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影(闇)の勇者は不安定  作者: ヒーズ
17/28

第17話:最終試験

「黒の貴公子の弟子と言うのは貴様か。・・・弱そうだな」


否定できない。私自身も、自分が弱そうに見えるってことは知ってる。

けど。師匠に叩き込まれた魔法の腕は、信じてる。

師匠から聞かされた話だと、彼は『指揮者』の二つ名を持つ魔導師、らしい。

多彩な魔法の才に恵まれ、数多の属性の魔法を音楽を奏でるかのように扱う。

端的に言えば、魔法理解が高く、展開速度も速い上、手数が多い相手ということ。


「ほう。訂正しよう。その瞳に宿る氷の様に冷たい、冷静な闘争心。

黒の貴公子の弟子として、しっかりと鍛え上げられたようだ。・・・では、行くぞ!

ᛋᛈᛁᚱᚪᛚᚥᛁᚾᛞᛋᛏᛟᛋᛋᚥᛖᛚᛚᛖ!ᛖᚱᛞᛒᛖᛒᛖᚾ!ᚺᛁᚾᛞᛖᚱᚾᛁᛋ!」


彼が詠唱を終えると同時に、無数の高速で回転する風の球?が現れる。

それと同時に、地面が揺れ。私の背後に障壁が現れる。

障壁魔法で相手の逃げ場を奪い、地の地震の魔法で相手の動きを封じる。

そして、風の魔法を無数に放つ。凄いこの人、滅茶苦茶強い。


「ᚺᛁᚾᛞᛖᚱᚾᛁᛋ!」


でも、私も師匠に色んな魔法を教えてもらったんだ。問題なく対処できる。

まず、障壁で足場を作れば、地震の魔法の影響を無効化できる。

風魔法の攻撃も、障壁で受けきるけど。・・・消費魔力は最小限に抑える。

多種多様な魔法を併用して使う手数の多さは厄介だけど。

その分、魔力消費量は普通の魔導師の比じゃないはず。

相手は絶対に短期決戦を望むはずだから、私は最小限の魔力で、相手の攻撃を防ぎきる!


「ᛖᚱᛞᛖ ᚵᛖᚠᚪᚾᚵᚾᛁᛋ。ᚥᚪᛋᛋᛖᚱᛒᚪᛚᛚ」


彼は私の考えを読み取ったのか、地震の魔法を止めると。

周りの土を盛り上げて、私を囲い。その中に大量を水を流し込んで来た。

私は咄嗟に障壁の魔法で対応するけど。水が重すぎて、加速度的に魔力を消費してしまう。

上級魔法ばっかり使っていたと思ったら、水球(ᚥᚪᛋᛋᛖᚱᛒᚪᛚᛚ)?

初級魔法を攻撃に使ってくるなんて。魔法理解も凄い深い。

いや。そんなことを考えてる場合じゃない。このままだと魔力を全部使っちゃう。

仕方ない、ここは私も上級魔法を使って応戦しよう。


「ᛋᚳᚺᚥᚪᚱᛣᛖᚱ ᛋᚳᚺᚪᛏᛏᛖᚾ ᛋᛈᛖᛖᚱ」


私が詠唱を終えると、地面から無数の黒色の槍が突き出し、土壁を破壊する。

黒影槍。分類は上級魔法で、消費する魔力量はそこそこ多い。

手数の多さは敵が圧倒的に上、展開速度は互角だけど、経験の差が大きく出てる。

・・・この試験の目的は、試験官に勝利することじゃない。私自身の実力を証明するための試験。

守りに徹しようなんてのは、間違いだったんだ。この戦いで攻めないといけないのは、私だ!


「ᛞᚢᚾᚴᛖᛚᚺᛖᛁᛏ ᚠᛚᚪᛗᛗᛖ!・・・ᚺᛁᚾᛞᛖᚱᚾᛁᛋ!」


私が初めてのゴブリンのダンジョン攻略で、守護者を倒した時に使用した魔法。

魔導師なら障壁で簡単に防げるけど、敵を飲み込もうとするこの魔法を防げば、

確実に10秒は完全に視界が塞がれる。

そして、その間に障壁の魔法を使用して相手の頭上を抑える。

私の魔法が解けるタイミングを狙って・・・。今だっ!!


