60.帰路での他愛ない会話
「ねえねえクティラちゃんクティラちゃん、初めての学校どうだった?」
「中々面白かったぞ。授業は全然面白くなかったがな」
「クティラちゃん寝てたもんね……」
「なんかいいなぁ……お兄ちゃんもリシアお姉ちゃんもクティラちゃんも同じクラスで楽しそう……しかもラルカの妹さんも同クラなんでしょ? 私だけクラスどころか学年も違うし……昨日のお出かけについて行けなかったし……ハブられがちじゃない? なんか」
「ならば、私が催眠を使ってサラも同じクラスにしてやろうか?」
「え? そんなことできるの?」
「うむ! やろうと思えばちょちょいのちょいだッ!」
「ヴァンパイアすっご……」
「絶対辞めろよ? 面倒くさくなるからな」
「お兄ちゃんの意地悪……でも確かに、楽しいより面倒が勝ちそうだよねぇ……はぁ……私って不幸な女」
「サラちゃんが同じクラスかぁ……ちょっと楽しそう」
「一日くらいいいんじゃないか? エイジ」
「まあ一日くらいは……だからといって明日やる、とかはやめろよ? ちゃんとみんなで考えて辻褄合うようにしてからだ。クティラの独断専行で今日はものすごい面倒くさかったんだからな」
「……いざとなれば記憶を消したり増やしたりしてイジればなんとかなるだろう。多少後遺症は出るかもだが」
「そんなことしたらリシアに退治してもらうからな、バカ吸血鬼」
「むぅ……! バカ吸血鬼言うな言ってるだろうがエイジ!」
「バカはバカだ! バーカ!」
「ぐぬぬぅ……! リシアお姉ちゃん何か言ってやってくれ!」
「わっ!? きゅ、急に抱きつかないで……!」
「リシアお姉ちゃん言っちゃえー!」
「サラちゃんまでぎゅっ!? あぅ……えっと……えと……」
「ゴーゴーだ! リシアお姉ちゃん!」
「やっちゃえリシアお姉ちゃん!」
「……エ、エイジ! あんまりクティラちゃんをいじめるのは……えっと……やめよ?」
「リシア……大変だな」
「うぅ……同情されたぁ……」
「……あ、リシアお姉ちゃん。ここって……」
「へ……? あ、もう別れ道……」
「む? リシアお姉ちゃんもう行ってしまうのか?」
「んー……明日は金曜日だから学校もあるし……」
「泊まればいいじゃんリシアお姉ちゃん。パジャマなら私の貸すし、下着も未使用のあるよ?」
「そうだぞリシアお姉ちゃん、泊まれ泊まれ。昨日はいなくて寂しかったからな」
「でもエイジが……」
「僕はリシアがいいなら別にいいけど……」
「え……! そ、そう? じゃあ泊まっちゃおうかな……えへへっ」
「そういえばエイジ、今日の夜ご飯は何だ? 今日の当番はお前なのだろう?」
「気になるか? ならば教えてやる……! 僕特性ウルトラチャーハンだ!」
「えぇ……お兄ちゃんまたチャーハン? チャーハンしか作んなくない? お兄ちゃん」
「でも美味しいんだからいいだろ?」
「味濃いだけな気がするけど……」
「濃ければ美味いんだよ。わかってないな、サラは」
「……バカ舌お兄ちゃん」
「あ、じゃあ……わ、私が作ろうかな……泊めてもらうし」
「リシアが? 作りたいならまあいいけど……」
「はいはーい! 私はリシアお姉ちゃんがいい!」
「うむ! 私もリシアお姉ちゃんの料理、食べてみたいぞ!」
「リシアなら凄い美味しいもの作ってくれそうだな」
「わ……期待が高まってる……うぅ……言わなきゃよかったかも……」
「そうと決まったら早く帰ろ! リシアお姉ちゃんの夜ご飯楽しみ!」
「そうだな! 走って帰るぞサラ!」
「オッケークティラちゃん! 誰が一番最初に辿り着くか勝負勝負!」
「ふはははは! 忘れられているかもしれないが私はヴァンパイアだぞ! 人間なぞに負けるかッ! 生まれ持っての能力が違うのだ!」
「人間だって凄いんだから! 身体構造の性能で勝ち負けが決まるわけじゃないよ! それに、バケモノを倒すのはいつだって人間だって旦那が言ってたもん!」
「サラにそんな強い心があるとは思えんがな! お先ッ!」
「あ! ズルいクティラちゃん! 待てええええ!」
「……二人とも行っちゃったね、エイジ」
「ああ……全く、あの二人は」
「元気でいいと思うな私は……えへへ……」
「まあ……元気無いよりはな」
「私も走ろうかな……よっ……よっ……」
「リシアも? じゃあ僕も走ろうかな……」
「私、足にはちょっと自信あるんだぁ……! よーいドン……!」
「うわっ!? は、はやっ!?」
「待っててねサラちゃんクティラちゃん……!」
「……僕は歩いて帰ろ」




