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異能者恋物語  作者: 蒼月憂
第1章 新学期
2/52

第1話 日常①

2話目です


 4月になって何日か経ったその日、私はいつもより少し早く目を覚ました。

 天蓋の付いたベッドはフカフカでとても気持ちが良くて、もっと寝たいという気持ちが湧いた。キングサイズのベッドの上でしばらくゴロゴロと転がった後、私はのっそりと起き上がってベッドから降りた。


「ん~~~~っ」


 大きく伸びをした後、私は抱き枕にしていた大きな鳥のぬいぐるみを抱き上げて、ベッドの向かいの壁にある棚に向かう。寝室、というにはそれなりに広いマンションの1部屋分はありそうな部屋の中で一際目立つその棚の扉を開けると、手に持っている子と同じようなサイズのぬいぐるみがたくさん並んでいる。その中で1か所だけ空いている所に、持っている子をしまって扉を閉めた。

 ぬいぐるみをしまうと、今度はベッド脇のポールハンガーにかけている制服に着替え始める。上着まで着るとさすがに動きづらいから、それだけは手に持つ事にする。寝室にはドアが2つあって、私はその手前のドアから寝室を出た。

 寝室の外は長い廊下だ。所々にドアがあるその廊下を進むと、右の方が広く開ける。廊下よりも1段低くなるこの空間はリビング・ダイニングエリアだ。そのエリアに降りると、リビング部分を通り過ぎて奥のダイニングエリアに向かう。そこのダイニングテーブルには、前日に用意した鞄が置いてある。軽く中身を見た後、私はその鞄を手にしてまた廊下に戻り、先に進んだ。廊下の先にまたドアがあって、そこから出た。


 ドアの向こうは外じゃなくてまだ室内だ。ホテルのフロアみたいに広く、床には高級そうな絨毯が敷かれている。部屋を出て右側には窓が並んでいて、そこから日の光がたくさん入ってくる。窓際には置時計とか、ちょっとした観葉植物が置かれている。

 私の部屋の向かい側は、私が出てきたのと同じようなドアがある。どちらのドアにも横に小さめの呼び鈴のボタンがある。部屋が広いからノックぐらいじゃ気付かないんだよね……。

 私から見て左側にはさらに立派な観音開きのドアがある。


「――まだ大丈夫か」


 窓際の置時計はまだいつもより少し早い時間を指している。これならゆっくり降りても大丈夫そうだ。

 観音開きのドアの方に向かって開ける。ドアの向こうには階段がある。赤いカーペットが敷かれた階段は上下へと続いていた。私がいたのは6階のフロアで、そこから一気に一番下まで下りていった。下まで辿り着くと、やっぱり観音開きのドアがあって、そのドアを開ければまた広い空間に出る。


 ここは玄関ホールだ。ホールの中央は2階部分まで吹き抜けになっていて、天井からは豪華なシャンデリアが吊り下がっている。大きな正面階段を降りたら、玄関にはいかずに左の方に向かう。そこにはまたドアがあった。

 そのドアを潜ると、その先は私の部屋のよりもさらに長くて広い廊下が続く。天井は数メートルと見上げるほど高くて、同じように窓もかなり高い。レースカーテン越しに入ってくる日の光が、廊下を明るく照らしている。

 カーペットの敷かれた廊下を進んで、いくつかのドアを通り過ぎる。奥から3つ目のドアまで辿り着いたら、そこを開けて中を覗き込んだ。


 そこは食堂(ダイニングルーム)だ。白いテーブルクロスのかかった長テーブルや壁掛けテレビ、小さなバーカウンターまである。ただ、そのカウンターにお酒は並んでいない。

 ダイニングルームにはすでに人がいて、私が入ってきた事に気付いてこちらを振り返った。


「おはよう、みんな」


 私が声をかけると、次々に挨拶が返ってきた。

 中にいたのは6人の男の子と1人の女の子だ。全員、私と同じデザインの制服を着ている。


「今いるのはこれだけ?」

厨房(キッチン)に葵と咲緒理がいるぞ」


 それを聞いて、私は空いている椅子の1つに盛っていた鞄と上着を置き、ダイニングルームの奥にあるドアから隣のキッチンに入った。

 どこかのレストランの厨房かと思わせるほど広々としたキッチンでは、2人の女の子が作業をしていた。彼女たちも私と同じ制服を着ている。2人は私が入ると、作業する手を止めてこちらを振り返った。


