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終わりかけの世界に魔法使いがログインしました  作者: 芋もち
ゾンビ蔓延る世界と魔法使い
6/9

やべえ施設と閃いた魔法使い

 生存者たちを保護して大体七ヶ月くらいが過ぎた。

 そしてやっとこの世界の言葉を覚えられました。一号たちともやっと筆談できるようになったよやったー!



 ついでに名前も判明した。一号がライラで、二号がレベッカ、三号がミーナだ。名前を教えてもらったからには、ちゃんと名前で呼んでる。

 流石にね、名前あるのに一号とか呼ぶのどうかと思うし。

 あと私も自己紹介した。そっちの方が話やすいし。



 ようやくまともな意思疎通ができるようになったから、保護した生存者たちとも世間話したりしてる。

 ある程度要望も聞いて、安全圏の中にあった施設を直したり、畑広げたり、各々気に入った場所に住めるようにした。

 ただなー、なんかやべえ病原菌に適応した二人のうちの一人……ロベールだったかな。彼から微妙な感じの視線をちょくちょく向けられてる。

 もっと早く助けてくれたらよかったのにー、的なあれだ思う。



 元の世界でも偶にあった。山賊や魔物から助けてあげた人たちに、なんでもっと早く助けてくれなかったんだよーって文句言われること。

 生き地獄味わってから死ぬより全然マシだろうに。まー、人間ってそういうとこあるから別に気にしてないけど。肉体も精神もよわよわだか仕方ないね。

 とはいえ、ちょっと視線がウザいなとは思う。他の人たちは彼程じゃないんだけど、うざったいと言えばうざったい。

 それで怒ったりとかは別にしないけどさ。もうちょい隠す努力くらいすればいいのに。



『レベッカたちがビスケット焼いたけど食べる?』

「食べるー」



 そっと顔の前に差し出されたボードに書かれた字を見て頷く。

 すると美味しそうに焼けたビスケットが乗った皿と、カフェオレが入ったマグカップがテーブルの上に置かれた。

 お礼を言って、一枚ビスケットを取ってぱくりと一口。うん、美味しい。



 カフェオレを啜りつつ、観終わったDVDを取り出して別の物に変える。他の作品の紹介が終わった後、本編が始まった。

 テレビという、音が出て絵が動き様々な物語を観れる道具で、記録媒体であるDVDに残された色々な作品を観るのが私の最近のマイブームである。



 ここ一ヶ月でアニメ、ドラマ、映画と色々なジャンルの物を観た。

 中には魔法を題材とした物もあって、出てくる魔法の中にはこれは面白いな、これはいいなと思う物も多かった。

 魔法が無い世界故の自由さというか、想像力の豊かさが半端ない。魔法だけど魔法じゃない、超能力という力を持った者たちの話も中々に面白かった。



 ただ私が観ているのは氷山の一角に過ぎない。

 なにせ覚えた言葉は英語という、この世界の主要言語の一つだというのだ。

 しかもこの世界、元の世界と違って国の数は百を超える。その中にアニメ大国ジャパンというのがあった。



 ジャパン。それはオタク文化というものの最先端を走っていたという島国。どんな場所か聞いた感じニホン人の故郷の可能性がかなり高い場所。

 魔改造国家としても有名らしく、ご飯が美味しくて治安も良いということでも有名であったそう。まあたぶん今頃滅んでるだろうけど。

 んで、その国の言葉って世界でも難解な言語の一つとされていたそうな。



 それをね、一から覚えなきゃジャパンのアニメもドラマも映画も観られない。特にアニメの数はそれはもうすんっごいらしいので、そのすんっごい数々のアニメが一つも観られないのだ。

