第27話 真実へ
翌日、私は今日の夜の事で頭がいっぱいになっていた。みんなには何て切り出そうか、どんな反応をするだろうか……そんな考えでいっぱいだった。そのせいで上の空のままダンジョンまで来てしまって、アオとサオがハラハラとした様子で私を見ている気がする。
「優。……優?」
「…………」
「……優っ!」
「っ! どうしたの、アオ」
アオにしては珍しく強めに呼ばれて驚いた私は、やっとアオの方を振り向いた。
「どうしたのって、あのグレイウルフに何本の矢を射るの?」
「えっ?」
言われて少し離れた所を見ると、1頭のグレイウルフに矢が8本くらい刺さっている。何ならもう1本射るつもりで弓を構えていた。慌てて射るのをやめて弓を下ろすと、丁度グレイウルフがドロップ品に姿を変えた。
「無心で射続けているからどうしたのかと思ったよ」
「ごめん、ちょっと考え事を……。ドロップ品、取ってくるね」
そう言ってグレイウルフがいた場所に向かう。
「(ダメだ。上の空過ぎて全然集中していない……)」
ちょっとした自己嫌悪にため息を吐きつつドロップ品の牙と爪、毛皮を回収した。
こういう時はいつもなら匡利から注意されるけど、さすがに原因が分かっているからか何も言ってこない。チラッと見ると、何とも複雑そうな雰囲気だ。本当は「しっかりしろ」って言いたいんだろうなぁ……。
そんな匡利が不思議なのか、誠史と朔夜が何やら小さな声で話している。なんならアオとサオも同じように話しているのが見える。みんな、絶対に「何か変だ」って話しているんだろうなぁ……。
でも、今夜にならないと言えないし……。なんかモヤモヤする。
そんな何とも煮え切らない気持ちを全員が抱えながら今日の探索は終わりを迎えた。
その日の夕食の後、私は先に入浴を済ませて残りの2人が終えるのを待っていた。ちなみにここのお風呂は大浴場で広いし綺麗でなかなか快適だ。
2人が部屋に戻ってきたら、佳穂にも声をかけて匡利たちの部屋に行くと約束をしている。多分、今頃匡利も慶人たちに声をかけているんじゃないかな?
ソワソワとした気持ちが抑えられなくて、ベッドに座ったり立ったりを繰り返している。先にサオが戻って来た時もそんな感じで、かなり不思議そうに私を眺めていた。
「はぁー、気持ち良かったー」
アオが入浴を終えて部屋に戻ってきた。い、いよいよだ……。
「アオちゃん、ジュース飲む?」
「うん。ありがとう、サオちゃん」
2人が話しているのを横目に、私は深呼吸をする。そして覚悟を決め、ベッドから立ち上がって2人に向き直った。
「アオ、サオ」
「ん? どうしたの、優」
アオとサオが不思議そうに振り返る。私は一瞬だけ視線を巡らせた後、真っ直ぐ2人を見据えた。
「……2人に、大事な話があるの」
「「えっ?」」
「実は他のみんなにも話さなきゃいけなくて……匡利と慶人の部屋にこれから集まる事になっているの。……来て、もらえるかな?」
2人は戸惑っている様子だったけど同意するように頷いてくれた。それに少しだけ安心できて、私はホッと胸を撫で下ろした。
「佳穂も呼んでくるから、先に行ってもらえるかな?」
「うん、分かったよ」
私が緊張しているのが伝わったのか、2人は私を安心させるかのようにニコリと笑って頷いた。うぅ、優しいな……。
アオとサオは少し身支度を整えてから先に部屋を出て行く。私はそれを見送ってから佳穂と紗奈ちゃんの部屋に向かった。
「(ここが一番緊張するんだよなぁ……)」
部屋に辿り着くと、もう一度深呼吸をしてドアをノックする。
「はーい」
聞こえてきたのは佳穂の声だ。少ししてドアが開くと、佳穂が顔を出した。佳穂の後ろに見えるベッドに紗奈ちゃんが座っている。
「どうしたの、優梨」
「ちょっと佳穂に用があるんだけれど、今良いかな? 少し時間がかかりそうなんだけれど……」
なるべくいつも通りの雰囲気になるように話す。上手くできているかな……。
「私は大丈夫だけれど……」
佳穂はそう言って紗奈ちゃんの方を見る。紗奈ちゃんは一瞬キョトンとした後に苦笑いを浮かべた。
「私の事なら気にしないで行って来て、佳穂」