「アオ、サオ。おはよう」

「「おはよう、優」」


 2人は私の挨拶に表情を明るくさせて返してくれた。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 私がこの世界に転生してから、16年と数か月が経った。今の私には、9人の「家族」がいる。


 ダイニングルームで外国語の新聞を読んでいるのは、天宮慶人(あまみやけいと)。亜麻色の髪と青い瞳の男の子で「眉目秀麗」とか「見目麗しい」なんて言葉がよく似合う美形だ。所作やちょっとした仕草に品があって、海外の王子様だと言われたら信じてしまいそうな人だ。

 コーヒーを飲んでいるのは、佐塚匡利(さづかあきとし)鳶色(とびいろ)の髪に、瞳の色は森を思わせるような深緑だ。彼もかなりの美形で、銀縁の眼鏡が物凄くよく似合う。容姿端麗ってこういう人の事を言うのかと思うほどだ。

 トーストに塗るジャムを選んでいるのは、加村誠史(かむらせいじ)。癖のある少し長い髪は紺青(こんじょう)色で、青い瞳の男の子だ。彼も美形だけれど、さっきの2人とは違うタイプで女性だと言われても信じてしまいそうな優しい顔立ちをしている。ただ、たまに見せる笑顔がちょっと怖い……。

 野菜ジュースを飲んでいるのは、石井朔夜(いしいさくや)。彼もまたタイプの違う美形だ。少し短めの漆黒の髪は、無造作に見えるようでちゃんと整えられていて、綺麗なこげ茶色の瞳が眼鏡の向こうから見える。よくある「眼鏡を取ったらイケメン」を地で行ける人だ。不思議な色合いの怪しげなジュースさえ飲んでいなければ本当に最高なのに……。

 朝刊を読んでいるのは、大和玲(やまとれい)。濡れ羽色の髪とこげ茶色の瞳の男の子で、奥二重の涼しげな目元のハンサムな男の子だ。男の子相手だけど「和風美人」ってこういう人の事なんだなぁと思う。

 未だに眠そうにしているのは、須藤雅樹(すどうまさき)。彼は銀髪なんだけれど、サラサラの髪が肩まであって綺麗だ。無造作に後ろでまとめているのがちょっと勿体無い。切れ長の瞳は三白眼気味で、明るい緑色をしている。凄く綺麗な顔立ちをしていて、髪とか瞳も相まって「ミステリアス美人」と言いたくなる。

 紅茶を飲んでいるのは、久乃木佳穂(くのぎかほ)。雀茶色の髪は肩下で整えられ、綺麗な樺色の瞳の女の子だ。彼女を見ていると「才色兼備」「文武両道」という言葉は彼女のためにあるんじゃないかと思うほどかなりの美人だし、勉強も運動も優秀だ。

 キッチンで朝食の用意をしているのが、日向咲緒理(ひゅうがさおり)。私は「サオ」って呼んでいる。胸下まである髪は紺色をしていて、瞳が綺麗な瑠璃色の女の子だ。物静かな雰囲気で控えめな子に見えるけれど、意外と活発なところはあるし、何よりも笑った時の顔が凄く可愛い。

 同じくキッチンで昼食のお弁当を用意しているのが、大野葵(おおのあおい)。彼女の事は「アオ」って呼んでいる。フワフワな真紅色の髪は腰を超すほど長くて、くりくりとした桔梗色の瞳がとても可愛い。彼女は他のみんなに比べると一番小柄だ。天真爛漫で愛らしくて、みんなから可愛がられている。

 そして私、汐崎優梨(しおさきゆり)だ。私の髪は腰までの長さがあって、色は蜂蜜を思わせるような金髪だ。瞳は琥珀色をしている。自分で言うのもなんだけれど顔立ちは綺麗というか、可愛いと思う。ちなみにみんなからは「優」って呼ばれる事が多い。


 家族10人、全員が系統は違えど人目を惹くほどの美形揃いだ。そして、全員が私と同じ年でもある。




 約17年前、私はこの世界に転生した。創造神様の言う通り、前世の記憶は5歳になってしばらくした頃に思い出した。その後は正直あまり思い出したくもないような事が色々あった。でも、数年前に紆余曲折の末に慶人たちと出会う事ができた。出会ってしばらくした頃からは、このお屋敷でみんなと一緒に共同生活を送っている。

