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298.準備万端……かな?

(こ……、この服でいいのか? 大丈夫か? 変に見えないか? 平気か? リシアに恥ずかしい思いさせないか? 無難か? オシャレか? ダサいのか? どれだ? どう見えるんだ?)

「……お姉ちゃん。エイジお兄ちゃん、めちゃくちゃ悩んでるよ」

「うむ、滑稽だな」

 銀髪赤眼美少女姉妹の批評を聞きながら僕は、洗面所の鏡を観ながら首を傾げながら、自分の着ている服をチェックしていた。

 派手な柄でも無いし、何かのブランドでもない。安い服が売っている場所でテキトーに買った服。良いのか悪いのか、ファッションの知識がない僕には全くわからない。

 とりあえずダサくはないと思うけれど、リシアから見たらどう映るのかはわからない。このままだと一生悩みそうだ。

「はいはーい! エイジお兄ちゃん! 私はそれで良いと思いまーす!」

「うむ、成功も失敗もしていない、安心安全なコーディネートだと思うぞ」

「……ていうか二人とも、何で僕の準備を見てるんだ?」

「暇だから!」

「ティアラと同文、だ」

「……そうかよ」

 とりあえず、銀髪赤眼美少女姉妹が無難だと言うのならば、きっとこの服装は無難なのだろう。人一人の意見だとわからないが、二人から同じ意見、僕のも合わせれば三人が無難だと評しているのだ。だからきっとこの服装は、無難だ。

(リシアは……どんな服を着てくるんだろ……)