 だから今は日本語を図書館から持ってきて勉強中。聞いて覚えるために適当な日本のドラマを聞き流し中。



 さっさとジャパンの言葉覚えてアニメ観たい。

 テレビゲームっていうのもやりたい。パソコンゲームっていうのもやりたい。めちゃくちゃ名作が多いらしいんだもの。



『今日一日テレビに張り付いてるつもり?』

「いんや、これだけ観たらちょっと出かけてくるよ」



 最後のビスケットを食べ終え、テーブルの上に広げていた日本語の辞書と文字の練習用ノートを閉じた。

 勉強も大事だが、程良く息抜きするのも大事なのである。



『どこに行くの?』

「ちょっと前にこの世界がこうなった原因の一つっぽい感じの施設を見つけてね。ちょっと気になるから行ってみようかなって」

『そう。大丈夫だとは思うけど、気をつけてねリュシャーナ』

「はーい」



 それから少ししてドラマを観終わり、早速今日の目的地に転移した。ここはたぶん、軍施設とかだったんだろう。

 人気の無い廊下には、軍服らしき服を着た白骨化した遺体があっちこっちに転がっている。研究者らしき白衣を着た遺体も結構な数あった。



 施設は地下深くにあり、とても広い。

 ここで生み出した物を管理し、閉じ込めておくための檻もたくさんある。 

 この世界は少し前に世界を巻き込んだ大きな戦争をして以来、大した戦は起きていなかったそうだけどもしもに備えてか、はたまた欲望のためか。

 人を怪物に変貌させるろくでもない病を作り出した結果、人類は衰退の一途を辿ることとなった。



 静かな廊下に時々響いてくる唸り声。

 明らかに人のとは違う声に溜息を吐いて、暗闇から飛び出してきた異形を数体燃やし尽くした。



「化け物生み出し過ぎだよ……」



 冷たい床に転がる餓死したっぽい、体のあちこちを噛みちぎられた化け物の死体を見る。

 表面がつるりとしている皮膚は赤黒く、大きさは二メートル程。顔の横の穴はおそらく耳だろう。手足の爪は鋭く、目は無い。開いた口からだらんと長い舌が飛び出していた。

 元々は人間だったものが、どうやってこんなにも醜く変貌したんだろう……。



「やっぱこの世界やばいわ」改めてそう認識しつつ、物陰からこちらの様子を伺っている化け物たちを切り刻んだ。

 他にもまだいそうだなぁ。探知、探知っと。……やっぱりまだ結構いる。ゾンビも何体かいるな?

 サクッと遠隔で始末してっと。



 残りの化け物たちを全て処分し、目の前に転がる食い散らかされてしまった化け物の方はサンプルとして回収した。

 えっと、他に面白そうなところは……。



 広い施設を歩き回り、いろいろ色々な場所を見た。

 そこでちょっと面白い物を見つけた。頑丈なガラスで作られた人一人すっぽり入れそうな入れ物だ。

 大体割れてしまっていたけれど無事なやつの中には液体が入っており、その液体の中には胎児らしき物体が開いている。



 解析してみたところ、胎児らしき物体は本物の胎児だった。

 ただし、母親の腹から産まれたものではない。遺伝子情報を元に作られた、誰かさんの模倣品。

 映画で出てきたクローンと呼ばれるものと一緒だ。映画で出てきたものと違い、こっちのクローンは脳が無いため自力で動いたりしないみたいだけど。



 なんか部屋にある謎の機械やらでっかいガラスの入れ物はクローンを作るための道具で、これで作ったクローンを使い色々な非人道的な実験してたっぽい。

 過去の様子を覗いてみたけどここにいた研究者たちは皆、倫理観どこに投げ捨てやがったんだろうなって感じのことばっかりしてやがった。

 その果てに自分たちで作り出した怪物に食い殺さたり、お仲間になったり、死ぬに死ねなくて生き地獄味わってたりしてた。因果応報とはこのこと。



 でも、クローンを作れる技術を生み出したことは素直に凄いなと思う。

 元の世界ではホムンクルスっていう人造人間を作ることはできたけど、あれ人造人間って言うくせに人間要素は顔と二足歩行以外無いんだよなぁ。

 まあホムンクルスの材料って、死刑が決まってる罪人と魔物の一部だし。人間とは呼べないナニカになって当然と言えば当然かも?



「……この装置直したらちゃんと人間ができあがるんだよね」



 ということは、だ。

 その辺のゾンビ捕獲してやべえ病原菌を除去して綺麗になった死体使えば、普通に使えるクローンができるのでは?

 んで、できあがったクローンに基となった人間の脳を移し替えてちゃんと動くようにできれば、ライラたちと違ってちゃんと生きてる普通の人間になるんじゃないか?



 むくむくと湧き上がる好奇心。

 どうせこのまま何もしなければ人類は完全に滅びる。なら、ちょっとくらい好奇心の赴くままに行動したって罰は当たらないだろう。

 終わりかけてるこの世界を救うきっかけになるかもしれないし。

 ライラたちを冷たい死んだ体から、血の通った生きた体に代えることができるかもだし。



 よし、張り切ってがんばろー!

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