第4話:お屋敷
食堂?にやって来たレオポルトさんは、近くにいた執事?さんに紅茶を持ってくるように言うと。
私に座るよう促した。私は戸惑いつつも、綺麗な彫刻の施された席に着く。
「・・・そうだな。まず、どこから説明しようか。」
レオポルトさんの話は長かったけど。その全てが、とても重要な内容だった。
「まず、修行する上での注意事項だが・・・。『魔導師管理協会』には気を付けろ。
そして、俺が傍にいない時は屋敷の外では絶対に魔法を使うな。
『魔導師は極めて強力な力を操る存在。それ故に、その魔導師の管理を行う組織が必要』
とされて、造られたのが魔導師管理協会だ。
全ての魔導師は魔導師管理協会で魔導師登録を行わなければならない。
登録なしに魔法を使うことは、重大な規則違反となり最悪の場合、極刑ともなり得る。
だが、個人の敷地内、又は魔導師の同伴の下ならば上級魔法までの行使は許可される。
・・・屋敷の中か、俺の傍でしか魔法を使ってはいけない理由は分かったな?」
私は首を縦に振る。・・・それにしても、とても分かりやすい説明だった。
「次に。調べた結果。お前の魔法適性は『闇』の『特A』と史上稀に見る高適性。
だが、保有魔力量は『C+』とかなり低めだ。だが、安心しろ。
保有魔力量は、魔法適性とは異なり努力次第である程度は増える。
成長限界がある以上、高いに越したことはないが。
C+からA+まで成長した者も、いないわけじゃない。
まあ、最悪Bまで成長出来れば、問題なく魔導師としてやっていけるだろ。
・・・さて、説明はこのくらいにして、今日はもう休め。
部屋は適当に空いているところを使えばいい。何かあれば、メイドか執事に言え。
訓練は明日から始める。言っておくが、俺は厳しいぞ?覚悟しておけ」
レオポルトさんはそう言うと、紅茶を一気に飲み干し、
執事さんに「後は任せた」と言うと、何処かへ行ってしまった。
執事さんは「かしこまりました」と頭を下げた後、私の方に向き直る。
「お初にお目にかかります。私、執事のレイノルド・テイラーと申します。
テイラーとお呼びください。貴方様のことは、何とお呼びすればよろしいでしょうか」
執事さんは、左手を腹部に当て、右手は後ろに回して頭を下げる。
凄く綺麗な所作。テレビとかでしか見たことなかったけど。実際に見ると凄い。
ああ。それにしてもどうしよう。私、この国の礼儀作法とか一切分からない。
あっ!そう言えば、こういう時は、できるだけ誠意を見せるのが大切って。何処かで教わった気がする。
私は精一杯頭を深く下げて、答えることにした。
「はい。えっと。私、ミオ・シノノメって言います。
よ、呼び方は、テイラーさんが呼びたい呼び方で大丈夫です。よ、よろしくお願いします」
こ、これで大丈夫かな?できるだけ丁寧にしたつもりだけど。・・・やっぱり、駄目かな。
執事さんは一瞬、困惑していたみたいだけど。次の瞬間には、笑みを浮かべていた。
「承知いたしました、シノノメ様。それと、私共に敬語は不要でございます。
シノノメ様は旦那様のお弟子様。私共に気を遣う必要はないのです」
執事さんの言葉に私は安堵して、顔を上げる。
・・・敬語は不要って言われても。私は敬語を使った方が落ち着くんですよ。
でも、使わなくていいって言われたのに使い続けたら、失礼になるかも。
け、敬語を使わない練習だと思って、が、頑張ることにしよう。
「分かりま・・・分かった、です。」
私の言葉遣いを聞いて、執事さんは苦笑いしながら
「あの、無理に敬語を外されなくとも、シノノメ様の楽な喋り方で問題ありませんよ?」
と、逆に気を使わせてしまい。私は「申し訳ありません」と頭を下げなが謝罪した。
うぅ。やっぱり、私って人付き合いが下手だ。他人に迷惑をかけてばかり・・・。
「それではシノノメ様、客間へご案内いたします」
あっ。でも、執事さんはあまり気にしてないみたい。
・・・はぁ。今はいいけど。こういうことが何回もあると、呆れられて。
その内、相手にもしてもらえなくなる。前の世界でも、そうだったから。
「はい。ありがとうございます」
私が俯きながら執事さんの後ろについて行くと、暫くして執事さんが足を止めた。
「こちらでございます」と言う言葉に顔を上げると、立派な両開きの扉が目に映る。
執事さんが開けてくれた扉の奥は、とても広い部屋で、豪華な装飾の施された家具が気品良く配置されている。
テレビでしか見たことのない光景を目の前にして、私は驚きと困惑を隠せなかった。
それこそ、大統領とか、王室とかが利用しそうな内装の部屋。
私は、まさかな。と疑いつつ、執事さんの方を恐る恐る見る。
「あの。まさかとは思うんですけど。私が泊まる部屋って、ここじゃないですよね?」
私の言葉に執事さんは何故か申し訳なさそうな顔をしながら
「何か不都合がございましたか?」と訊いてくる。
私は、咄嗟に首を左右に大きく振りながら否定する。
「いえいえ。こんな素晴らしい部屋に不満なんて一つもありません。
でも、私なんかには分不相応と言うか、過分なおもてなしと言うか・・・」
私の言葉を聞いて、執事さんは安堵の笑みを浮かべた。そして
「いえ。先ほども申し上げましたが。シノノメ様は旦那様のお弟子様。この対応は当然のことです」
とハッキリと告げる。
・・・やっぱり。ハーゲンドルフさんて、凄い人なんだ。
と思いつつ、これ以上断るのは失礼になるかな、と思った私は。感謝の言葉を述べた。