 もちろん、慶人たちみんなも私と同じ「異能者(ミュータント)」だ。この事は一部の人を除いて秘密にしている。


 私が転生したのは、前世の地球とよく似た「ガイア」と呼ばれる世界だ。地球と同じ惑星だけれど、星の半分以上が元々異界だった「魔界」で、その残りが人間の暮らす「人間世界」だ。

 私が暮らすのはその人間世界で極東に位置する島国「葦原瑞穂王国あしはらのみずほのおうこく」だ。名前が長すぎるから、大抵の人は「葦原国(あしはらのくに)」とか「瑞穂国(みずほのくに)」とか呼んでいるし、海外の人なんかは最も東にある国だからか「(あずま)の国」って呼んだりもしている。私は「瑞穂国」って呼んでいる。

 その瑞穂国の王都・東慶(とうきょう)に私たちの暮らす屋敷がある。この屋敷は、実は貴族である慶人の屋敷だ。だから物凄く大きいし、物凄く広い。住んでいるのは、彼によって集められた私たちだけだ。


 私たちは全員、生まれながらにして色々と規格外だった。総合レベルは普通の人が一生かけても上げられないほど高いし、持っているスキルの数は計り知れない。一般的には「希少スキル」って呼ばれるような珍しいスキルも結構な数を持っている。それに、この世界ではスキルにもレベルが存在しているけれど、私たちは一部を除いて大半のスキルのレベルも相当高い。

 一般的にレベル1~10は基礎・見習い、レベル11~20は一般、レベル21~30はベテラン・プロ、レベル31~40は熟練、レベル41~50は一流、レベル51~60は達人とされ、レベル61以上からは神と呼ばれている。

 そして、私たちのスキルレベルはその殆どが400を超えている。


 他にも色々と桁外れな事があるけれど、中でも著しいのは「魔力」と「種族」かな。


  魔力に関してはベテランの魔術師が多くても8000、国に仕える宮廷魔術師が1万以上、魔術師の最高峰である「賢者」が5万ほど持つと言われる。そんな中で私たちの魔力は全員が40万を超えている。魔力切れなんてほぼ無縁の数字だよ……。


 種族については本当に変わっていて、私たちは《ステータス隠蔽》なしで鑑定をすると「種族」の表示が「一応人間」となってしまう。おまけにその下に普通なら現れない「もう1つの姿」っていう項目が増える。

 本来、人間以外の種族――異種族との間に生まれる「混血」や、妖精の悪戯で子どもが入れ替えられる「取り替え子(チェンジリング)」でもない限り、異能者であっても種族は「人間」だ。それなのに私たちは“一応”がついてしまう。それは多分、もう1つの姿が関係するからだと思う。

 以前調べた時に「もう1つの姿」とはいわば「魂の種族」らしい。肉体は人間、魂は異種族という事だ。転生前に創造神様が「形は違えど、種族までも受け継ぐ」と言っていたけれど、この事なんだと思う。

 このもう1つ姿はそれぞれ違っていて私は吸血鬼、アオは赤毛の狐の獣人、サオは黒猫の獣人、佳穂は人魚、匡利はエルフ、慶人は天使、誠史は悪魔、朔夜は黒犬の獣人、朔夜は白犬の獣人、そして雅樹は狼男だ。


 ちょっと厄介な事に私たちは普段から異種族の力は抑えて人間として生活しているけれど、何かと影響があった。私たちの容姿もこの影響だ。この世界は前世の地球と違って、髪も瞳も色にバリエーションがあるらしい。ただ、瑞穂国の人――東人(あずまびと)と呼ばれる人の特徴は、日本人と同じ黒髪・黒目だ。顔立ちも日本人に近い。でも、私たちの容姿は明らかに東人と異なっている。

 他には体質やスキルは勿論の事、普通の人間なら問題のない月に満ち欠けや激しい感情の起伏にも色々と影響が起こる。これは本当に困る事があるので、念のために魔力とか色々と抑える制御装置を普段から身に付けるほどだ。


