第24話:私が試験官?
書類を提出して、師匠と第一王子殿下が少しだけ会話した後、そのまま帰宅?することになる。
聞こえて来た話から、なんとなく気になった私は、帰りの馬車の中で師匠に質問した。
「師匠、あの書類は一体なんだったんですか?
それに、第一王子殿下との会話の中に、私の二つ名が聞こえてきたのですが・・・」
私の言葉を聞いた師匠は、何かを思い出したような顔をする。
「ああ。お前に話すのを忘れていたな。そうだな、どこから話そうか・・・」
師匠から聞いた話によると。
魔王軍?の侵攻が近く、でも勇者の育成が未完了なので、魔王軍を足止めする必要がある。
そこで、以前私から聞いた異世界の戦略を師匠が会議で提案し、採用となった。
まずは魔王軍の侵攻に都度対応するための、精鋭部隊を作ることになる。
その部隊の中に、作戦の立案者?にいつの間にか認定されていた、私が組み込まれた。
ということらしい。どうしよう。私、そんな凄い人じゃないのに。
作戦の立案?そんな、私はただお父さんから歴史の話を聞いて、知っただけなのに。
遊撃とか、精鋭部隊とか、言葉の意味は知ってるけど、どういうモノなのかはあまり分かってないし。
そもそも、精鋭部隊?に私みたいな新参者がいていいのかな?
師匠の弟子だからって過大評価されてない?私、師匠みたいに強くないし、賢くもない。
要領も良くないし、覚えは悪いし、人一倍努力しないと身に着かないし・・・。
「あの、師匠・・・」
言葉に反応して、私の顔を見た師匠は、何かを察したのか大きな溜息をつく。
「お前が自己肯定感と自信は皆無で、自己評価が人十倍低いのは理解している。
だが、師匠命令だ。俺の決めたことに逆らわず、俺の指示を聞け。
そうしたら、実戦でも通用する、一流の魔導師に育て上げてやる」
どうしよう、先手を取られた。これ以上自分の意見を言ったら師匠、怒るだろうし・・・。
師匠には沢山助けてもらったし、師匠の指示に従って訓練したら二級魔導師の試験にも合格できた。
それに、いつかは戦いに参加しないといけなくなるだろうし。
師匠と一緒に戦えるなら、その方がいいかも。
でも、知能の低い魔獣じゃなくて、知能の高い魔物との戦い。
今まで以上に気を引き締めないと。ここは、地球とは違う世界なんだから。
第一王子殿下と非公式の謁見?をして、書類を提出した翌日。
私は、精鋭部隊?の試験?の試験官として、今、試合場の真ん中に立たされている。
師匠には、私なんかに試験官は務まらないって、言ったんだけど。
「お前と同じ二級魔導師くらいなら、余裕で務まるだろう」と言われてしまった。
でも、同じ二級魔導師の指揮者さんに負けたんだから、私じゃ務まらない・・・。
って、思っていたんだけど。何故か、試験を受けに来た皆さん、予想してたよりも。
「・・・試験お疲れ様。あまり、手ごたえを感じることは出来なかったみたいだね」
口調、声色、全てが師匠じゃない男性の声が突然背後から聞こえてきて、私はビクッと反応してしまう。
恐る恐る後ろを振り返ると、そこには何故か指揮者さんが立っていた。
「ははは。驚かせちゃったかな?ごめんな、ミオちゃん」
指揮者さんは、そう言いながら苦笑いを浮かべていた。最初に会った時と、全く印象が違う。
最初に会った時は、目つきも口調も、怖い人ってイメージが強かったけど。
今は、表情も口調も優しいし、怖さを一切感じない。
本当に指揮者さんなのかな?もしかして人違い?ああ、だとしたら私とても失礼だ。
オロオロと戸惑っていると、指揮者さんの背後から見慣れた人物が現れた。
「ふん。お前が勝つことは予想できていたが、ここまで一方的とはな。
二つ名持ちの質も落ちたものだ。あいつらは全員不合格だな」
「いやいや、ハーゲンドルフさん。ミオさんを基準に考えちゃ駄目でしょ?
仮にも、アンタの弟子で、アンタと同じ偉業を成した、世界中から注目されてる新人魔導師だよ?」
「お前がそれを言うと、ただの嫌味だぞ」
す、凄い。指揮者さん凄い。師匠と対等に話をしている。
公爵で、王国の魔導師長で、世界有数の特級魔導師の師匠と。
ということは。もしかして、指揮者さんもそれなりの立場の人なのかな?
とりあえず、姿勢を正そう。そう、ミュラーさんから教えてもらった貴族の礼儀作法を完璧にこなす。
第一王子殿下と第二王子殿下と会った時も上手にできたんだし、大丈夫・・な・・・はず。
そして、それと同時に。私は空気になる。存在感を極限にまで薄くする。
存在感を消す方法は、高校生の時に完璧に身に着けたし、問題ない、はず。
「それはさて措き、お前を部隊にねじ込めたのは嬉しい誤算だ。王家の権力に感謝しないとな。
ああ、そうだ。この際、お前のことをミオに話しておこうと思うが、問題ないな?」
師匠はそう言い終わると、私の方に体を一直線に向ける。
うぅ。駄目だ、師匠にはこの存在感を消す技術が一切通用しない。
ピクピクと震える私と、大きな溜息をつく指揮者さんを他所に、師匠は話を続ける。




