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93.闇夜月夜暗闇に、一人呟く吸血少女

 真っ暗な部屋。光一つない暗い部屋。その部屋の右に置かれたふかふかベッド。その上に、小さな人影が一つ。

「……むむぅ」

 少女。人形のように小さな少女は、ベッドの上で足をパタパタとさせながら天井を見上げる。

 はぁ、と小さくため息。少女はそのまま力無さ気にベッドに倒れ、もう一度ため息。

「……近づいて来ている気がするな。何故だ? どうやって私の居場所に気づいた?」

 だるそうに、つまならなそうに、面倒くさそうに。少女は呟く。

「私の気のせいならばいいのだが……しかし、彼女の気配を私が間違えるだろうか? 半パイア状態が故、普段よりも能力が上がっているにも関わらず」

 そしてゆっくりと立ち上がると「んーっ」と可愛らしい声を出しながら、身体全体を伸ばした。

 全身に込められた力を一気に抜き、少女はふぅと息を吐く。と同時に、部屋の扉が開けられその直後、照明が付けられ真っ暗な部屋は明るい部屋へと変わった。

 扉を開けた銀髪赤眼美少女──愛作エイジは、ベッドの上に座っている少女に気づき、彼女を目を細めながら見つめる。

「暗い部屋で一人で、何してんだよクティラ」

「む? エイジか」

 少女は少し驚いたように、されど特に動揺した様子は見せず、落ち着いた声で銀髪赤眼美少女の名前を呼ぶ。

 そのままぴょんっとベッドから飛び降り空に浮かび、ふよふよと空を浮きながらエイジの元へと向かう。

 ちょこんっと。少しあざとく、可愛らしく。エイジの肩の上で女の子座りをする少女。

 ジッとエイジを見つめながら、口角を上げニヤつき、少女はドヤ顔を披露する。

「ふふふ……伏線張り、だ」

「また漫画とラノベの話か? 好きだなお前……」

「エイジほどではないぞ? 本棚一つ漫画で埋まっている部屋は私、エイジの部屋で初めて見た」

「それそんな珍しいことかな……」

 と、言いながら。エイジは部屋を出るために移動する。

 少女はそれに反抗することなく、そのまま大人しく肩の上に座ったまま、エイジの頬を突きながら彼に話しかける。

「ところでエイジ。あの激うまチャーハン、リシアお姉ちゃんの反応はどうだったのだ?」

「……あー……」

「……もしや、味のバランスがぐちゃぐちゃだったのが──」

「──勘のいい吸血鬼は嫌いだよ」

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