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異能者恋物語  作者: 蒼月憂
第2章 最後の仲間
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第15話 出発前のあれやこれ

 慶人に双子島へ行く計画の承諾をもらってからしばらくたった。夏休みまでの間は授業や倶楽部活動に加えて、中旬には1学期末の試験があった。せっかく計画を立てても試験に落ちて夏休み中に補習になってしまっては意味がないから、私たちはいつも以上に力を入れて勉強に励んだ。

 試験が終わって2、3日は少しだけ授業があって、週末の土曜日に終業式が行われるといよいよ夏休みだ。

 休みの最初の1週間はちょこちょこと大会があってそれに参加する人もいたけど、私は結局今年の大会は見送った。倶楽部長は出て欲しそうだったけど、去年の事があるからね……。その代わり大会に出る子の練習にはギリギリまで付き合って、見事その子は個人で2位を取っていた。


「汐崎さんが出ていたらきっと優勝だったと思うよ」


 そんな事を大会後に言われたけど、案外その子の方が勝ってたんじゃないかなって私は思っている。


 夏休みの期間中、貴族の社交界もオフシーズンらしくて、別荘地や観光地に行く人もいれば、他の都市に実家がある人はそっちに帰ったりもするみたい。そう話すエリカ自身は別荘に行くのだと誠史とアオに言っているのが聞こえてきた。遠回しに誘われていたみたいだけど、誠史は気付かないふりをしている。


「――俺は少し遠くのダンジョン攻略に行く予定だよ」

「みんなと一緒にね」

「あら、皆さんは冒険者ギルドに登録しているんですか?」

「うん。後見人の人からの援助はあるけど、将来的な事を考えてね」

「そうなのですか……。という事は葵さん、あなたも登録を?」

「もちろん」


 アオの返事を聞いたエリカは何やら訝しそうに顔をしかめた。


「……それは大丈夫なのですか? あなた、真っ先に魔物に踏み潰されるか攫われるように思うのですが……」

「失礼な! これでもランクは誠史くんたちと一緒だし、火魔法だって得意なんだからね!」

「あら、火魔法が得意なんですか。攻撃魔法ですけど、あなたが適正を持っているなんて意外ですね」

「ひ、一言余計……っ!」


 ……うん、楽しそうだね。アオはぷんすこ怒っているけど、あれ完全にエリカに揶揄われているよ……。それが分かっているのか誠史も全然止めないで笑っているし……。絶対にあれは「怒っている葵も可愛いなぁ」とか思っているよ。


「――では、いつか護衛依頼が受けられるランクになりましたら、皆様に私の護衛をお願いしたいですわ」

「その時はぜひ受けさせてもらうよ」


 ……何て言うか、アオとエリカの間で火花が散っているけど、3人の会話は平和だよね。


 私なんてこの間、放課後に宮岸さんが珍しくこの教室に来て、匡利に夏休みの予定を聞いていたんだ。みんなと一緒にダンジョン攻略に行くって匡利が伝えたら、誰の発案なのかって話になって……。匡利は何も言わなかったけど、目の前でそんな会話をされている上にしつこく聞いているから、仕方なく私が自分の発案だって答えたんだよね。そうしたら自分の我が儘に匡利を付き合わせるなって感じの嫌味を延々と言われて……。ちょっと涙目になったよね。あの人の嫌味、言葉がきつい上に痛い所を突いてくるから本当に嫌い……。


「――佐塚くん、無理に汐崎さんに合わせる必要は無いんじゃないかしら?」


 宮岸さんは半泣きになる私に勝ち誇ったような顔をした後、匡利に向き直ってそんな事を言い出した。話を振られた匡利は珍しく怪訝そうな顔を隠さないで宮岸さんを見た。


「別に無理はしていないが……」

「私は夏休み中に北の方の都市にいる親戚の家に行くのだけれど、良ければ一緒にいかが?」

「……俺のランクはまだ護衛依頼を受けられないが」


 ……そう言う事じゃないでしょう、絶対に。


「だから、そうではなくて……」

「そもそも発案は優梨とは言え、計画は玲と朔夜がしている。その計画も慶人からの承諾をもらって、俺たちも了承している。優梨の我が儘でもなければ、無理に付き合っているわけでもない」

