第14話 発端
~ side 慶人 ~
6月になって梅雨が始まった。雨が降る日が増すこの時期は、倶楽部もなく外に出る頻度が減る。自然と、俺たちの活動場所は室内になる。
その日も朝から雨が降っていた。昼食の後、俺は1人で2階にある執務室に籠っていた。
元々ここは当主の仕事部屋だ。当主業の殆どを俊哉さんに委任しているとはいえ、多少なりともをやらなきゃいけない事がある俺は、ここを自然と使うようになった。ここにいる時は優梨たちも、遠慮して近づかねぇから有難い。
ただ、今日は当主業ではなく別の事を俺はしていた。執務机の上には古い本が何冊も積み上がっている。俺が手にしているのは、比較的新しい本だ。
「――慶人」
ノック音の後、俺が返事をすると誠史が入ってきた。
「優がもうすぐ夕飯だって」
「あぁ……」
返事をするが、俺の意識は目の前の本に向けられている。それに違和感を覚えたのか、誠史が珍しく近づいてきた。それから俺が持つ本に目を向けた。
「随分と古そうな本だね。他にも……これは古文書?」
一番古い本を見ながら誠史が聞く。確かに“古文書”と言っても相違はねぇな。
「……これは全部、俺の一族に伝わる本だ」
「えっ……?」
誠史は目を丸くして俺を見た。その顔には「聞いてはまずかったか」と書いてある。こいつがこんなに分かりやすい表情をするのも珍しいな。まぁ、俺が元の家の事を話すのは、誠史からしたら珍しいだろうな。
「正確には“歴代の天使”に伝わる本だ」
「歴代……?」
戸惑いを隠せねぇ誠史は俺を見つめた。俺は誠史が最初に見て古文書と称した本を手に取った。
「最初はこれだ。おそらく千年以上は前の物だが、正確な年代は分からねぇ」
「鑑定は……?」
「してみたが、幾重にも魔法がかけられているから、情報が膨大でな。断念した」
誠史は信じられない物を見るように俺の手にある本を見た。
「……中は、俺が聞いても良いのかい?」
「あぁ。……これを書いたのは当時の“天使”だ」
「…………」
「これを書いた目的は、次代に……自分より後に生まれるであろう“天使”に情報を与えるため。どんな力を持ち、誰と出会い、どんな目に遭わされ……自分がどう生きてきたのか、その全てを書いていた。そして、自分が死んだら“次代の天使”へ、そいつも死んだらまた次へ……。そうやって本の数を増やしながら、遠い昔から“今”へと繋げて、伝わり続けた」
一体どれほどの“天使”がこれを書き続けたんだろうな。所々年代が抜けている箇所もあった。だから、全員じゃねぇんだろうな。それでも、これだけの数が“俺”に伝わった。
「さっきも言ったが、この本全てに複雑な魔法が幾重も付与されている。分かっているのは、敵意を持った奴から破壊されねぇようになっている事。それから当代の天使が10歳になると現れるようになる事だ。仕組みは、俺にも分からねぇ」
おそらく何代にも渡って何度も重ね掛けされたんだろう。そのせいでかなり複雑で、再現は不可能と言わざるを得ない。似たような事はできるだろうが、全く同じにするのは無理だろうな。
誠史は呆然と俺と俺の持つ本を見つめていた。
「……っ、待って、慶人……。今の話、まるで“天使”が今までに何度も生まれていたように聞こえたけど……?」
「……天使だけじゃねぇよ。“お前たち”も何度も生まれているんだよ」
「なっ……」
「それだけじゃねぇ。“俺たち”は代を重ねるごとに力が増しているんだ。俺の推理と勘でしかねぇが、おそらくは大半のスキルとそのレベル、魔力を始めとした能力値、そしてもう1つの姿である種族……それら全てを受け継いで“転生”している」
俺の話を聞いた誠史はすっかり言葉を失った。そのまま執務室の来客用ソファに力なく腰を下ろした。
「慶人……。君の勘が外れる事がないのは分かっているんだけれど、それは確かなのかい?」
「…………」
「確かに、人間も魔物も他の種族も、みな等しく死んだらその魂は天に昇り、生命の女神によって新たな命として生まれ変わるとされている。でも、前世のスキルや能力値、ましてや種族が受け継がれるなんて聞いた事がない」
「俺だって最近まではそう思っていた。だが、これらの本を読み進めれば進めるほど、そうとしか思えねぇんだよ。どう考えても“俺たち”だけが違うんだ。……どこまでも、俺らは“異質”なんだよ」
