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88.妹待たせの帰り道

「あー食べた食べた! 私もうお腹いっぱいだよ!」

「夜ご飯どうするの? もう……一応伝えておかないと」

「クティラちゃんは大丈夫なの?」

「うむ、無問題だ」

 食事を終えた私たちは、四人で並びながら帰り道を歩いていた。

 ちゃんと誤解を解いたおかげか、ラルカも機嫌が直ってるし、私は改めて安堵する。

「あ、じゃあ私たちこっちだから。また月曜日ね。リシアちゃん、クティラちゃん」

 と、分かれ道でアムルちゃんが急停止。ニコニコ笑みを浮かべながら、右を指差している。

「ん、またねアムルちゃん、ラルカ」

 私は彼女の目を見ながら、意識して笑みを浮かべながら手を振る。

「またね、だ。アーちゃん。それからラルカ」

 するとクティラちゃんも私の真似をしてか、手を振りながらアムルちゃんに別れを告げた。何故かドヤ顔で。

「アーちゃん言うなし」

 ペチっとクティラちゃんの頭を叩いてから、アムルちゃんは手を振りながら私たちに背を向ける。

 ラルカは特になにも言わずに、ただ笑顔を浮かべながら手を振り、アムルちゃんよろしくサッと私たちに背を向け、アムルちゃんと共に去っていく。

「楽しかったな、リシアお姉ちゃん」

 と、私の横に並び立つクティラちゃんが、レジ袋を両手で持ちながら、私の目を見ながら言った。

 私はなにも言わずに静かに頷く。確かに楽しかった。楽しかったんだけど──

 さっきチラッと見たスマホの画面を私は思い出す。サラちゃんから結構な数の通知が届いていたあの画面を。

「サラちゃん……心配してるかな」

「サラも来ればよかったのにな」

 家に帰ったら──じゃなくて、エイジの家に着いたら、また一悶着ありそうで少し怖い。サラちゃんやっぱり怒ってるかな?

「……リシアお姉ちゃん。すまないのだが」

 と、クティラちゃんが珍しく眉を顰め、申し訳なさそうに私に話しかけてくる。

 それと同時に彼女は、持っているレジ袋を差し出してきた。

「流石にもう限界でな……変身魔法の副作用に耐えるのが」

「え? あー……そういえばなんか言ってたね」

「リシアお姉ちゃんが聞いてきたのに忘れていたのか……」

 そういえば、なんか、変身魔法を使っている間はお手洗いを我慢している時と同じ苦しみが副作用で起きる、とか何とか言っていた。

 ていうかクティラちゃんが変身魔法を使っているのを忘れていた。彼女は確か今、エイジと完全一心同体状態なので、本来の姿はミニクティラちゃんなのだ。

 私は差し出されたレジ袋を片手で受け取る。と同時に、クティラちゃんは大きくため息をつき、ポンっと音を鳴らしながら煙を出しながら、一瞬でミニクティラちゃんへと戻った。

 空に浮いたまま移動するクティラちゃん。ふよふよと力なさげにこちらに飛んできて、私の肩に着くとそこによじ登り、ちょこんっと可愛らしく座った。

「よし! ゴーゴーだ! リシアお姉ちゃん!」

「んっ。行こっか、クティラちゃん」

 改めて、右に持つレジ袋と左に持つエコバッグを持ち直し、歩き始めた。

 クティラちゃんが落ちないように、一応意識しながら。

「なあなあリシアお姉ちゃん」

 と、クティラちゃんが私のほっぺを突きながら話しかけてくる。

 私は思わず首を傾げながら、彼女の方を見た。

「どうしたの?」

「……やっぱり私、お腹いっぱいかもしれん」

 真面目な顔で、真剣な顔で、クティラちゃんがふざけたことを言う。

 ので、私は思わず軽く吹き出してしまった。

「あー! 笑ったなリシアお姉ちゃん!」

「あはは……ごめんごめん。もうっ、だから言ったのに」

 頬を膨らませながら怒るクティラちゃんを、私は頭を撫でて鎮めようとする。

 それでも尚怒りの表情を浮かべながら、クティラちゃんは私の頬をプニプニと突いてくる。

 私も負けじと彼女の頭を激しく撫でる。すると対抗心を燃やしたのか、クティラちゃんの頬を突くスピードが速くなってきた。

 痛い。微妙に痛い。歯と歯の間にほっぺのお肉が入ったり出たりを繰り返している。

「……ふぅ」

 と、突きつかれたのか。クティラちゃんがため息をつきながらその場に座る。

 私は私の勝ちを証明しアピールするために、突き終え座った彼女の頭を撫で続ける。

「……もうよくないか?」

「……ん? うん、そうだね」

 流石に呆れられたのか。呆れた顔で私を見てため息をつくクティラちゃん。

 ので、私はそんな彼女の期待に応えるべく、手のひらを彼女の頭から離した。

「なあリシアお姉ちゃん」

 と、クティラちゃんが何故か立ち上がりながら話しかけてくる。

 私は視線だけ合わせて、申し訳程度に首を傾げる。すると彼女はやけに真剣な顔で、ゆっくりと口を開いた。

「私、リシアお姉ちゃんのこと大好きだぞ。友人としてな」

 突然の告白をしてくるクティラちゃん。私はどう答えればいいのか分からず、一瞬止まってしまう。

 けど、ここは自分の素直な気持ちを伝えるべきだと、すぐに察した。

「……私もクティラちゃんのこと、好きだよ?」

「うむ! それが聞けてよかった! 今日のお使いを通してリシアお姉ちゃんと仲良くなれたと私は思っていたからな! 独りよがりの自己満足でなくて何よりだ!」

「……そ」

 クティラちゃんって時折、ちょっと恥ずかしいこと言うなあ。

 そう思いながら、私はなんとなく空を見上げ、手で口を隠しながら小さくあくびをした。

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