「…………」

「話は以上か? なら帰らせてもらう。……優梨、帰るぞ」


 一方的に話を中断させた匡利は私にも声をかけて、そのまま教室を出て行った。教室に残された宮岸さんがどんな表情をしていたのかは怖くて見られなかった。後から教室にまだ残っていた子たちからメチャクチャ睨んでいたって聞いて、本当に振り返らなくて良かったって思ったよ。

 ちなみに匡利は半泣きになっていた私を慰めようとしてくれたのか、帰り道の途中のお店で美味しそうなお菓子を買ってくれたよ。それで一気に元気になる私も単純だよねぇ。


 他にも慶人によると沖田くんは実家に帰るらしくて、龍一は騎士団の訓練に見習いとして参加するらしいって誠史と玲が話していた。ナオはご実家のお店の仕入れで少し遠出をするから、それについて行くんだって雅樹が言っていた。


「いつか雅樹くんたちに護衛をお願いしたいですね」


 なんて事をナオが雅樹に話していたみたいで、ちょっと雅樹が嬉しそうだった。依頼とはいえ、みんな一緒に出掛けられるって事だから、それが現実になったら楽しいよね。




 そんなこんなで、あっという間に双子島へ行く前日の日になった。


「えーっと、装備一式と短剣、弓、矢と矢筒、予備の弓と矢……ダンジョンだからこんな物かな?」


 私は自室のリビングエリアで持って行く物の最終チェックをしていた。


「地上の探索だったらここにテントとか食糧とかいるんだろうけど必要ないし……お昼ご飯は必要みたいだけど、それは向こうで頼めるし……」


 あとは魔法薬(ポーション)とかだろうけど、治癒魔法が使えるからあまりいらないし……。あぁ、でも紗奈ちゃんと一緒だから、2本くらいは持っていた方が良いのかな? そう思って《無限収納(インベントリ)》を見ると、いくつかは入っていた。これで多分足りると思う。


「後は普通の服……ほとんど装備で過ごしそうだけど、一応1週間分くらいは持っていくかぁ」


 衣裳部屋に行って観光する時に着る服、宿泊施設で着る服、魔導船の中で着る服を選ぶ。後は下着とか細々した物を選んでリビングに戻った。服以外にも色々とケア用品とか本とかを選んでから、旅行向けのちょっと大きめの鞄に詰めていった。

 この鞄は魔道具の「マジックバッグ」だ。結構容量が大きめで今回の荷物なら全部入ってしまうほどだ。魔物の革製の上等な物なんだけど、これも俊哉さんが買ってくれた物なんだ。

 本当なら全部《無限収納(インベントリ)》に入れちゃっても良いんだけど、紗奈ちゃんが一緒なのに手ぶらなのは変に思われそうだし、いつものマジックバッグに見せている小さめのバッグじゃちょっと違和感あるしね。

 《無限収納(インベントリ)》にはお金とかの貴重品とか手持ちで持っておきたい物だけを入れて、いつものバッグ越しに出し入れする予定だ。


「さてと、最後に《鑑定》」


 マジックバッグに向けて唱えると、目の前に半透明のパネルみたいなのが出てマジックバッグの中身を見る事ができる。入れ忘れている物は特になさそうだね。ちゃんと海に行った時に着る水着も、日差し除けのつばの広い帽子も入っている。

 こっちの世界で初めて水着って買ったけど、可愛いデザインのがあって良かった。まぁ、当然日本の水着とは違って素材は魔物の革とかみたいだけど、何の素材かは気にしないでおこうかな……きっとカエルとかだろうけど……。


「――次は《無限収納(インベントリ)》」


 そう唱えると、さっきまで開いていたパネルは閉じて別のパネルが開いた。これは私の《無限収納(インベントリ)》の中身だ。普段《無限収納》を使う時は無詠唱だし、中身をこうして見る事はあまりないんだけど、こうやって中身を確認したり整理したりする事ができるんだ。

