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295.覚悟を決める覚悟を決める

(今日は木曜だから……えっと……あと二日で土曜日か。早いなぁ時が経つの……昨日学校を休んだのもあるだろうけど)

 一時間目の授業中。椅子に座りながら私は、視線を黒板に真っ直ぐと向けながら、真面目に授業を受けるフリをしながら、考え事をしていた。

 昨日、私はエイジ達と私の家でお泊まり会をした。短い時間ではあったけれど、久しぶりのお泊まり会だったから、まだその時の興奮が冷めやらない。

 興奮ていうか、気分が高揚しているというか、兎にも角にもウキウキ気分そのままというわけ。

(……それに私決めたもん。今週中に……正確には日曜日までに私……エイジに告白するって)

 自分でも急だとは思う。今まで何年も何年も何年も抱えて隠していた気持ちを、突然伝えると決めたんだから。

 でも理由はある。しっかりとした理由が。それは、私に襲いかかってきた"彼"の存在を忘れられないから。

 結果あの時は運良く彼を退ける事に成功したけれど、次にいつ"彼"が襲いかかってくるかわからないし、それに──

 そういった"彼"の存在が、私にいつまでもこの日常が平和のまま続かないという事を教えてくれたから。

 "彼"の存在だけが悩みの種ではない。他にも要因、原因となり得る人はいる。例えば──

(……咲畑さん、とか)

 私は思わず、咲畑さんの方をチラリと見てしまう。

 彼女は一見授業を真面目に受けている様子だけど、よく見ると机の中にスマホを隠しながら、こっそりとそれを弄っていた。

 咲畑さん。別に悪い子ではないし、嫌いでもない。あまり仲良しでもないけれど、距離を取るほど苦手というわけでもない。だけどやっぱり、彼女を見ると少し胸が痛む。

 だってあの子、最近なんだかエイジと仲が良いんだもん。

(エイジに限って……って言うとなんか語弊があるけれど……それでもエイジに限ってその……咲畑さんと付き合う……とは思えない。だってエイジ……私相手にも奥手だし、意外と恥ずかしがり屋だし、なんかちょっと他人のこと考えすぎで逆に失敗してる時とかあるし……あまり女の子と付き合うって感じはしない……しないんだけど……なんか……私とサラちゃんとクティラちゃん姉妹以外でエイジが仲よくしてる女の子って……多分咲畑さんが初めてなんだもん……。私がよく知らない女の子と仲良くしてるエイジ……あぅ……胸が痛ぃ……)

──気持ち悪いな。そう思う。

 勝手に考えて、勝手に意識して、勝手に敵意向けて、勝手にヘラる。キモい、キモいよ今日の私。

 最近の私、ここ数日の私、なんだか情緒不安定だ。落ち込んだり喜んだり、メリハリがあまりにも激しすぎる。

 怖がっているのかもしれない、あの戦いから私はずっと、恐れているのかもしれない。だって本当に怖かったもん。初めて──クティラちゃんとの初対面の時もそうだったかもだけど──だったんだもん。エイジ達との日常が失われるかもって、本気で思ったのは。

(……エイジはどう思ってるのかな。私と同じくらい強く……私と一緒に居たいって思ってくれているのかな……)


 *


 金曜日の午前の授業一発目。私は、黒板へ真っ直ぐ視線を向けて授業を真面目に受けているフリをしていた。

(結局昨日は告白できなかったなぁ……タイミング無かったし……平日だったから流石に愛作家にお泊まりは出来なかったし……お父さんも帰ってきたから愛作家御一行様をお泊まりさせる事もできなかったし……)

 はぁ。と心の中だけで私は小さくため息をつく。

 けれど勝負はこれから、本番は今日から。何故なら本日はキラキラ金曜日。私が愛作家にお泊まりする曜日だ。

 そのまま土曜日、日曜日もお泊まりする予定。だからこの三日間で勝負を決める、終わらせる、つけてみせる。

 私は今週中に絶対に、エイジに告白をする。そして、絶対に──

(……絶対に、だよ)

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