91.銀髪赤眼美少女お兄ちゃんのお料理地獄!!
「エイジと!」
「クティラ・ウェイト・ギルマン・マーシュ・エリオット・スマス・イン・ヤラ・イププトの!」
「これぞ飯! これぞ食事! 究極無敵のつよつよお料理教室!」
「だ!」
「……お兄ちゃん、クティラちゃん。何なのそのノリ、何なのそのポーズ」
ビシッとバシッと綺麗に華麗にポーズを決めた僕たちを見て、サラが呆れ気味にそう言う。
わかっていない。全くわかっていない。サラはこのカッコよさをまるでわかっていない。
ので。僕は彼女をバカにする気満々で、鼻で笑って見せた。
「……うざ」
ちなみにリシアは不在。何故ならお風呂に入っているから。
とりあえず、蔑むような目で僕らを見ているサラを放っておいて、僕はリシアたちの買ってきた食材と調味料を並べた。
「さてさてエイジ先生? 今日はどんな料理を作るんだ?」
「くくく……よく聞いてくれたクティラ。もちろん無論僕の得意料理! チャーハンだッ!」
「……言っておくけど、わーとかキャーとか、言わないからね私」
僕はまず肉を手に取り、ラップを千切りパックからまな板に出す。
そして少しカッコつけながら、包丁を手に取り大雑把に切っていく。
「これくらいでいいな……肉はデカい方がいい。デカければデカいほど、な」
「うむ! それには私も同感だ!」
そして僕はその場にしゃがみ込み、棚を開け中に入っているごま油を手にとる。
次に別の棚からデカい中華鍋を取り出す。親父が買ってきたのに僕しか使っていない実質僕専用の中華鍋だ。
ドンとわざと音を立てながら中華鍋を置き、そこへ蓋を開け傾けごま油を投入。多すぎかも、と言うくらいがちょうどいいのでそれくらい引く
「うわ……!? ちょっと多すぎない!?」
サラが量に驚き、悲鳴にも似た甲高い声で叫ぶ。と言うことは、これくらいがベストだ。
「クティラ! 肉を入れろ!」
「よし任せろッ!」
「次はねぎだ! そのパックを開けて投入!」
「了解だッ!」
「水につけておいた乾燥ガーリックも出せ!」
「承知したッ!」
「そしてこのヘラでテキトーに混ぜろ!」
「任せておけッ!」
「その間に僕は……!」
くるりとその場で一回転し、僕は華麗に冷蔵庫を開ける。
そこから卵を五つ取り出し、バンっと強めに冷蔵庫を閉め、再び足を軸に回転。
それと同時に卵にヒビを入れ、事前に用意しておいたご飯の入ったボウルの上で、順に卵を割っていき中身をボウルに投入。
ポイポイっと卵の殻を百発百中でゴミ箱に入れながら、僕は菜箸を手に取り──
「……行くぞッ!」
菜箸を指で二、三回回転させてから、僕はそれを使って卵とご飯を混ぜ始めた。
そして出来上がるは卵かけご飯もどき。それが入ったボウルを両手で持ち、クティラもとい中華鍋の元へと向かう。
「どけクティラ! あとは僕が! 僕が……やるッ!」
「待っていたぞエイジ……! この私に時間稼ぎをさせたのだ、バッチシキッチリ決めるのだぞ!」
「ねえ、だから何なのそのノリ。何と戦ってるの?」
クティラの意思を受け継ぎ、彼女の言葉を心に刻み、僕はボウルを構える。
次の瞬間。ボウルは傾き、中身を勢いよく中華鍋へとぶちまけた。
「クティラ! これを!」
叫ぶと同時に僕はボウルを投げ、クティラにそれをパスする。
「あぎゃあ!?」
「うわ!? クティラちゃんミスった! 大丈夫? 頭痛くない?」
「も……無問題だ……!」
「嘘だよ、おでこ真っ赤だよ? もうお兄ちゃん! ちゃんと気をつけてよね!」
「……ごめんなさい」
ジッと僕を睨みつけてくるサラに、僕は逆らわず大人しく頭を下げる。
確かに、投げるのはやりすぎたと反省。
まあでもクティラは吸血鬼だし大丈夫だろう。そう思い込み、僕はヘラを手に取り構えた。
慣れた手つきで、いつもの手つきで、僕は具材と米を混ぜていく。
「クティラ! アレを頼む!」
「貴様御所望のものはこれだろう? 受け取れエイジ!」
と、さっきの仕返しと言わんばかりに。クティラは僕の頼んだものを投げつけてくる。
それを僕は片手でキャッチ。完全一心同体状態のおかげで身体能力が上がっているから出来た芸当。初めてこの姿になって良かったと思えたかも。
僕は受け取ったもの、焼肉のタレの蓋を開ける。
そのまま一気に、それを中華鍋へとぶちまけた。
「うわぁ……」
サラのドン引きする声が聞こえる。けれど気にしない。
僕の使った焼肉のタレのおかげで甘い匂いがキッチンに広がり始めた。これは、美味いものを作る時の匂いだ。
次に僕は塩胡椒を取り、それの蓋を開け焼肉のタレよろしくぶちまけた。
ちょっとかけすぎかも。それくらいが、塩胡椒はちょうどいい。
「うおおおおお! 美味そうではないかエイジ! 匂いが! 匂いがいいぞエイジ!」
「だろう……!」
「……確かに匂いはいいけどさ」
どれくらい炒めればいいのかは正直わからないので、テキトーに混ぜて炒め続ける。
米に焦げがつき始めたら完成だ。それが見えたので、僕は勢いよく火を止める。
「刮目しろ! しかと見ろ! これが今日の僕のチャーハンだ!」
「ウィズクティラ! ウィズクティラだぞ!」
僕とクティラは同じポーズで、同じドヤ顔で、サラにチャーハンを自信満々に見せつけた。
あまりの美味しそう感にサラも固まってしまっている。我ながら才能がありすぎて恐ろしい。
「へー……すごいね」
と、サラは感情のこもっていない賞賛を声に出しながら、テキトーな感じで拍手をしてきた。
確かに見た目は普通かもしれない。けれどこれはビックリするほど美味しいのだ。
──多分。
サラとリシアの、食べた時の反応が楽しみだ。