 他のみんながどうしているのかあまり知らないんだけど、私は《無限収納》の中をカテゴリ別に分けて使っている。前に《無限収納(インベントリ)》の中がゴチャゴチャになるって朔夜たちに相談したら、こうすると整理しやすいって教えてもらった。今では「全部」「貴重品」「学校」「飲食物」「衣服」「医薬品」「素材(売る)」「素材(自分)」みたいな感じで分けられている。今回はさらに「旅行」って言うのを加えて、双子島に行くのに使う物は一応ここに分けられている。


「えっと交通費、宿泊費、食事と買い物のお金、ハンカチ・ティッシュ、メイク直し用ポーチ……うん、こんなものかな」


 カテゴリに分けているだけで《無限収納(インベントリ)》に入っている事には変わりないし、分けているのは使いすぎたりしないようにするためだからね。


 荷造りが終わったら、もう一度衣裳部屋に行って明日の移動と船の中で履く靴を選んだ。

 私たちが乗る予定の船は明日のお昼頃に出港して、1日かけて双子島に向かう魔導船だ。朔夜たちに聞いたら、直行船だったら半日で行けるんだけど、そんなに数はないしそもそも一般的に緊急時や商船でもない限りは乗らないんだって。もちろん乗れなくはないけど、早く着く分ちょっと割高だしね。それで、私たちが乗るのはいくつかの港に寄りながら向かう船だ。


「船に乗ったら多分すぐに着替えたりするだろうし、港までは南東の小門から魔導バスで移動だし……小門までも魔導バスだし……。とりあえず普通の靴で大丈夫か」


 選んだのは割とシンプルでヒールの低い靴だ。船の中では似たようなタイプのサンダルにする。選び終わったら、サンダルの方はマジックバッグに入れて、もう1足は明日出発する時に履けるように下に持っていこう。

 玄関ホールまで《瞬間移動(テレポート)》をして、玄関にある小部屋へ向かう。この小部屋は「シューズインクローゼット」だ。玄関から中に入って両脇にある部屋の片方で、ここにはみんなの普段使いの靴が数足ずつと傘立てがある。私がいるのは女子用の部屋で、反対側にあるのが男子用の部屋ね。

 部屋の中には靴を置くための棚がズラッと並んでいて、大体それぞれのスペースに分かれている。どのスペースにも通学用の靴と運動靴、休みの日によく履いている靴が並んでいる。傘立ても人数分あって、それぞれに雨傘と日傘が立てられていて、そのすぐ側の壁には折り畳み傘がフックにかかってぶら下がっている。

 私は自分のスペースに持っていた靴を置いた。よく見れば、すでに佳穂とサオの靴が置かれている。もう準備終わったんだね。

 部屋から出ると、アオが《瞬間移動》で現れた。手には同じように靴を持っている。


「優、準備終わったの?」

「うん、やっとね」

「明日楽しみだねー」


 見るからにワクワクとしているアオ。誠史じゃないけど、可愛いね。そう思っていたら無意識に頭を撫でていた。アオも慣れたもので、その行動を普通に受け入れてくれている。


「明日って結構早いんだっけ?」

「うん。朔夜と玲が言うには、昼頃に出港する魔導船を予約したって。遅くとも出港の30分前には船に乗り込み完了させなきゃいけないみたいで……ここから港までは大体1時間半だから……遅くても10時頃には出ないといけないかな?」


 船の時間と移動時間を逆算するとだいたいそれくらいになるはずだ。


「じゃあ、そろそろ寝ないとダメだね」

「そうだね。準備も終わっているし、時間的に丁度いいかな」

「私は靴を置いてきちゃうね」

「うん。おやすみ、アオ」

「おやすみ、優」


 手を振り合って、私はそのまま《瞬間移動(テレポート)》で部屋に戻った。

 明日着る服の用意をしてから、念のためもう一度マジックバッグの中を確認した。もしもの時はあっちで調達は可能だろうし、最悪《瞬間移動》で取りに帰ってくる事もできなくはないから、今回は本当に軽く見ただけだ。

 それから寝る支度を整えて、いつもならこの後本を読んだりしてダラダラと過ごすけど、今日は早々にベッドに入った。

 明日からが楽しみ過ぎてあまり寝付けないかなとも思ったけど、意外とあっさりと私は眠りについていた。

ここまで読んで下さりありがとうございました!




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