「うん……。じゃあ、行ってくるわね」
「ごめんね、紗奈ちゃん……」
さすがにちょっと申し訳なくてそう言うと、紗奈ちゃんは首を横に振った。
「大丈夫だよ、気にしないで」
うぅ、でもやっぱり申し訳ない……。ちょっと後ろ髪を引かれる思いで佳穂と一緒に部屋を出る。ドアを閉める前にもう一度紗奈ちゃんの方を見ると、何も言わずに笑って手を振ってくれた。それに振り返して、私と佳穂は部屋を出た。
だから私と佳穂は知らない。私たちが部屋を出た後、笑顔だった紗奈ちゃんの表情がスッと無くなった事を……。
「……大丈夫、だよ……」
誰もいない部屋に向かって、寂しげにポツリと呟いていた事を……。
佳穂たちの部屋を出た後、私は匡利と慶人の部屋へと急いだ。
「優梨たちの部屋じゃないの?」
「うん、匡利たちの部屋なんだ」
そう言って、部屋に着くとドアをノックした。慶人の返事が聞こえてきて、私と佳穂は部屋の中に入る。すでに私たち以外はみんな揃っていた。誰がしたのか分からないけれど、何故かみんなの中心にはお菓子やお茶まで用意されている。
「……宴会?」
「違う違う」
割と本気な口調で佳穂が言うから思わず首を振りながら否定した。むしろ宴会なら紗奈ちゃんも誘いたいよ。
とりあえず佳穂はサオの隣にあるスペースに座った。私はどこに座ろうかと思っていたら、慶人と匡利が2人して間のスペースを指差している。あそこに座れって事ね……。
「それで、話ってなんだ。匡利、優」
匡利と慶人の間に座ると、早速慶人が話を切り出した。
「えっと、話す前にちょっと待って。《結界》《人避け》《音遮断》」
私は念のために部屋に結界を張った。さらにその結界に人避けと内外の音が漏れない効果も加えている。その念の入りように慶人は目を丸くさせた。
「……その感じじゃ、余程の話なんだな」
「まぁね」
ちゃんと結界が機能しているか確かめた後、私は匡利を見上げる。私と目が合うと匡利は軽く頷いた。それに頷き返して、私は何度目か分からない深呼吸をした。
「実はね――」
まずは私が初日に見た夢の事を話す。その後、昨日の夜に見た紗奈ちゃんの事を匡利に捕捉を加えてもらいながら話した。私たちが話す間、他のみんなは一言も声を出さずに聞いてくれていた。
しばらくして話し終えると、みんな驚いて言葉を失っている。さすがと言うか、慶人と誠史だけは表情をほとんど変えずに話を聞いていた。
「……確かな話か?」
「うん」
「見間違えでもねぇんだな?」
「ないよ。私だけならともかく匡利も見ているんだし」
匡利の目の良さはこの場にいる誰もが知っている。眼鏡をかけていたけど、あのくらいの距離で匡利が見間違えるはずはない。慶人の問いはそれを分かっている上での念押しだ。慶人が視線を向けると、匡利も強く頷いている。
すると、慶人はゆっくりと息を吐いたかと思うと自分の《無限収納》から何かを取り出した。何だろう、凄く古い本に見える。なんだか「古文書」って言う言葉が似合いそうだ。誠史は見覚えがあるのか、少し目を見開いている。
「慶人、それは?」
聞くと、慶人の顔が少し強張った。
「……俺の一族に、歴代の“天使”に伝わる本だ」
今度は全員が別の意味で息を呑んだ。様子からして、誠史は知っていたみたい。すると、慶人はゆっくりと話し出した。
慶人の話は“私たち”が実は何度も生まれ変わりを繰り返している事、その際に一部のスキルや能力値を除いて、スキルや魔力・能力値・種族と言った通常は“受け継がない”ものを受け継いでいる事を話した。そのほとんどが、この世界に私が生まれ変わる直前に創造神様から聞いていた話と同じだ。
「(慶人って本当に頭が良いし、勘も鋭いんだなぁ……。僅かな情報でほぼ正解を導き出すんだから)」
みんなに変に思われないように驚いた風を装いながら私はそう考えていた。でも、まさか“天使”だけは代々慶人の家に生まれて、しかも記録を残していた事は知らなかったな。
「――俺はこの本が現れた後、初めて俺以外の仲間が存在する事を知った。それから俊哉さんに協力してもらいながら、お前たちを探し出したんだ」
