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影(闇)の勇者は不安定  作者: ヒーズ
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第9話:異世界の日々

初級魔法が一通り使えるようになったら、次は下級魔法を一通り使わされて。

下級の次は中級。そして上級と。休日が一切なかった。

はぁ。何度あの激しい眩暈と吐き気に耐えたのか。酷い時は頭痛もあったし。

そのお陰で、保有魔力量は『A-』まで増えて、色んな魔法が使えるようになったけど。

そうか。気が付けば、私が『勇者』?として“召喚”されてから、もう1年が経ってるのか。

正直なところ、地球がどんな場所だったのか。思い出すのも難しくなっている。

まあ、その主な原因は。前の世界並みに忙しい日々にあるんだけど・・・。

でも、睡眠時間は凄く伸びた。体感、2倍くらいだから。8時間も寝てるのか!

職場の環境も、比べられないくらい良いし。仕事の内容は今の方がブラックだけど。

この世界で、最初に師匠に手を差し伸べてもらって本当に良かったと思っている。

・・・あっ!そう言えば、私と一緒(いや、私が一緒って言った方がいいかな?)に召喚された人達、

今頃どうしてるんだろう。


「・・・おい、ミオ。魔法の安定感が低い。お前、また考え事してるだろ」


急に後ろから注意された私は、驚いて魔力操作を乱してしまい。魔法が消えた。

ふぅ。消えてよかった。半年ほど前は、誤って攻撃魔法を撃っちゃって

屋敷を半壊させてしまったから。

・・・あれ以降、師匠と一緒に王都?から少し離れた人のいない場所で訓練してる。


「えっと。その。すみません」


魔法を使い慣れてくると、考え事をしながらでも使えてしまう。

戦場とかで、魔法を発動しながら意思疎通を行うこともあるから、それはいいらしいんだけど。

訓練中は、魔法の発動、つまり魔力操作に集中しないといけない。

ああ。ここからまた、師匠の説教が始まる。・・・まあ、私が悪いんだけど。



~ 一方王都・王立魔導学園勇者特別寮 ~


勇者として召喚された、澪を除く5名は皆。澪の同じ高校のクラスメイトだ。

寮の共同スペースの中央に立っている、茶髪高身長のイケメンは真田さなだ豊久とよひさ

文武両道の陽キャ。天才肌で、大抵のことは一度習えば覚えてしまうことが多い。

テストの順位は、学年内でもトップクラス。澪とよく点数を競っている。


「はぁ~。いつになったら魔王討伐に行けるわけ?私、早く地球に帰りたいんだけど」


共同スペースの高級ソファーに、気だるそうに腰かける彼女は松永まつなが朱莉あかり

成績は中の下で運動は苦手。陽キャグループに所属しており、陰キャが大嫌い(特にオタク)。

ただ、彼女は豊久に好意を寄せており、悪印象を持たれることを避けるため、

人前で陰キャ嫌いの素振りを見せたことはない。


「そうだな!俺も、柔道で世界を目指している身だ!!

いち早く地球に戻って、練習を再開したい!!!」


この筋骨隆々の、見るからに熱血系男子と言った彼は、鷲峰わしみね高次たかつぐ

柔道で世界を目指しており、幼少期から何度も大会で優勝を果たしている。

如何にも勉強できなさそうな見た目をしているが、成績は中の上。

幾つか簡単な資格も持っており、普通に優秀な高校生である。


「そう、ですね。私も、早く家族に。お姉ちゃんに会いたいです」


不安そうな顔をしながら椅子に腰かけるこの美少女は飯野いいのあおい

学年。否!学校一の美人と言われる存在。

大人しい性格で、清楚を体現した人物、と言われている。・・・いや、言われていた。

が、彼女がシスコン(お姉ちゃん大好き!)であることが知られてからは、

残念系清楚として認知されている。


「・・・異世界、転移、勇者。最高じゃん」


共同スペースの隅の方で、誰にも聞こえない声で呟いた彼は冨木とみぎ健也けんや

聞いて、見ての通りのオタクである。ただ、頭の良いオタクである。成績は上の中。

意外にも、運動はそこそこできる。所謂『動けるデブ』である!

ただ、その特殊な『生態』のお陰か、友達の数は圧倒的に少ない。


彼らは、プッセン王国国王から

「元の世界に帰還するには、魔王の核(心臓)が必要である」

と聞かされて、仕方なく魔王討伐を行うことにした。

無論、そのまま放り出されても犬死にするだけなので、

こうして王国内で最も発達した魔導師育成機関である『王立魔導学園』に入学したわけだ。

王立魔導学園に入学してから約1年。

この世界の基準では、かなりの速度で成長していた。


「ああ。そうだな。そのためにも、『黒の貴公子』?だっけ?

に、魔法を教えてもらいたかったんだけどな」


黒の貴公子。魔導学園内で度々聞く名称。本名レオポルト・フォン・ハーゲンドルフ。

プッセン王国魔導師長にして、世界有数の魔導師。


「ええ。でも私、昔彼に教えを受けたと言う先生から伺ったのですが・・・。

魔力が回復する度に、魔力欠乏症を起こすまで訓練させられる、とか。

もし、私達が彼に教えを受けて居たら、一日に一度は、あの苦しみを味わうことになっていました」


魔力欠乏症と言う言葉を聞いて全員が黙り込む。

あの、倦怠感・吐き気・頭痛・眩暈。思い出すだけでも、頭が痛くなる。

王立魔導学園では、月に一度。保有魔力量の増強のために、

魔力欠乏症を起こすまで魔力を使う訓練を行う。

地獄の訓練とも呼ばれる、保有魔力量増強訓練。

そのあまりの厳しさに『地獄の訓練』と呼ばれている。

魔力欠乏症によって引き起こされる、倦怠感・吐き気・頭痛・眩暈は、通常のモノの比ではない。

逆に言えば、その厳しさから、この王立魔導学園であっても、

保有魔力量増強訓練は、月に一度しか行わない。


「ま、まあ。短期間で成果を出すには、それなりの対価が必要なんだろう。

俺達は、ゆっくりとでも成長していこうぜ」


結局。魔力欠乏症を短期間の内に何度も味わわされることに、

耐えられる自信のある者はこの場にはいなかった。

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