 デートをする相手、幼馴染のリシアは今、自宅にサラと共に戻り、着替えているらしい。

 リシアはきっと、僕よりはセンスがあるんだから、どうせならサラが僕のコーデを担当してくれればよかったのにな、と思う。

「あ、エイジお兄ちゃんエイジお兄ちゃん」

 と。突然、ティアラちゃんが服の裾を引っ張りながら、僕の名前を二度呼んだ。

 振り返ると後ろに居たのは当然ティアラちゃん。僕より背が小さいから、見上げるようにして僕を見つめている。

「どうしたの? ティアラちゃん」

 僕が問うと、ティアラちゃんは僕を見つめたまま、勢いよく背後をビシッと、人差し指で指した。

「今ね、音が聞こえたの、ピンポーンって。リシアお姉さん達が帰ってきたんじゃないのかな?」

「マジか……クティラ、聞こえたか?」

「当然だ」

「……じゃあ言ってくれよ」

「ふふふ……ティアラが言いたそうにしていたのでな、私は黙っていた」

 不敵に笑うクティラはとりあえず無視して、僕は急いで鏡を見直し、最低限、いや最適解に身だしなみを整える。

 髪のボサボサ、服のシワ、その辺もしっかりと綺麗にする。

 そして僕は、急いで洗面所を出て、真っ直ぐに玄関へと向かった。

 胸の高鳴りが止まらない。緊張が走り続ける。始まってもいないのに脂汗が頬に滴る。

 僕だけが緊張しているのか、リシアも緊張しているのか、それはわからない。

 だけど少なくとも、いつものお出かけとは違う。僕の気合いの入れようと、リシアの気合いの入れようが。

「何をそんなに緊張しているエイジ。リシアお姉ちゃんとは何度も遊びに行った仲だろう?」

「いや……それはそうなんだけどさ……」

 後ろから話しかけてくるクティラに僕は、視線を向けずに背を向けたまま、会話を続ける。

 クティラの言う通りだ。僕とリシアは何度も二人っきりで遊びに行ったことがある。それこそ小学生の頃から、数えきれないほどに。

 だけど今日のお出かけは違う。リシアが明確に、ハッキリと、僕をデートに誘ってくれたからだ。いつもなら遊びに行こうと誘って来る彼女が、デートに行こうと言ったのだ。

 だからこれはデートだ。ちゃんとしたデート、そう、デートなんだ。

 そんな事を考えていたらいつの間にか着いた玄関。固唾を飲んで僕はドアノブに手をかけ、ゆっくりと扉を開く。

 すると目の前に現れたのは、見覚えのある顔、ありすぎる彼女、幼馴染のリシアだった。

 心なしか普段よりも顔が可愛らしく、大人っぽい印象も少し受ける。

 服装は黒い袖、胸元が白い布地で真ん中に大きめの黒リボンが付いていて、スカートは薄灰色の無地。腰には目立たないがスカートよりもほんの少し濃い黒色のそれが巻かれており、首元には白いフリルの付いた黒いチョーカーを着けている。

 いつも通りの、リシア自慢のポニーテールの根本には白いリボンが付いており、普段よりもポニーテールを強調している。気がする。

 第一印象は、可愛い。ボキャブラリーが乏しく、ファッションの知識もない僕にはそうとしか言えない。

 兎にも角にもリシアに似合っている可愛い服を彼女は着ているのだ。僕とのデートのために、きっと僕に可愛い自分を見せるために──

(バカ……! クソバカ……! 調子に乗るな! デートと称したからには服装をしっかりと決めるのは当然だろうが……! 僕のためとか誰のためとかじゃなく常識的に……! 事実僕もそうだ……! リシアに恥をかかせないために普段よりもちゃんとした服を着ている……リシアもきっとそうだ……そんな感じだ……それでオシャレをしているんだ……そうに違いない……!)

「……エイジ」

「……ひぇ!? あ、はい!」

 突然、リシアに名前を呼ばれて僕はキョドッて、変な声色で返事をしてしまう。

 そんな僕を笑う事なくバカにする事もなく、リシアはただただ、いつも通りに笑みを浮かべ──

「行こっか……デート」

 と。やけに力強く、だけどいつも通り優しい声色で、手を差し出しながら彼女は言う。

 そんな彼女に見惚れて、僕はうまく返事ができず、ただその場で頷くことしか出来なかった。


 *


「行ってらっしゃーいお兄ちゃん、リシアお姉ちゃん」

 と。初々しく歩き始める二人の背中に向け手を振りながら、私は彼女達を見送った。

 それと同時に、その様子をポケーッとした様子で見ていた銀髪赤眼美少女姉妹の肩を同時に掴み、私は無理矢理彼女達を家の中へと連れ込む。

 特に抵抗する事なく、されど疑問は感じたまま、銀髪赤眼美少女姉妹は私の目論見通り家の中へと素直に入っていく。

 玄関の扉のドアノブに手をかけて、勢いよくそれを閉めて、私は思わず笑みを浮かべる。

 そして、持っていたカバンから帽子を二つ取り出し、勢いよく銀髪赤眼美少女姉妹の頭に乗せた。

 無抵抗でそれを受け止める彼女達は、不思議そうにほんの少しだけ首を傾げ、私を上目遣いで見てくる。

 それと同時に私は今度は、用意していたサングラスをそれぞれ彼女達に渡した。

 その後、彼女達がサングラスをかけているのと同時に私は、私も帽子を被りサングラスを着ける。

 そして、銀髪赤眼美少女姉妹をビシッと指で指して──

「さぁクティラちゃん、ティアラちゃん……見に行くよ! お兄ちゃんとリシアお姉ちゃんのデート!」

 と。私は力強く、勢いよく、大きな声で彼女たちに命令をした。

 一瞬ポカンとした顔を浮かべる銀髪赤眼美少女姉妹、けれどすぐに私の意図を察し把握し、二人は力強く頷く。

 合意を得た私は、思わず彼女たちに向け手を差し出す。

 そんな差し出された手を二人はきゅっと握り、私を見つめ頷く。

 当然、私は二人に頷き返した。決まったからだ、結成されたからだ。

 お兄ちゃんとリシアお姉ちゃん見守り隊、ただいま結成、そして今すぐ出動、だ──

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