「……ありがとう、俺たちを見つけてくれて」
誠史がそう言い、みんなも同じ気持ちを表すように頷く。慶人は少し照れ臭そうに笑みを浮かべた。
「ただ、まだ他にもいるかもしれねぇと思って、本の調査を続けていた。それでつい最近、あと1人いる事が判明した」
「っ!? まさか……」
「あぁ。最後の1人は白い鳥の獣人だ」
私は思わず匡利の方を振り返った。他のみんなも隣同士で顔を見合わせている。
「それじゃあ、やっぱり紗奈ちゃんは……」
「お前と匡利の見たものを考えると、俺らの仲間だ。それも、最後の仲間だ」
紗奈ちゃんが仲間……どうしよう、涙が出そう……今までに、そうだったら良いのになって思う事が何度もあった。今回この旅行に一緒に来て、あまりにも一緒にいるのが心地よくて、紗奈ちゃんも私たちの仲間だと錯覚しそうで……違う事が悲しかった。でも、それが錯覚でも何でもなくて、本当に仲間なんだ……。
この思いはみんなも同じみたいで、アオはすでに涙が流れていた。それを隣の誠史が頭を撫でながら慰めている。サオや佳穂も目元が潤んでいる。そして、雅樹だ。呆然とした様子だけど、その瞳の奥が喜びに満ちている。
「(そっか……雅樹はもう、紗奈ちゃんの事をそこまで想っているんだね……)」
雅樹を見ていると、本当に「良かった」と思えた。あとは、紗奈ちゃんの意思だ。
「なんにせよ、ほぼ間違いねぇとは言え、一度紗奈に確かめる必要はある」
「うん、それは私も匡利も考えたの」
滲んだ涙を拭って、慶人の方を見た。
「紗奈ちゃんが本当に私たちの“仲間”なのか……そうだとして、私たちの“家族”になってくれるのか……。一度聞かなきゃいけないと思う」
「俺と優梨は、明日か明後日の夜に今日と同じように話を聞くのが良いと考えている」
「そうだな……それなら、明日の夜が良いだろう。お前らも良いか?」
私と匡利以外のみんなに慶人が聞くと、全員が強く頷いた。
「場所は……この部屋と言いたいが、こうして集まるとさすがに狭いな。優、葵、咲緒理。お前たちの部屋で良いか?」
「「「いいよ」」」
私だけじゃなくてアオとサオも笑顔で返事をしている。
「佳穂」
匡利が佳穂を呼ぶ。その声に私はドキッと胸が鳴った。今までこんな事なかったのに……。
「なに、匡利」
「佳穂は準備ができたら紗奈を連れて、優梨たちの部屋に行ってもらいたい」
「良いわよ」
匡利の佳穂の会話を私は視線を逸らして聞いていた。話がまとまってからチラッと匡利を見上げると、すでに匡利の視線は別の方を向いていた。……嫌だなぁ、この気持ち。佳穂は大事な仲間なのに……凄くモヤモヤする……。
「あとは明日の夜だな」
慶人の声に我に返って、慶人を見上げた。その言葉に、みんなは頷いている。
「明日の食事の後……大浴場の時間もあるから、風呂の後が良いな。とにかく準備が整い次第、優たちの部屋だ。佳穂は匡利の言ったように紗奈を連れて来い。《念話》で呼びかける」
「分かったわ」
「じゃあ、今日は解散だ」
慶人のその言葉を合図に私たちは片付けをして結界を解いた。それを終えると、それぞれの部屋へと戻って行く。
部屋に戻った後、私たちは無言のままベッドに座っていた。アオとサオはなんだか夢心地という感じにボーッとしている。
「……アオ、サオ。ごめんね」
私がそう声をかけると、2人は驚いたように顔を上げた。
「優?」
「ずっと心配してくれていたのに、ずっと黙っていたままで……。もっと早くに話せてたら良かったんだけど……」
理由はあれど、2人に内緒にしていた事が心苦しかった。その思いが私に謝罪の言葉を口にさせる。すると、2人は勢いよく立ち上がったかと思うと、それぞれ私の手を取った。
「何で優が謝るの?」
「言えなかった理由、ちゃんと分かるから大丈夫だよ」
「だから謝らないで」
何故か2人の方が悲しそうな顔でそう言ってくる。その様子に思わず苦笑が零れた。2人は本当に私に甘いなぁ……。
「……でもさ、優」
アオが何かを言いかけるからそちらを見ると、今度は一変してニヤニヤとした笑みを浮かべている。……な、なに?