そうハッキリ言うと、誠史は呆然と俺の顔を見つめた。しばらくして視線を逸らすと、そのままソファの背もたれに体を預け、天井を見つめていた。今の話を、こいつなりに整理しているんだろうな……。
「……俺にも“先代”がいたのかい?」
「……明確な“先代”かどうかは知らねぇが、数代前の“天使”が“悪魔”に出会っている。……他の奴らにも会っているようだな」
「そう……。他には、何が分かったんだい?」
こっちを見た誠史はいつもの落ち着きを取り戻していた。その切り替えの早さはさすがだな。
「そうだな……基本的には日記のような物だからな。どうも“天使”だけは“俺の一族”にずっと生まれ続けていた、という事はハッキリと分かった。だから、俺の一族の後ろ暗い歴史やら何やらが色々と知れたな」
「それは……君にとっては都合が良いのかな?」
「まぁな。……とても表に出せた話じゃねぇけどな」
多くは過去の事だ。だから、今の俺には関係ねぇ話が殆どだ。だが、今後の身の振り方については考えさせるものがあったからな。この辺りは俊哉さんと話した方が良いだろう。
「――とはいえ、他の種族については生まれ変わりの法則は特にねぇな。年代も生まれた国もバラバラな事が多い。ある意味、年代も生まれた場所もほぼ一緒の俺らが珍しいんだろうな。……それで、だ」
俺は1番新しいであろう本を指先で軽く叩いた。
「ここまでの話はあまり確実性がねぇ部分が多い。だが、1つだけ確かな事が分かった。……残りの仲間の事だ」
「残り……?」
俺は本から目を離し、誠史を見た。
「歴代の奴が会った仲間を総合して考えると……俺らの仲間があと1人いる」
「っ!?」
「やっと先代の分までを粗方読み終えた。その中に登場する仲間らしき種族は、天使を入れて11種族だ。俺らは今10人いる。つまり、残り1人だ。……最後の種族は、白い鳥の獣人だ」
誠史が息を呑むのが分かった。こいつがここまで驚くのは珍しいな。それほどの事であるのは確かだがな。
「……念のため聞くけど、それは確かな事?」
「あぁ。歴代が会ってきた中で俺らが見つけていねぇのは、その鳥人族だけだ」
俺は本を読みながら書き記していたメモを見る。つい先ほど「白い鳥の獣人」という字に大きく丸を書いたばかりだ。元々、歴代も中々会えねぇほど珍しいようだ。読み漏らしがなければ、本に記録されている回数も僅か3回だけだった。
「……慶人、この事を他のみんなには?」
「いや、言ってねぇ。そもそも確信できたのもついさっきだしな」
「そう……最後の仲間に関して、君はどう考えている?」
「さぁな、見当もつかねぇ。……そうであって欲しいと思う奴はいるけどな」
「……それは、紗奈かな?」
やはり分かっていたか……。
紗奈は俺たちとの共通点が多い。親はおらず、俺たちと同じ「特殊特待生」という制度を利用して学校に通っている。見た目も言ってはなんだが変わっている。優の話じゃ、俺らみたいにギルドに登録までしているようだからな。
それに、あいつは俺たちの見た目や評判に関わらず最初から普通に接してきた数少ない奴だ。優たちが気を許している数少ねぇ女子でもある。あいつが仲間だったら、優たちも喜ぶだろうな。
「――ぬか喜びはさせられねぇから、優たちには言うなよ」
「分かっているよ」
誠史がそう返事をするのと同時に、執務室の扉がノックされた。誠史は驚いたように扉を振り返り、俺は本とメモ書きをした紙を全て《無限収納》にしまった。それを確認してから誠史が扉の向こうに返事をする。顔を出したのは葵だった。
「2人ともどうしたの? みんなが待っているよ」
「あぁ、ごめんね、葵。今行くよ」
誠史はチラッと俺を見た。目を合わせ、俺も軽く頷いた。
「(話は聞かれていねぇようだな)」
その事に安堵し、俺たちは執務室を出た。
その後、俺と誠史は執務室では何もなかったかのように過ごした。当然、最後の仲間についても俺たちが話をする事はなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
