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293.ちょっとだけゲコゲコ

「……リシアお姉ちゃん……エイジ……それは私のプリンだ……」

「お兄ちゃん……プリン食べないで……」

「エイジお兄ちゃん……プリン返して……」

「……んぁ……ぁ……んー……えっと……午前四時……え……私すごい……目覚まし無しで予定通り起きれた……」

 目を擦りながら、あくびをしながら、ゆっくりと私は起き上がる。

 だんだんと頭が冴えてきて、眠気が薄れていって、視界のボヤけも消え、耳に環境音がちゃんと届くようになって、呼吸も普段通りになる。

 すぅすぅと聞こえてくるのは美少女達の寝息。サラちゃんとクティラちゃんとティアラちゃんの三人の寝息。耳が幸せだ。

「お兄ちゃん……プリン……弁償して……」

「……イジ……私にもプリン……プリン……」

「エイジお兄ちゃん……今すぐ買い直してきて……プリン……」

(……エイジ、みんなのプリンに何してるんだろ)

 目を閉じて、健やかに眠る三人を傍目に、私はまたあくびをしながら、今度はゆっくりと立ち上がった。

 両腕を天井に向けて伸ばして全身を伸ばし、溜まった力を解き放ち一気に開放感を得て、背伸びを終えると同時にまたあくび。

 眠気が飛んだと思っていたけれど存外、まだ私は眠いみたい。そりゃそうだ。今日の私は二、三時間しか寝ていないんだもん。

 本当はもっと早くに寝る予定だったけれど、女子会が想定以上に盛り上がりみんなが眠り始めたのが確か二時頃だった気がする。

 今日、朝起きた理由は朝早くにみんなで愛作家に行く予定があるからだ。そこでエイジとサラちゃんとクティラちゃんは制服に着替えないと、学校に行けない。

 急遽実施されたお泊まり会が故、学校がある平日が故、早起きする事になってしまった。

(ちょっと頭痛いかも……睡眠の大事さを身体が痛みで警告してる……うーん……私まだ若いから大丈夫か)

 ちょっとした頭痛は置いといて。私はみんなを起こさないよう、ゆっくりと足音を立てずに歩き、部屋の扉へと向かっていく。

 扉の前に着いたと同時に、これまた音を立てないよう慎重にドアノブを捻り、私は廊下へと出た。

(まぁ……聞いてはいたけれど、やっぱりお父さん帰ってきてないか……。別に帰ってこられても一応エイジ達が泊まるのは伝えてあるし……エイジとサラちゃんの事はお父さん知ってるし……あれ? エイジってどこで寝たんだっけ……?)

 唯一、私の部屋で眠らなかった幼馴染の事を思い出し、私は昨日の記憶を思い出そうとする。

 確か、私は良いよーっと言ったのにエイジは「いや、流石に……」と言って断って、別の部屋で寝たはず。

 お父さんの部屋だったかな? とそう思いながら私はちょうど、お父さんの部屋の前に着いたので、ドアノブをゆっくりと捻りほんの少しだけ扉を開き、部屋を覗いてみる。

 居ない、誰も居ない、気配は感じない。多分ここにはエイジは居ない。

(お父さんの部屋荒れてるなぁ……忙しい時だとお父さん……部屋ぐちゃぐちゃになるからなぁ……後片付け大変そ……)

 部屋の感想を述べながら、私は一応音を立てないよう、ゆっくりと扉を閉める。

 そしてそのまま私はリビングへ──

(あ……! エイジ居た……!)

 リビングに着くと、私の幼馴染、愛作エイジがソファーで横になって寝ていた。

 口を少しだけ開けて、目を閉じていて、腕がだらんと下がっていてソファーから落ちそうになっている、私の大好きな幼馴染。不覚にも、姿が見えたのが嬉し過ぎて、ほんの少しだけ胸がときめいてしまった。

(ん……?)

 見ながらエイジに近づいていくと、まるで私が歩き出すタイミングと合わせたかのように、彼は寝返りを打つ。

 それと同時に彼は、寝たまま、お尻の方からミュートにすべきあの音を奏でてしまった。

(……え、なんか普通にちょっとやだ)

 あまり人の見たくない部分を、しかも本人の意思に関係なく行われた行為を見て私は、なんか、その──

 ──ちょっと萎えた。

(……五時半くらいにみんなを起こそうかな)

 とりあえず私は別のことを考え、朝ごはんを食べるために、冷蔵庫へと向かう。

(……二度寝、二度寝しようかなと思ったけど、起きれなさそうだからやめとこ)

 手に取った麦茶をコップに注ぎながら、私はそう呟きながら、何となーく天井を見上げ

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