「知らない間に匡利くんと2人で夜の海デートに行っていたんだね? 隅に置けないなぁ」
……えっ? あれ? そういえば、さっきの話ってその事をバラしちゃった感じ? しかもあんな堂々と?
その事に気付いた瞬間、私の顔は一気に熱くなった。多分、顔色は真っ赤に染まっていると思う。
「いや、あの、その、えっと……」
何か言おうにも全然言葉が浮かんでこない。匡利も平然と補足して話すからちっとも気付かなかった……!
私があたふたとする一方で、アオとサオは揃ってニヤニヤと笑みを浮かべている。
「私とサオちゃんが眠っている間に海デートかぁ。いいねぇ、羨ましいねぇ」
「本当だねぇ」
「~~~~~~っ、だって! 寝られなかったんだもん!」
もうダメ。揶揄われて恥ずかしすぎて何も良い言葉が浮かばない。言い訳にもならない言葉を声高々に叫ぶと、アオとサオは楽しそうにケラケラと笑っていた。
「まぁでも、色々と落ち着いたら、どんな感じだったのか話してね?」
「……うん」
うぅ、元々話すつもりだったけど、普通に話すよりも照れる……。そう思いつつも、とりあえず気持ちを落ち着かせようと深く息を吐いた。それからアオと指切りの約束をして、私の気持ちはやっと平常に戻った。
その後、私たちは寝る支度を整えてそれぞれのベッドに入った。明日の事を思うと緊張するけれど、きっと最後には言い結果になる。そう信じて、私は静かに目を閉じた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
~ side 紗奈 ~
夢を見ていた。とても久しぶりに見る夢……。
私はどこか見覚えのある、少し懐かしい部屋に立っていた。目の前には小さな女の子とその母親が立っている。女の子は母親を怯えたように見上げていて、一方で母親はその顔を苛立ちに歪ませている。
すると突然、母親が大きく手を振り上げた。
――バシンッ!
