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終わりかけの世界に魔法使いがログインしました  作者: 芋もち
ゾンビ蔓延る世界と魔法使い
2/9

広がる安全圏と嫌土産を置かれる魔法使い

「海だー!!」



 安全圏を広げるため、ゾンビを見つけ次第焼き払い結界の拡張を行っていたら、なんとなんと海を発見してしまった!

 海といえば、そう。お魚だ。



 ちょっと前に最初の街とは別の街を発見して、そこで調味料の類と日持ちするっぽい食料は大量に手に入ったんだけど、魚含めた生鮮食品は手に入らなかったんだよね。

 魚も肉も野菜も果物もぜーんぶ腐ってたから。ものの見事にお腐れあそばしておられた。だけでなく、なんか一部にょきにょき芽が生えてるのもあったり。



 やっぱり人がいなくなってしまってから、かなりの時間が経過しているっぽいな。

 生存者は見つからないかもしれない。動物とかは元気に生きてるのにね。

 やっぱり魔法の使えない、無力な人間はゾンビにとって最高の餌ってわけだ。



 まあ下手に人がいない方がこっちとしては動きやすいので、別に絶滅していようと構わない。

 どうしても現地人の暮らしがどんなものだったか知りたい! ってなっても、魔法で過去の様子を覗き見られるし。

 ひとりぼっち寂しいよぉ〜と嘆き、狂うような脆弱な精神ではないし。話し相手なんていなくてもへっちゃらだ。

 孤独耐性はEXというやつだ。



「生で食べるのもアリ、か? いやでも、ここは安全を考慮してやっぱりこんがり焼き上げるべきか」



 孤独耐性が高いとはいえ、一人でいるとどうしても独り言が増えてしまう。

 ま、周囲に人がいないから独り言をいくら言っても大丈夫だ。そもそもこの世界の人間に私の言葉は通じないしね。

 ……そっちのが怖いか?



 些細な疑問は一旦横に置いといて、魚を捕まえるために準備する。

 正直魔法を使う方が量も獲れるし速さも段違いなのだが、別に量も速さも今は必要無い。

 というわけで、釣りをすることにした。大昔に貰った釣竿を異空間から引っ張り出して、そこら辺の土をほりほりして見つけた虫を針に付ける。

 釣竿を貰ったはいいけど、今まで釣りなんかやったことが無いからちゃんとしたやり方分かんないけど、とりあえず餌さえ付ければいいんだよな……?



 浜辺でやっても釣れなさそうなので、いい感じのポイントを探す。



 この辺りはそれなりに大きな港だったのだろう。

 大小様々な船が海の上に浮かんでいる。桟橋もいくつかあった。

 適当な桟橋を進んで端っこまで移動する。椅子を取り出してそこに座っていざ釣りスタートだ。



「ちょ、やめっ頭の上に魚落としてくるのやめて!?」



 一時間後、私は海鳥たちの襲撃に遭っていた。

 奴等め、頭上から魚をポイポイ落としてくるのである。なんでなの!?

 落としてきた魚も元気にびちびちしてるしさぁ!!

 あ、海に帰ってった。



「ああ、もう!! やめてってばぁ!!」



 次々に魚を落とされることが嫌になって、頭上を結界で覆った。それでも降り注ぎ続ける魚。そして海へと帰っていく。

 ああもうやめ! 釣りすんのやめる!



 馬に帰らなかった魚を数匹確保して、桟橋からダッシュで逃げた。

 海鳥たちは暫く桟橋の上を旋回していたが、私が戻って来ないのを見るとどこかへ去って行く。

 なんなのさほんとに……。



 釣り道具を片付け、びちびちしてる魚を絞めてから異空間の中にポイっと放り込んだ。

 安全圏広げ始めてから、ちょいちょい動物たちの襲撃に遭ってきたけど今回は一番酷いわ……。魚臭い……。



 海鳥もそうだけど、最近の動物たちのブームは私に肉とか魚をぶつけてくることなんだろうか。酷い時は虫なんかもぶつけてくるし。

 草とか木の実とかぶん投げてくるやつもいるしさぁ……。食べられるやつは回収してるけど。



 日々油断ならねえ。ある意味ゾンビよりも油断ならねえ。

 本当になんなのアイツ等。一体全体私がなにしたっていうんだ。

 住みやすいようゾンビ焼き払って安全圏広げて、畑作ったり、緑が少ないから森を作ったりしただけなのに。



 溜息を吐いてなんとなく空を見上げると、真っ黒な雲が青空を覆ってしまっていた。



「やっべ」



 もうすぐ雨が降ってくる!

 慌てて近場の建物に避難した。途端空からバケツをひっくり返したようなすんごい雨が降り出す。か、間一髪ぅ。

 いやまあ、結界で雨くらいどうということはないんだけど、なんかこうつい逃げてしまう。

 雨の中走って家路を急ぐ人とか、降る前に早く帰らねばと走って行く子どもたちをよく見ていたからだろうか?



 雨の中移動するのはなんかダルいので、止むまでこの建物で過ごすことにした。

 異空間から簡易風呂を取り出して設置。お湯を張って服を着たままドボン。

 いい匂いのする石鹸を取り出しお風呂をあわあわ状態にして、お湯を操り服ごと全身を洗う。洗い終わった服を脱いで乾かし異空間へぽい。

 あわあわお風呂は一旦綺麗にして、もう一度をお湯を張る。



「極楽だぁ〜」



 異世界人の中にお米とお風呂大好きニホン人という人種の人たちがいたけれど、彼等彼女等が躍起になってお風呂を作って広めようとしていた理由がよく分かる。

 湯船に浸かるのは気持ちがいい。こう、全身の疲れがお湯の中に溶けていくような気がする。何より衛生面で体綺麗にするの大事。



 薬草で作った美肌効果のある入浴剤を入れて入ったら、もうお肌はしっとりもっちもちだ。

 まあちゃんと湯上がり後にケアしとかないと、しっとりもっちもちお肌は維持できないんだけど。



 人目が無いのをいいことに全力で解放感を味わい、のぼせる前に湯から上がった。

 さっと髪や体のを乾かして、用意しておいた化粧水や保湿クリームを丹念に塗り込む。

 んー、ふんわりフローラルないい匂い。



 さっぱりした後は魚を塩焼きにして食べた。新鮮だからか塩だけでも凄く美味しかった。

 でも料理のレパートリーが少な過ぎて魚の美味しさを全力で活かせないのは悲しい……。焼く以外だと煮込むことくらいしかできないんだよなぁ。

 しかし料理の練習をするのはちょっと面倒臭い。そんなことしている暇があるなら魔法の研究してたい。



「帰るか」



 片付けを終える頃には雨が止んでいたので、空を飛んで拠点の街に戻った。

 そして寝泊まりしている家に帰ったら、扉の前に動物や虫の死骸が放置されていた。



「本当になんなんだよもー!!」



 あんっのクソ狼とクソ猫共が!

 マジで私が何したって言うのさー!?

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