第23話:第一王子殿下
「ああ、挨拶が遅れたな。もう知っているようだが、
私がプッセン王国第16代国王カール・フォン・プッセンが息子、パウル・フォン・プッセンだ。
先に言っておく・・・。いや、先にお伝えしておきますが、ここは非公式な場。
礼儀作法を気にしていただく必要はありません。勇者ミオ・シノノメ様」
えっ?王族が私なんかになんで敬語?意味が分からない。
確かに、二級魔導師は貴族や豪商に次ぐ権力を有しているけど・・・。
王族が敬語を使う程の権力者じゃないはず。
それこそ、師匠に対して敬語を使うならまだ理解できるけど。
それとも、勇者って私が考えているよりずっと凄い存在なのかも?
私は内心困惑していたけど、感情を表に出すのはご法度と教えてもらったので、なんとか我慢する。
「勇者シノノメ様、この度は我が王国の召喚師が無礼を働いたこと、心よりお詫び申し上げます。
あの者らは私が部下に命じて投獄いたしました。
いずれ、彼らの罪を公にし、法の下に処罰したいと考えております。
それと同時に、シノノメ様に公の場で謝罪させていただきたいのですが・・・。
そのためにも一つ、ハッキリとさせておきたいことがあるのです。
シノノメ様は、今後、どうなされたいとお考えなのでしょうか」
うわあ。凄いストレートに聞いて来た。
いや、それ以前に情報量が多すぎて、脳が処理しきれていない。
私は、師匠の顔をチラっと見る。すると、師匠は軽く首を縦に振った。
第一王子殿下の意図とか、思惑とか、私の置かれた状況とかは一切分からない。
けど。私は私の気持ちを言葉にすればいい。問題があるなら、きっと師匠がなんとかしてくれる。
そう信じてる。・・・ホントは、そう信じないと現状、何も出来ないってだけだけど。
でも、この一年間、師匠とお屋敷の皆さんは本当によくしてくれた。
そんな皆さんを、師匠を信じたいって、私は思っている。
「私は。これからも師匠に師事したいと考えております。
師匠の下でさらに魔法を学び、研究を手伝い、お仕事を手伝わせていただく。
私がこれからしたいことは、ただそれだけです」
うぅ。緊張した~。王族の人に意見をハッキリ言うのって、精神力が必要だよね。
逆に、なんで師匠がそんなに堂々とできてるのかが、気になる。
はぁ。でも、師匠の予想だと、ここからが本当の戦いになるんだよね。
私は軽く深呼吸を行うと、悟られないように身構えた。
「そうですか・・・。承知いたしました。私共は、貴方様の学びの邪魔をしないとお約束します」
え?アッサリと、認められちゃった。いや、師匠が警戒している相手なんだ、まだ何かあるはず。
身構えていると、第一王子殿下は柔らかい笑みを浮かべる。
「ハーゲンドルフに色々と言われたのでしょうが、何もする気はないので安心してください。
勇者様はシノノメ様以外にも5名いらっしゃいます。これは、世界的に見れば多い方です。
それと、ハーゲンドルフから色々と話を聞いた結果。
シノノメ様はハーゲンドルフに師事した方がよいと判断いたしました。
・・・最後に、これは私の個人的な質問です。お答えしたくなければ、結構ですので。
シノノメ様は、勇者であることを望まれますか?
それとも、我が王国の国民であることを望まれますか?」
第一王子殿下の顔は、真剣そのものだった。
個人的な質問って言ってたけど、多分、この質問の答え次第で私のこの世界での人生が大きく変わる。
勇者として生きるか、この国の一国民として生きるか。でも、私の答えは決まってる。
私は勇者なんかにはなれないだろうし、なりたいとも思わない。
魔法の訓練は厳しいけど、ちょっと楽しい。多分これを『趣味』って言うんだと思う。
地球にいた頃は、生きて行くために必死で、趣味なんて何一つなかった。
まだハッキリと言い切ることはできないけど、私は今は幸せなんだと思う。
多分とか、思うとか、曖昧な言葉を使ってるし、自信はないけど。
でも、これだけは自信を持って言える。
「私は、可能ならば、この国の人間として生きていきたいと思います」
私は真剣な眼差しで、第一王子殿下の目を見た。
すると、少し驚いた様子をお見せになった?けど、直ぐに凛とした表情に戻る。
「承知いたしました。・・・では、ハーゲンドルフ、本題に戻ろうか」
あっ、そっか。今日は書類の提出のついでに、面会だったよね。
私は流れるように、師匠から一歩後ろに下がったところに立つ。
後は、師匠と第一王子殿下が話を終えるのを待つだけ。
ふぅ。精神的にかなり疲れちゃった。このまま、後はジッとしてよ。
「・・・ああ、試験会場は抑えてある。明日と明後日に分けて試験すれば問題ないだろう。
試験官は。黒の貴公子、探求者、白銀の姫君、鉄壁の魔導師、膨魔の魔女、
風牙の詩人、漆黒の魔女、か。これほどの魔導師が試験官とは、随分豪勢だな。
だが、魔王軍の侵攻を阻止する精鋭部隊になるわけだからな、隊員全てが精鋭でなければ意味がない」
なんか、凄い話をしている。そして、その中に私の二つ名が聞こえたような気がするけど・・・。
まさか、私、何も聞かされていない内にとんでもないことに巻き込まれてる?




