第22話:王城
王城に来るのは、召喚された時以来かな。今考えたら、結構酷い扱いを受けたよね。
そう言えば、私と一緒に召喚された人達はどうなったんだろう?
「なにをボーっとしているんだ。早く行くぞ」
師匠の声でハッとした私は、謝りながら急いで後ろを追いかける。
・・・でも、今更なんだけど、こんな服装でいいのかな?
学生服。まあ、それっぽい作りってだけだけど。
この国の第一王子殿下にお会いする?んだよね?やっぱり、この服装じゃダメなのでは。
けど、もう着替えることも出来ないし。そもそも、着替える時間自体なかったし。仕方ない、かな。
う、うん。その分、この一年間で習った貴族の礼儀作法を完璧にこなす。
それより。お城に勤めている方々の視線が気になる。
師匠、じゃなくて、確実に私のことを見てるよね?
ビクビクとしながら師匠の後ろについて歩いていると、ヒソヒソ話が聞こえてくる。
「おい。あの少女が黒の貴公子の・・・」
「ああ、黒の貴公子の弟子で、いきなり二級魔導師試験を受けて異常な点数で合格した、
黒の貴公子の初弟子『漆黒の魔女』ミオ・シノノメで、間違いない、と、思うぞ」
あっ、そうか、師匠が教えてくれたことがあったっけ?
二級魔導師は二つ名を与えられ、貴族や豪商に次ぐ権力を有すると同時に、
魔導師管理委員会により、魔導師管理委員会加盟国に魔導師としての全ての情報が提供される、って。
つまり、私は、今、有名人?うわあ。嫌だなあ。別に、私そこまで凄くないのに。
(※特師級魔導師『黒の貴公子』の初弟子で、特A級の適性に加え、初の魔導師試験が二級で、
しかも筆記をほぼ満点、実技を満点で合格したのは、レオポルト以来の偉業である。
要約すると、世界的に見たら彼女は二人目のレオポルトとなる可能性がある。
一つの国に特師級の魔導師が集中するのは、国家間の魔導戦力のバランスを大きく揺るがす。
つまり、澪の存在は国内外問わずに有名となるのは必然なのだ!
プッセン王国内には、澪に取り入ろうとする存在や、数少ないが排除しようと考える存在もいる。
が、二級魔導師であり、黒の貴公子が後ろ盾にいる彼女を、害するのは簡単ではない。)
そもそも、私が一年努力したくらいで合格できる二級魔導師って、本当に凄い存在なのかな?
いや、でも実技試験の時に戦った『指揮者』さんは、とっても強かったし・・・。
う~ん。私、自分が思ってるいるより強いのかな~。
ううん。試験会場で会った二つ名持ちの女性二人も、強力な威圧感を持ってた。
それに比べて、私はちょっと魔法が使えて、ちょっと魔力量が多いだけ。
そうか、きっと師匠の弟子ってことで有名になっただけなんだ。
じゃなかったら、急に現れた私が有名になるなんてあり得ない。
それなら、暫くほっといたら私の話題なんて、一切なくなるかな。
よし!今は、第一王子殿下との謁見(非公式)に集中しないと。
「ミオ、そろそろ着くぞ。もう一度言うが、あの狸は切れ者だ。注意しろよ」
師匠は、大きな二枚扉の前で立ち止まって、険しい表情をする。
この人が、他人を高く評価することは殆どない。
そんな人が警戒する相手。私も相当気を引き締めないといけない。
師匠が「行くぞ」と短く言い、扉をノックした。
「入れ」
普通は、失礼しますとか、何か言ってから入るんだろうけど・・・。
師匠は、無言で扉を開けると、そのままズカズカと入っていく。
私は慌てて「し、失礼します」と言い、部屋の中の師匠から一歩下がった位置に立った。
とりあえず、目立たないように。ただ、最低限の作法は守りつつ。穏便に待つ。
「ハーゲンドルフ。非公式の面会だとしても、最低限の礼儀くらいは守れ」
大きな溜息をついた彼は。深い蒼の髪に、整った顔立ち、賢そうな見た目をより際立たせている片眼鏡。
師匠から聞いた話からすると、この人が第一王子殿下で間違いなさそう。
その隣に立っているのは、太陽に照らされた麦畑のような金髪に、笑顔が似合う爽やかイケメン。
多分、第二王子殿下。確か、今最も次の王に近いとされる人物、だった、よね?
「それで。お前の後ろにいるそのご令嬢が・・・」
うわあ。早速、私に話題が移っちゃった。
暫くは持参した書類の話になるかな~って思ってたんだけど。
はぁ。もう、挨拶しないといけないのか。うぅ、緊張する。
・・・大丈夫。ミュラーさん達にみっちりと練習させられたんだから。
「お初にお目に掛かります、パウル・フォン・プッセン第一王子殿下、
ウルリッヒ・フォン・プッセン第二王子殿下。
私、特師級魔導師、黒の貴公子レオポルト・フォン・ハインリッヒが弟子
二級魔導師、漆黒の魔女ミオ・シノノメと申します」
カーテシー、ミュラーさん達の前以外では初めてするけど、変なところないよね?
というか、初実践が王族相手って。ちょっとハードル高すぎない?
で、でも。私が平民の出身だってことは分かってるだろうし、多少は多めに見てくれるよね。