事のきっかけは6月の中旬ごろの休みの日、私が1階のリビングルームのソファで何冊ものファイルを眺めていた事だ。ギルドから借りたその本を私は昼過ぎからずっと読んでいた。
ローテーブルを挟んだ向かいには玲もいた。同じように本を読んでいたんだけど、気にしていないのか特に声をかけてくる事はなかった。
もうすぐおやつ時という頃に、出掛けていたアオが帰ってきた。
「ただいまー」
「アオ、お帰りー。欲しいものはあった?」
学校で使うノートとペンが無くなったと言ってアオは買い物に出ていた。
「ちょっと探したけどあったよ。あと、帰りにケーキ屋さんでケーキも買ってきたよ。厨房の冷蔵庫にしまってあるからね」
「ありがとう! あとで食べるね」
「うん。……優、何を見ているの?」
私の側まで来たアオは首を傾げて聞いてきた。その視線は私の手元にあるファイルに向いている。
「あぁ、これ? 王都周辺のダンジョンの資料だよ」
「「ダンジョン?」」
さすがに玲も気になったのかアオと声が重なった。2人は一瞬目を合わせてから私を見た。
「何で?」
「ほら、あと1か月もすれば夏休みじゃない? 休みに入ってしばらくはみんな倶楽部とか大会とかあるけど、7月末からは特に何もないじゃない? だから何かしたいなぁって思って」
「でも、どうしてダンジョンなの?」
「えっとね、理由はいくつかあるんだけど……まず、冒険者ギルドのランク、17歳になればEランクに上がる年齢制限が解除じゃない? でも、もう1つの条件になっている依頼数は満たしていないから、この休み中にできるだけやりたいなぁって思って……。それから、色々素材が欲しいなって。ダンジョン産の美味しい食材も欲しいし。あと、さすがにちょっとは実践積まないと腕が鈍りそうで……ダンジョンなら危険区域に行くよりは色々と都合が良いかなって思って」
「確かに……」
私たちは全員、持っているスキルのレベル的にかなり高ランクでもおかしくはないんだと思う。でも、ギルドの規則で未成年の内はランク上げに年齢制限がある。今の私たちのランクは下から2番目のFランクだ。だから、中級以上の危険区域やダンジョンには入れないんだ。
ただし、ダンジョンの中には階層ごとに難易度が変化するところが多いの。上の階層では初級向けでも下に行けば行くほど難易度が上がって、高ランク向けになったりする。そして、階層を進むかどうかはすべて自己責任だ。一応ランクごとの推奨はしているけど、ダンジョン内でそれを規制するのは難しいからね。今までにも浅い階層を探索するふりして中級以上の階層に行った事があるんだよね、実は。
それでできたらそんな風に階層ごとに難易度が変化するようなダンジョンを探している。
「――ちなみに、王都周辺で探しているのは?」
隣に座ったアオがファイルを覗き込みながら聞いてきた。
「王都にすぐ近いダンジョンはいつも行っているから、たまには違う所が良いと思って……。とは言っても、遠い所は長距離魔導列車とかの手続きが面倒だし、そもそも行くだけでかなり時間がかかりそうだから、夏休み中は難しいかなって……。だから、王都から2~3日以内で行けて移動の手続きとかも簡単な所を、ギルドに紹介してもらったの。それで、このファイルね」
「なるほどね。……折角なら、海とか行ってみたいなぁ」
「海かぁ……」
この世界には一応娯楽の1つとして海水浴が存在する。ただし、自由に泳ぎ回れるような場所はかなり限られていて、当然観光地だし行くのにも色々手続きと予約が必要な上に費用がかなり高くなる。だから、実は富裕層向けの贅沢な遊びだったりする。
ちなみにプールは存在するから、一般人はそこで遊んだり泳ぎを学んだりしているんだ。貴族とかの豪邸だとプライベートプールがあるから、それもまた贅沢だよね。……この家の地下にも屋内プールがあるけどね……私はそこで泳ぎを覚えたよ。
そういう訳で、海水浴というか海で遊ぶのって結構憧れる人が多いんだけど、アオもそんな感じかな? 海に近いダンジョンってさっきザッと見た時にあったような……。
「あっ、ここが良さそう」
数ページ進んだところでそう声を上げるとアオはファイルを見た。同時にアオとは反対の隣に座っていた玲もファイルを覗き込んでいる。いつの間に移動したの?
