろ?お前はすぐ顔に出るからな。だから仮面つけて黙っとけって……」


 得意げな表情のウィルと間近で目が合う。


 ほんの少し、間が空いて。そして、ウィルはぱっと顔をそらした。


「勝手に仮面外すな」


「えっ!?まだダメだった!?」


「さっさと降りろ。重い」


「自分で乗せといて酷くない!?」


 ちょっとは綺麗になったと思ったのに。全く意味を成して無かったようで、少しいじけながらウィルの膝から降りる。そりゃあ帝国の中央でウィルに迫るお嬢様方と比べれば、私なんて獣の世話をする下女のようなものだけど。


「せっかく綺麗にしてもらったのになぁ」


「……だからダメだっつったろ」


「へ?」


 なんて言った?と聞き返そうと思ったのに。


 ウィルは私に背中を向けて、謁見の間から出て行ってしまった。

読んでいただいてありがとうございました!

自称キレッキレのリズさんはやはり鈍感なようです。

「照れたウィルかわいい」と、にやにやが抑えられなかった読者様も、

「リズ、そろそろ気づいてあげてw」と今のところ脈ナシのウィルがちょっと不憫に思えてきたあなたも、

リアクションブクマご評価ご感想なんでもいいので応援して下さると嬉しいです!

ぜひまた遊びに来てください!

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