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影(闇)の勇者は不安定  作者: ヒーズ
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第1話:日々

「ねぇ、世界史の課題、もう終わった人いる?」


「あ~。私まだ。そもそも、世界史のあの課題、ホントに必要なの?」


日常。特にこれと言った特徴のない、普通の会話が繰り広げられている中。

クラスの中に一人、教科書とノートを開き勉強をしている女性がいた。

東雲しののめみお。クラスの中で完全に孤立している彼女は

県内でもトップクラスの進学校において、学年上位の成績を維持し続けている。

勉強は人並み以上、運動も人並みに出来る。性格や容姿が醜いわけでもない。

少し内気で、真面目な子。でも、そんな彼女だからこそ入学してから約2年、友達の一人も出来ない。

学校が終わった彼女は。バイトに向かう。


「澪ちゃ~ん。いつも時間ピッタリだね~。

・・・アレ?前に化粧道具一式あげたよね、何で化粧してないの?」


バイト先の店長は、ニヤニヤと汚い笑みを浮かべながら彼女の顔を覗き込む。

彼女は「怖い」と言う感情を必死に隠しながら、頭を下げる。


「す、すみません。は、母に取り上げられてしまって・・・」


彼女の声は震え、目には涙も浮かんでいた。体も少し小刻みに震えている。

だが、そんな彼女の姿は店長の目には一切映っていなかった。


「は?アレ高かったんだぞ?ふざけんなよっ!!」


頭をボリボリと激しく搔きむしりながら、大きな声で喚く。

彼女は恐怖の感情をさらに押し殺し、何度も頭を下げながら「すみません、すみません」と謝る。

泣きそうな声になっている彼女の声を聞いてハッとした店長は、怒鳴るのを辞める。


「ご、ごめんね澪ちゃん。怒鳴ったりして。僕が悪かったよ。だから辞めないでね?」


彼女は、涙を拭い。か細い声で「すみません。ありがとうございます」と、もう一度頭を下げる。

そして、更衣室へ向かい。服を着替えると、笑顔を作りながら仕事を始めた。

が、バイトが終わった時、渡された今月分の給料を見た彼女は困惑する。


「あの。て、店長。ちょっと、少なくないですか?」


弱弱しい声で訊いてくる彼女に、店長はニコニコと不気味な笑みを浮かべながら。

「ああ。化粧品代を抜いたんだよ。別に問題ないでしょ?」

・・・以前に、彼女は似たような経験を何度かしていた。

その時、店長は興奮しながら「ヤらせてくれるなら、倍の給料払ってもいいよ?」と提案していた。

勿論、彼女は断ったが。以来、彼女はその言葉がトラウマとなり。

体が自然と、こう答えるようになっていた「はい。問題ないです」と。

彼女は、店長に頭を下げると、逃げるように家に帰って行く。

家の前に着いた彼女は、今にも泣きだしそうだったが。それを堪え、家の玄関を開ける。


「おい、ウスノロ!帰りが遅いぞ。早く飯を用意しろ。それと、今日給料日だろ?早く渡しな」


彼女はビクビクしながら鞄から茶封筒を取り出し、母親に渡した。

母親は、早速中のお金を数え始め、その間に彼女は母親の横を姿勢を低くしながら通り抜ける。

そして、エプロンを身に着けると冷蔵庫から食材を取り出して、料理を始めた。

中の金額を数え終わった母親の「チッ。少ねぇな。役立たずが!〇春が嫌なら、ちゃんと稼げよ」

と激しく罵る声が聞こえると。

彼女は震えながら「ごめんなさい。ごめんなさい」と繰り返す。

そんな彼女にもう一度舌打ちをした母親は、何かを思い出したような顔をする。


「おい、今週アイツが帰って来るから土日は空けとけよ」


母親がソファーへドカッと座るとテレビを付ける。

彼女は慌てて手を洗い、冷蔵庫からビールとおつまみを取り出すと母親の前に差し出した。

アイツ。つまり、彼女の父親は、月に一度だけ家に帰ってくる。仕事人間で、基本家族に無関心。

ただ、彼女には「一流の人間に育ってもらう」と言っており、中学から私立に通わせていた。

良い成績を取らないと、口もきいてもらえないため。彼女はずっと勉強ばかりしていた。

それはさて措き、食事を終わらせた彼女は、翌日の母親の朝食と昼食の作り置きをしておき。

その際に出た、母親の食事の余りを弁当に詰めた。

そして、洗い物を行った後、お風呂に入りリビングで宿題を行う。

いつ、母親に呼ばれても直ぐに対応できるように・・・。

そうこうしている内に、夜中の1時になり彼女もようやく就寝する。

翌日。いや、今日の5時半頃に起床し、学校の準備、身支度と掃除洗濯を素早く終わらせると。

水筒に水道水を入れ、7時半頃に家を出て、

近くのスーパーに足を運び最も安いパンを1つ買った。

登校しながら、パンをゆっくりと食べ、最後に水を飲む。

お金があまりにも足りない時には、小麦粉に水を加えただけのモノを食べている。


彼女が俯きながら歩いていると突然、足元に変な模様が現れ、強く光り始めた。


「えっ?なに・・・」


状況が理解できない内に。激しい輝きが彼女を包み込みその姿がフッと消えた。

そして彼女が次に目を開けた時、そこは全く知らない場所だった。

周りを見回すと、自分と同じ制服を着た人が5人と、ローブを纏った人が10人以上。

ローブの人達が、それぞれ腕を上げたり、抱き合ったりしながら

「やったぞ!成功だ!!六名の勇者様の召喚に成功したぞ!!!!」

と歓喜の声を上げている。そんな彼らを、同じ制服の人達は困惑した目で見ている。

その時、白髭を生やした白髪の老人が、フードを取りながら近づいて来た。

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