第25話:試験?
「コイツはな・・・」
師匠から聞いた話をまとめると、指揮者さんは予想以上に凄い人だった。
指揮者さん。本名ジョニー・フォン・フィッシャーさんは、
元王国9魔将?っていう、王国最強の9名の魔導師だった父親と、
目だった功績こそないものの、多数の魔法関連の本を著作し、魔導師へ多大な影響を与えた母を持つ、
実力だけ見れば、一級魔導師に匹敵する魔導師。って師匠は言っていた。
フィッシャーさん本人も、一時期は王国9魔将の候補だったらしいんだけど。
「いや~、一級魔導師とか、王国9魔将とか、確かに凄いと思うよ。
それに、色んな特権をもらえるし。でも、俺はいいかなって思ったんだよ。
だって特権を与えられるってことは、それと同時に特権と同等の責任と制約も
与えられるってことだろ?俺はそれが嫌なんだよ。
だから、適度に特権があって適度に自由がある、現状が一番理想的ってわけだ」
フィッシャーさん本人は、そう言っている。でも、その気持ち私も何となく分かるな。
バイトでも、重い責任を背負っている人は、給料も高い。
でも、部下の犯したミスとかの責任を取らないといけなかったりする。
立場が高い人は、仕事を任されればいいってわけじゃない。
ま、まあ、私はいつも雑用とかしてたから、人の上に立つ?って気持ちは全く分からない。
「向上心も、探求欲も、あまりない男だが魔法の腕は本物だ。
ミオ、共に仕事をするにしろ、戦うにしろ、相手の魔法の特性・・
主に、魔法適性、保有魔力量、魔法理解、魔力操作、魔力治癒速度、、魔法順応適性、魔法展開速度、
さらに付け加えるなら、魔法に対する思い『思想』を知っておくのは重要だ。
何故なら、それらを総合したものがその魔導師の『戦い方』に直結するからだ。
お前はこれから、魔法を使った殺し合いに参加することになる。
魔法を『学ぶ』と『使う』では話が全く違ってくる。
幸い、今から編成する部隊には経験豊富な魔導師が大勢いる。
お前は彼らをよく観察し、他人の魔法の特性を見抜く訓練をしろ。
そうすれば、実戦で魔導師と対峙した時の生存率が大幅に上がるはずだ」
フィッシャーさんに関する話から一転して、師匠は魔法の話を始める。
こうなった師匠を止めることは誰にもできない。多分、あと最低でも1時間は魔法の話が続く。
フィッシャーさんは・・・あれ?いない。もしかして、逃げたのかな?
す、凄い。あの師匠に気づかれずに逃げるなんて。
(※この後、師匠の魔法の話は、3時間に渡って続きました。)
~ 翌々日 ~
二日間の試験を経て、精鋭部隊?の選抜?が終わった。私の担当した人は。誰も受からなかった。
私が落としたわけではなくて。師匠が全員落とした。
私としては、全員合格でも問題ないと思ったんだけど。
「お前に勝てないどころか、余裕で倒される者など戦力にならん」ということらしい。
まあ、指揮者さんと比べると、確かに楽に倒せてしまったのは事実だけど。
皆さん、色んな戦い方があって、それぞれの得意な魔法があって、決して楽な相手では・・・。
ま、まままま、まさか。私が相手だから皆さん手加減してくれて、実力を出せなかったとか?
だとしたら、申し訳ないことをしてしまった。やっぱり、私なんかじゃ試験官は務まらないんだ・・・
でも、できることもある。師匠にお願いして、もう一度皆さんに試験を受ける機会をもらうんだ。
それで、私以外の試験官の人と戦えば、皆さんも真の実力を発揮することができるはず!
ちょうど、お城に行っていた師匠が帰って来る時間だし、玄関で待とう。
そう思って部屋から出ようとした瞬間、扉がノックされる。
「はい」
返事をして扉を開けると、ミュラーさんが立っていた。
「ミオお嬢様、お城から使いの方がいらしています」
急な出来事に驚きつつも、とりあえず私はミュラーさんと一緒に玄関へと向かう。
王城からの使い?急ぎの用事かな?それとも、何かお城であったのかな。不安だ。
ああでも、単純に師匠が私を呼ぶために、って可能性もある、のかな?
と、とりあえず、無礼のないように、貴族の礼儀作法を、ミュラーさんから教わったことを思い出す。
玄関に到着すると、いかにもって感じの礼服を身に纏った長身の男性が待っていた。
「お初にお目にかかります、ミオ・シノノメ様。
私はパウル・フォン・プッセン王子殿下旗下第一近衛師団所属のラルフ・アベラ―と申します。
本日は、ハーゲンドルフ魔導師長の指示の下、シノノメ様をお迎えに参りました」
師匠に頼まれて来た人だった。険しい表情をしているけど、何かあったのかな?
と、兎に角。何も準備するモノはないし、この人に待ってもらうのもアレだし、
このまま、お城に向かおう。
「わ、分かりまし。わ、私はこのまま・・・」
「騎士様!お嬢様にはお城へ行く前に準備が必要です、お時間をいただいても?」
私の言葉を遮って、ミュラーさんが一歩前に出る。
困惑している私を他所に、アベラ―さんは
「ええ、問題ありません。しかし、お急ぎいただければ幸いです」
と、ミュラーさんの提案を受け入れてしまった。
「承知いたしました。お嬢様!どうぞ、こちらへ」
私は、ミュラーさんに半ば強引に屋敷の奥へと連れて行かれてしまった。
多分『お城へ行く』って聞いたから、身なりを整えるんだ。
確かに必要なことだとは思うけど、私なんかにそこまで気をつかわなくてもいいのに。
あっ。そうか、貴族は身だしなみを気にしないといけない。
私がみすぼらしいと、師匠に迷惑が掛かるから、身だしなみを整えるんだ。
だったら、ここは貴族の作法に詳しいミュラーさんに全てを任せることにしよう。