大きな音が鳴り響いて、母親は女の子の頬を力いっぱい平手打ちした。女の子はその反動でその場に倒れこんで、涙ながらに母親を見上げる。母親はヒステリックに何かを叫んでいた。
「(……嫌。また同じ夢……どうして、何でこんな事をするの……?)」
目の前の光景から目を逸らしたいけど、夢の中ではそんな事はできない。
女の子は泣きながら母親に手を伸ばす。
『お、かあさ……』
女の子が小さな声で呼びかけると、母親は益々苛立った様子で叫んでまた右手を振り上げた。その様子を女の子は悲しそうに見つめた後、ギュッと目を閉じていた……――
ここで私はハッと目を覚ました。起き上がってサイドテーブルの時計を見ると、まだ夜中の3時だ。隣のベッドでは佳穂が小さな寝息を立てて眠っている。
「(夢、か……)」
パタパタと手に何かが落ちる。それが自分の目から流れ出る涙と気付くのにそれほど時間はかからなかった。涙を拭って、またベッドに横になる。
「(……今度は楽しい夢が見られますように……)」
そう願いながら私はもう一度目を閉じて眠りに就いた。
結局あまりよく眠れなかった私は昼間の探索の間、少し意識がボーッとしていた。
「どうしたの? 紗奈ちゃん。まさか具合悪い?」
「……いえ、大丈夫ですよ」
蒔田さんの声にハッと我に返って、取り繕うように笑みを浮かべる。でも、蒔田さんは納得できなさそうに顔をしかめた。
「あまり無理をしない方が良いんじゃ……」
「本当に大丈夫ですよ」
どうしてかギュッと両手を握り締めながら言われる。良い人だけれど、どうしてもこういうのには慣れないな……。
少し困っていると、雅樹くんが来て蒔田さんの手を離した。
「ダンジョンの中だ。少しはわきまえろ」
珍しい物言いに私も蒔田さんも驚いて目を丸くする。雅樹くんの表情は見えないけれど、きっと険しいんだと思う。それに負けじと蒔田さんも睨み返している。
「おい! お前ら、次の魔物が来るぞ!」
少し離れた所から慶人くんが叫ぶように声をかけてきた。雅樹くんと蒔田さんはお互いに視線を逸らして、目の前の魔物に集中した。
この日の探索は9階層のボスまで倒せた。10階層目に下りてすぐ側の安全地帯に転移石を置いて、私たちは地上に戻った。ギルドに行くと、丁度優たちも戻ってきていた。優たちが潜っている陸ダンジョンも丁度9階のボスを倒して10階に下りた所らしい。
「明日はダンジョンに潜る最終日だ。行ける所までは行くぞ。ただし、怪我だけはするなよ」
慶人くんがそう言って、みんなは頷く。
「(そっか。もうすぐこの旅行も終わりなんだなぁ……)」
そう思うと、胸がチクリと痛む。物凄く楽しかったなぁ。それだけに、もうお終いなのかと思うと凄く寂しくて、悲しかった。もっとみんなと一緒に過ごせたら良かったんだけど……。
「紗奈、大丈夫?」
そう言う声が聞こえて顔を上げると、雅樹くんの綺麗な緑色の瞳が心配そうに私を見つめていた。
「……大丈夫だよ」
何とか笑顔を浮かべてそう言うと、雅樹くんはまだ少し心配そうにしながらも慶人くん達の方に向かった。
……この旅行中、何度雅樹くんに助けられたかな。この春から雅樹くんと関わる事が増えたけど、この旅行はその比じゃなかった。それに、今まで知らなかった一面もたくさん見られた。
「(ダメだと思うのに……私なんかが雅樹くんに釣り合うはずがないのに……)」
でも雅樹くんが助けてくれるたびに、笑顔を向けてくれるたびにどうしても気持ちが膨れ上がる。ダメだと思っても想いが止まらない……。その事をこの旅行でますます実感した。その一方で、自分の浅ましさに失望する……。
「(……もう少し、もう少しだけ……せめてこの旅行中だけでも、自分を忘れさせて……)」
ズキズキと痛む胸を抑えて私は人知れず、そう思っていた。
そして夜、私は入浴後に佳穂と色々と話していた。いつもだったら割と早く寝るんだけど、今日は違うみたい。もうすぐ旅行が終わるからかな?
そんな事を考えていたら、会話が途切れた。佳穂は一瞬遠くを見つめたかと思うと、こちらを振り向いた。
「紗奈」
「なぁに、佳穂」
「……これから、私と一緒に優梨たちの部屋に来て欲しいの」
「優たちの?」
「えぇ。そこで話があるの。……とても大切な話が」
……なんかちょっと怖いな。でも断れそうな雰囲気でもない。恐る恐る頷くと、佳穂は少しほっとしたような顔をした。何なんだろう……?
とりあえず軽く身支度を整えてから、私は佳穂と一緒に優たちの部屋に向かう。部屋を出た時のドアの閉まる音が、何故かとても重い大きな音に聞こえたような気がした……。
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