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影(闇)の勇者は不安定  作者: ヒーズ
13/28

第13話:師匠

「・・・すみません。落ち着きました」


涙のせいで化粧。いや、今日はダンジョンに行く日だったから、化粧は一切してないんだった。

兎に角、今の私の顔は到底人に見せられるモノじゃない。

特に。子供みたいな姿を見せてしまったミュラーさんに、これ以上の醜態を晒すことはできない。

と思った時、今までジッと私の話を聞いてくれていたミュラーさんが、口を開く。


「ミオお嬢様。旦那様は気に掛けている方以外には、厳しく致しません」


私はミュラーさんの言っている言葉の意味を理解できずに、困惑してしまう。

そんな私のことを気にせずに、ミュラーさんは話を続ける。


「旦那様は昔から、気に入ったお方には徹底的に厳しくなさる方でした。

対照的に、興味がない、嫌いなお方には、とても丁寧な態度を取るんです。

『形式的な態度を取り続けるということは、一定の距離を保ち続けるということ。

馬鹿でも数年続けていれば、ああ、この方は私と馴れ合う気はないのだ、と理解できる。

それに加え、「敵対」しているのではなく「興味がない」と言う解釈をしてくれるだろう。

可能な限り敵を作らず、興味のない者から距離を置く最適の方法だ』。

と、旦那様は仰っていました。

・・・私めの知る限り、ここまで詳しく、そして厳しく魔法を他人にお教えになるのは、

初めてのことです。

ミオお嬢様、旦那様に長年仕えて来た私が断言いたします。

旦那様は、ミオお嬢様のことを必要とされていると。」


ミュラーさんはそう言うと、私の手を取り、真っすぐな目で見つめて来た。とても真剣な目。

・・・彼女は師匠じゃないから、ホントに私が必要とされているかは分からない。

でも、そのあまりにも真剣な目を、私は信じても大丈夫だと思った。ううん。思えた。

私が、その柔らかく温かい手を強く握り返し「ありがとうございます!」と答えると

ミュラーさんは、そんな私に優しい笑顔を向けてくれた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

うぐっ!なんか、安心したら眩暈と吐き気が。


「ウゲェ」


・・・私は、ミュラーさんの前でさらなる醜態を晒すこととなった。

(幸い、胃の内容物は全て消化されきっていたみたいで、胃酸だけを戻すことになった。)



~ 一週間後:ゴブリンダンジョン? ~


「グギャアアア!!!」


ゴブリンダンジョンに入ってから守護を倒すまでの時間。約9分。

使用した魔法は6種類で、使用した魔力は1/10。これから飛行魔法で帰っても3割は魔力が残るはず。

でも。やっぱり、命の奪い合い?って、慣れない。恐怖心も、結局なくならなかった。

今回も、不合格かな?また、師匠を失望させちゃうのかな?

と考えていると、ガシャン!と陶器みたいな物が壊れる音が聞こえて来た。

音のした方を見ると、師匠がダンジョン・コアを破壊しているのが目に映る。

師匠はダンジョン・コアの欠片を拾うと「ᛖᛁᚾᛋᛏᛖᛗᛈᛖᛚ」と、魔法の詠唱を行う。

アレは、初級魔法『刻印』。・・・何をしているんだろう?

暫くして、師匠は刻印魔法を掛けたダンジョン・コアの欠片を、私に渡してきた。


「師匠が自らの名を刻んだ物を弟子に送ると言う行為は、

弟子が一人前になったことを『認める』と言う『証』だ。

まだ、二級魔導師試験に合格していないが。

まあ、この分なら問題なく合格できるだろう。

さあ、早く帰るぞ。今日試験の申し込みを行えば、二級なら数日中に試験を受けられるだろう」


師匠はそう言うと、ダンジョンの外へ向かって歩き始めた。

私は、ダンジョン・コアの欠片を強く握りしめると、小さくガッツポーズをとる。

それと同時に、これ以上、師匠を失望させてはいけないと、決意を改める。

二級魔導師試験。絶対に一回で受からないと。

私はダンジョン・コアをウエストポーチに丁寧にしまうと、師匠の後ろを追いかけた。



~ 数日後 ~


「旦那様、行ってらっしゃいませ。ミオお嬢様、合格をお祈りしております」


私達はミュラーさんに見送られながら、魔導師試験の会場へと向かう。

師匠曰く、魔導師試験には幾つかの段階があるらしい。

まず、受験者の魔法適性と保有魔力量を測る『検査』。次に魔法理解を測る『筆記試験』。

実戦で『魔法展開速度』『魔力操作』『魔法順応適性』を測る『実技試験』があるとのこと。

『検査』と『筆記』は兎も角、実戦では実際に二級魔導師の方と戦うっぽい。

うぅ。人との魔法戦。師匠と何度か訓練で行ったことはあるけど。

一度も私の魔法が師匠に届いたことはない。そんな私で、本当に通用するんだろうか?


「・・・ミオ、少しズルをさせてやろう。ああ、誰もがやっていることだ気にするな。

今日の実技試験のお前の相手は・・・」

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