 こんな風に東人としても能力者としても、何なら異能者(ミュータント)としても“普通”からかけ離れている私たちは、全員が何かしらの過去を抱え、孤独を感じていた。

 その一因に「家族」の事がある。創造神様にお願いして最初から両親が存在しない私はともかく、それ以外のみんなも実の家族と絶縁している。その理由は赤ちゃんの頃から施設育ちで顔すら知らない、家を追い出された、逆に耐え切れず自分から出て行った……という風に様々にある。それが巡り巡って私たちは出会う事が叶い、今こうして一緒に暮らしている。

 本来なら未成年の私たちが暮らしていくには色々と制約があって苦労するけれど、実は慶人の遠い親戚に1人だけ、私たちの事情を全て知った上で理解してくれる人がいる。その人が私たち全員の後見人になってくれて、今の暮らしができている。


 傍から見たら私たちは「ただ一緒に暮らしている赤の他人同士」だろうと思う。でも、色々ある中でやっと出会って、こうして一緒に暮らしていくうちに私たちはお互いを「仲間」以上に「家族」に思えた。だからこそそういう風に呼んでいるし、絆の固さは本当の家族以上だと思っている。


 前世でも現世でもなかなか家族に恵まれなかったけれど、私は今とても幸せだし、充実した日々だなぁって思っている。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「優、ホットケーキとトーストのどっちを食べる?」


 ホットケーキのタネが入ったボウルを持ったサオが聞いてきた。さっきからホットケーキの焼ける良い匂いがしていて気になっていたんだよねぇ。


「今日はホットケーキにする。2枚お願いしても良いかな?」

「OK。メープルシロップとか蜂蜜はダイニングの方にあるよ。持ってくからそっちで待ってて」


 私は頷いてキッチンを出てダイニングルームに戻った。座る前に飲物を選ぶ事にする。テーブルには何種類かの飲物がピッチャーに入っている。その中からオレンジジュースを選んだ。

 席に座ってしばらくしたら、サオが私と自分の分のホットケーキのお皿を持って入ってきた。その後ろからはお弁当を作り終えたアオが自分の朝食を持って入ってきた。サオからお皿を受け取り、2人が座るとその場の全員で「いただきます」と声を揃えた。


「――朝のうちに連絡事項がある奴はいるか?」


 食べ始めて少しすると、慶人がみんなに聞いた。

 私たちは毎朝毎晩の食事時に連絡事項を伝えあっている。大抵はキッチンへの入口の横にあるホワイトボードに書いているけれど、改めて口頭でも伝えるようにしている。じゃないと、大事な事の伝え漏れもあり得るからね。


「俺は放課後に生徒会の仕事があるが、帰りは遅くならねぇはずだ」と慶人。

「俺はサッカー倶楽部のミーティングがある。帰りは遅い」と匡利。

「バレー倶楽部は顔合わせだけだから帰りは遅くならないよ」と誠史。

「「特にないが、何かあった時は後で連絡する」」と朔夜と玲。

「……俺もない」と雅樹。

「私も今はないわね」と佳穂。

「んー、明日の夕飯当番だからリクエストがあれば今日中にお願いします、って事くらいかな」とアオ。

「私は放課後に買い物に行くから、帰りが遅いかも」とサオ。

「私もサオと一緒で今日の夕飯の買い物とか行くから少し帰りが遅いです」


 一通りの連絡を終えれば後は雑談タイムだ。話す内容は大体その日の授業の事、テレビから流れるニュースの事、具体的なその日の予定の事なんかを話している。

 朝食が終わったら、食器を片付けて当行の支度だ。大半は自室に戻って準備するけど、私は殆どの荷物を持ってきているから、1階の共用の洗面所に向かう事にする。ただ、ダイニングルームから洗面所まで結構離れているからここは時空属性魔法の1つ《瞬間移動(テレポート)》を使って移動する。

 この魔法、本当に便利なんだよね。あっという間に屋敷の反対側にある所に一瞬で移動できるんだから。


 アオとサオも同じ事を考えていたのか、私の後に続いて洗面所に来た。髪型を整えたり、薄く化粧をしたり。3つ並んでいる洗面台の前に3人並んで雑談を交えながら身支度を整えていく。櫛やらドライヤーやらを浮かせながら髪を整えるのもだいぶ慣れてきたよ。


 30分後には全員が身支度を終えて玄関ホールに集まり、一緒に家を出て学校へと向かっていった。


ここまで読んで下さりありがとうございました!




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