「……双子島?」
首を傾げながらアオが場所の名前を呟いた。それに反応したのは玲だ。
「東慶港から魔導船で半日ほどの場所にある島で、双子のように2つの丸い島がくっついているから、そのような名になったらしい」
「さすが玲だね。それで、東側の島はダンジョンがあるから冒険者向けの施設ばかりだけど、西側の島は観光地兼別荘地になっているみたいだよ。それからダンジョンは『陸ダンジョン』と『海ダンジョン』の2つがあるんだって」
ダンジョンは基本的に地名がそのままダンジョンの名前になるんだけど、時には特色によって地名以外の名前が付く事もある。例えば、肉がよく採れるなら「肉ダンジョン」、薬草なら「薬草ダンジョン」、鉱石なら「鉱石ダンジョン」って言う感じでね。
他にもフィールドタイプで、沼ばかりあるから「沼ダンジョン」、中が遺跡みたいだから「遺跡ダンジョン」って呼ばれたりしている。基本は洞窟タイプか、遺跡とは違う石壁と石畳の通路に魔物が湧く小部屋がある通路タイプかな。
双子島のダンジョンは、2階層から陸地の魔物ばかり出るから「陸ダンジョン」、同じく2階層から海や海周辺にいる魔物ばかり出るから「海ダンジョン」って言うんだって。どうやら1階層は石畳の通路タイプだけど、2階層以降は草原とかの陸地か海になるフィールドタイプみたいだね。
「双子島は離島だから、東側にギルドが経営する宿泊施設もあるみたいだな。大人数のパーティーも歓迎とある。それにどうやら、この島の観光は海水浴で有名みたいだ」
「「…………」」
私とアオはジッとお互いに見つめ合った。多分思っている事は同じだと思う。それを玲も分かっていながら私たちが言い出すのを待っている気がする。私とアオは頷き合うと、玲の方を向いた。
「ねぇ、玲。せっかくだから、みんなで行かない?」
「やっぱりか……」
私のセリフに玲は苦笑しながらそう言った。
「俺は構わないが、まずはみんなにも確認してからじゃないか?」
「それはもちろん。今日の夕飯の時に聞くね」
とりあえず説得するのに手強そうなのは、やっぱり慶人と匡利かな。誠史はアオが行きたがっているから反対しないだろうし、朔夜はきっと玲と同じ意見だと思う。後は雅樹だけど、慶人を説得できれば反対しない気がする。
「ねぇ、優。紗奈ちゃんもどうかな?」
「紗奈ちゃん?」
「うん。確か紗奈ちゃんって冒険者ギルドに登録しているんでしょう? それなら、せっかくだから誘いたいなって思うんだけど」
「そうだなぁ……満月になる前に帰って来て、スキルに関しては使いすぎなければ大丈夫な気もするし……。うん、そうだね。紗奈ちゃんも誘おうか」
とりあえず、紗奈ちゃんには明日学校で会った時に話そう。こういう時にメールができれば、もっと連絡も簡単なんだけどな……。通信機は持っているけれど紗奈ちゃんも持っているか分からないし、そもそも高くて中々一般には出回っていない物だしね……。
この日の夕飯時、私とアオは早速ダンジョンの事を他のみんなにも話した。
「――双子島のダンジョンだと?」
「そう! 東側の島にダンジョンがあるんだけど、西側の方は観光地で海水浴ができるんだよ」
アオがそう言うと、慶人は発端になった私の方を見る。
「何でまたそんな所なんだ」
私はアオと玲にしたのと同じ説明をした。
「――私がダンジョンを調べていたのはそんな理由だよ」
「なるほどな……」
「まぁあとは、みんなと何処かに遠出する機会なんてそうそうないし、折角なら観光とかもしたいし……。海に行きたいって希望はアオからだけど、ここならそれもできそうだから良いなって思って」
「日程はどうするんだ」
