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67.あまりにも無意味で平凡な深夜の出来事

「……ふわ……ん……はれ……?」

 夜中に私、愛作サラは何故か目が覚めた。

 眩しい。部屋の電気がつけっぱなしだ。目が痛い。

 あと、なんだかとてもいい匂いがする。嗅いでいて安心する、嗅ぎ心地の良い甘い匂い。

「……すん……あ……リシアお姉ちゃんか……」

 ぼやけた目で、辿々しい手で、リシアちゃんを見て触れて、確かに彼女だと確認する。

 徐々に開く瞼。視界を捉える両目。ハッキリとしてくる意識。

 手が触れているのは柔らかい感触。きっとリシアお姉ちゃんの胸かお腹か腰かお尻。多分、お尻。

 私はそれから手を離して、ゆっくりと起き上がった。

「……座りながら寝てる」

 すぅ、すぅ、と。小さな寝息を立てながら、胡座をしたまま寝ているリシアお姉ちゃん。

 その上にはクティラちゃんが溶けるようにリシアお姉ちゃんに身を任せ、幸せそうに寝ている。

「……いいなークティラちゃん」

 ふわぁ、と声が聞こえない程度に大きなあくびをして、私はゆっくりと立ち上がる。

 ベッドから降りて、部屋を歩いて、電気を消して一息つく。

「……喉乾いた」

 気持ち良さげに寝ている二人を起こさないように、ゆっくりと扉を開けて、私は廊下へと出る。

 きっとお兄ちゃんも寝ている。そう推測し、彼を起こさないよう静かに廊下を歩く。

 真っ直ぐに向かうはリビング。その奥にある冷蔵庫。

 コップを手に取り冷蔵庫の扉を開け、中からお茶を取り出しテーブルへと向かう。

 と、その時だった。私以外の足音が、廊下から聞こえてきた。

 誰か起きたのかな? それとも不審者? 私は思わず身構える。

「……ん? なんだ、サラか」

 目を擦りながら、あくびをしながら現れたのはお兄ちゃんだった。

 いつもより覇気のない声で、小さな声で、彼は私の名を呼ぶ。

「お兄ちゃん……起きたの? それとも起きてたの?」

 私は首を傾げながら問いかける。別にどっちでもいいけど、なんとなく会話を続けるために問いかける。

「前者だよ……お前は?」

「私も同じー」

 もしかして私が起こしちゃったのかな? そう思うと少し申し訳なくなる。

 それを口に、声には出さなけれど。

「あ、僕のコップも取ってくれる」

「えー? 仕方ないなぁ……」

 私はため息をつきながらお兄ちゃんのコップを手に取り、いっぱいになった荷物を落とさないよう慎重に進み、テーブルへと向かいその上に手に持つそれらを置く。

「リシアとクティラは?」

 お茶の入ったコップを手に取りながら、お兄ちゃんが私を一瞥もせずに話しかけてくる。

 私もそんな彼を一目を見ずに、彼と同じようにお茶を手に取りながら問いに答える。

「二人とも寝てるよ?」

「そっか……サラも早く寝るんだぞ、明日は学校あるんだから」

「それ……お兄ちゃんもだからね」

 トンっと、少し音を立てながらコップを机の上に置くお兄ちゃん。

「んじゃあな……」

 と言いながら、手を振りながら、お兄ちゃんは私に背を向けリビングを後にした。

「……バカお兄ちゃん。コップちゃんと戻しなよ」

 お兄ちゃんには聞こえないように、小さな声で私は呟いた。

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