「ᛞᚢᚾᚴᛖᛚᚺᛖᛁᛏ ᚥᛖᛚᛚᛖᚾᚴᚪᚾᛟᚾᛖ」


私が詠唱を終えると、六本の黒色の円柱状の魔法が彼を襲う。

この魔法は上級に分類されているけど、威力だけ見れば特級魔法にも後れを取らない。

ただ、精密な魔力操作と膨大な魔力を必要とする、非効率的な魔法のため、上級に止められている。

実際、一瞬でも気を抜いたら全ての魔力を持っていかれそうになる。

でも、そんな魔法でも彼は防いでいる。・・・でも、私の考えが正しければ。


「ᛖᛁᚾᚪᛋᚳᚺᛖᚱᚢᚾᚵ。ᛒᛚᛁᛏᛣᛋᚳᚺᛚᚪᚵ。ᚺᚪᚵᛖᛚ。ᛣᛖᚱᛋᛏᛟᚱᚢᚾᚵᛋᚥᛖᛚᛚᛖ!」


来た!5つの魔法の並列使用。障壁の魔法を維持しつつ、4つの攻撃魔法を展開。

この人の魔力操作、信じられないくらい精密だ。

じゃないと、5つも同時に魔法を行使することなんて出来ない。

しかも、威力が全く落ちていないから。その凄さがよく分かる。

でも、魔法の並列使用には精密な魔力操作が求められる。

その分、神経は磨り減るし、魔法に集中するから周囲への警戒力は低くなる。


「ᚺᛁᚾᛞᛖᚱᚾᛁᛋ!」


全神経を障壁魔法へ注ぎ込む。じゃないと、確実に死んじゃう。

一つ目の魔法は、火葬。灼熱の炎が全身を焼き尽くそうとしてくるけど、

しっかりと練った障壁魔法なら問題なく防げる。でも、障壁への継続ダメージはかなり厄介だ。

次は雷鳴。貫通力の高い魔法で、油断すれば硬度を強化した障壁でも貫いてしまう。

対処法は、雷鳴の落ちてくる地点を予測して、局所的に障壁の硬度を超硬化させる。

次は霰。無数の氷の塊が頭上から降り注ぐ。

多重障壁や、障壁上部の硬度強化とか、色んな防ぎ方がある。

けど、今回は障壁の上部に闇の炎の魔法を展開して、障壁に到達する前に霰を溶かす。

魔力操作さえミスしなければ、これが一番の消費が少ない。

最後に、破壊波。強力な衝撃波を広範囲に及ぼす魔法。

防ぎ方は、通常よりも硬度を強化した障壁魔法を多重に張る。

この多数の攻撃魔法により、相手に継続的に大ダメージを与える技。

これが『指揮者』の得意とする魔法攻撃。巷では『狂騒曲』と呼ばれている必殺技。

勿論、欠点もある。高い集中力と膨大な魔力を消費すること。

だから。最大でも3分耐えれば、相手に大きな隙が出来る。

・・・けど、狂騒曲を耐えきった魔導師は数える程しかいない。

でも、師匠との訓練の成果は確実に出てる、全力で対処すれば勝てるかも、しれない。


「・・・っ!」


魔法が途切れた!これが最初で最後の最大の隙!!確実に決めないとっ!!!

残っている魔力の全てを使い切るつもりで、この魔法を撃つ!


「ᛞᚢᚾᚴᛖᛚᚺᛖᛁᛏ ᛞᚱᚪᚳᚺᛖ ᚪᛏᛖᛗ!!!!!!!!」


私が詠唱を終えると、漆黒の霧状の炎が彼に襲い掛かる。

この魔法には腐食の効果がある。障壁魔法でさえも、じわじわと浸食していって最終的には破壊に至る。

対策としては、強度は弱くてもいいから、何重にも障壁を展開すること。

でも、『狂騒曲』を奏でた彼は、そこまで緻密な魔力操作を行うだけの気力は残っていないはず。

勝てた。と思って気を抜いてしまった私は、足場にしていた障壁の維持を怠ってしまった。

死を覚悟した瞬間、地面スレスレで体が一瞬だけ宙に浮き、無傷で着地できた。

顔を上げてみると、私の魔法を風魔法で散らした彼が、助けてくれたのだと一瞬で分かった。

どうやら。今回は私の負けみたいだ。

・・・うぅ。悲しいような、悔しいような。なんかモヤモヤする。

俯いて歯を食いしばっていると、指揮者さんが手を差し出してきた。


「黒の貴公子の弟子『ミオ・シノノメ』。貴様は素晴らしい魔導師だ。

正直、予想していたよりも遥かに手ごわかった。

今回は貴様の負けだが、このまま鍛錬を続ければ、いずれは一級。

いや、特師級の魔導師を目指せるかもしれん。

ああ、言うのが遅れたが。二級実技試験は満点で合格だ。おめでとう」



~ 翌々日 ~


特師級魔導師・黒の貴公子『レオポルト・フォン・ハーゲンドルフ』が弟子、

二級魔導師・漆黒の魔女『ミオ・シノノメ』の情報は全ての魔導師管理委員会加盟国に行き渡り、

彼女は一躍有名人となった。

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