「7月の末に出発して移動で往復2日、双子島に10泊11日の2週間弱はどうかなって。それならダンジョン攻略にも良さそうだし、観光する時間も取れそうでしょ。あと、それくらいだったら満月にも被らないかなって」
この日程に関して考えてくれたのは玲なんだけどね。
「あとはみんなの返事を聞くだけなの。どうかな?」
アオがそう聞くと、みんなは互いに顔を見合わせた。
「私は行きたい、かな」
おずおずと言ってきたのはサオだ。うん、サオなら賛成すると思っていたよ。
「俺は構わないとすでに返事をしている」
「玲に異論がないなら、俺も同意見だ」
玲に続いて朔夜もそう言う。仲いいよね、この2人。
「私は慶人の決定に任せるわ」
佳穂は慶人次第か……。でもちょっと行きたそうな雰囲気だなぁ。
「俺は良いと思うよ」
誠史はやっぱり反対しなかった。アオが行きたがっているのに反対なんてできないよね。誠史の答えにアオも嬉しそうにしている。
あとは慶人と匡利と雅樹か……。雅樹はなんだか気乗りしなさそうだし、慶人も匡利も表情が渋い……。まぁ、みんなで遠出って初めての話だから慎重にはなるよね。
「――あっ。そういえば、紗奈ちゃんも誘うつもりなんだけど」
「……紗奈?」
あら、雅樹が反応した。やっぱり最近の雅樹、ちょっと紗奈ちゃんを気にしているよね。4月の模試の後にお出掛け行ってから、たまーに誘ってどこか行っているみたいだし。雅樹にしては珍しいと思っていたんだよね。
「……何でまた紗奈を誘うんだ?」
そう聞いたのは慶人だ。
「単純に一緒に行きたいなって思って。紗奈ちゃんも冒険者ギルドに入っているし、行くのには問題ないかなって。スキルに関してはまぁ、使い過ぎなきゃ大丈夫じゃない?」
……うん、慶人がメチャクチャ呆れた顔をしてるね。分かってるよ、説得力皆無なのは……。でも、一緒に行きたいんだからしょうがないじゃない?
そんな気持ちを込めて慶人を見つめたら盛大なため息を吐かれた。
「ま、まぁどっちにしてもまだ返事がないから確定じゃないんだけどね。でも、良い返事はもらえると思うよ」
「……行っても良い」
そんな声が聞こえて雅樹の方を見ると、そっぽを向かれた。でも、銀色の髪の間から見える耳がちょっと赤かった。これは照れているね。紗奈ちゃんの事が気になっているの、確定かな? そう思ってついニヤニヤと笑いながら雅樹を見つめた。
ここまで意見が出ると、さすがの慶人も反対できないのか渋々とだけどこの提案を了承した。慶人が承諾するならと、匡利からも良い返事がもらえた。
「では、日程の調整と手続きは俺と朔夜でやろう。優、提案者なんだからお前も手伝え」
「了解!」
玲と朔夜が中心にやってくれるなら確実だよね。楽しみだなぁ。後は紗奈ちゃんだけだね。
翌日、紗奈ちゃんに話すと最初は驚いていたけど、ぜひ一緒に行きたいと返事がもらえた。その事を伝えると、みんなも嬉しそうにしていた。
その後は朔夜と玲の2人と一緒にきちんと満月の日を調べて、行き帰りの交通手段の手配、ギルドの手続き、宿泊施設の事前予約なんかを進めた。同時に双子島のダンジョンについてもうちょっと調べて、ダンジョン攻略と観光の日程も考えた。粗方決まった後に慶人にも話して承諾をもらったのは7月に入ってのすぐだ。
あとは、出発当日まで必要な物を揃えて荷物をまとめるだけだ。本当に楽しみだなぁ。
でも、この双子島に行く計画をきっかけに“あんな事”が起こる事を、この時の私たちは知る由もなかった…………。
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