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281.小悪魔天使な銀髪赤眼美少女ヴァンパイア

「……流石にお家に襲いに来たりはしないか。私と違ってまだボロボロだろうし」

 本当ならまだ学校にいる平日の午後二時ごろ。私はソファーに座りながら、隣でニコニコ笑顔のままアニメを観ているティアラちゃんの頭を撫でながら、小さく呟いた。

 ティアラちゃんのあまりの天使さに忘れていたけれど、彼女を狙っている危険人物がいる事を思い出した私は今日一日、ずっと彼を警戒していた。

 昨日はなんか、たまたま凄い力を出せるようになって隙をつけて勝てたけど、正直彼は私より強かった。

 今度来たらティアラちゃんとクティラちゃんを、そしてエイジとサラちゃんを守れるのか。正直、自信がない。

 また鍛え直すべきなのかな。でも、付け焼き刃では彼には勝てないし、鍛えた結果中途半端に変なふうになっちゃって、逆に今の私より力を出せなくなるかもしれない。

 どうしたらいいのかなんてわからない。結果論を得る事でしか自信が持てない。じゃあもう、諦めるしかない。とりあえず今は。

(……せめて、あの時出せた力の要因原因を究明できれば)

 私はティアラちゃんの頭を撫でながら、天井を見上げため息をつく。

 なんかあの日あの時あの瞬間、色々頭がおかしくなってて、トリップ状態みたいになっていて、正直何を考えてどう動いていたのか、あまり覚えてない。

 エイジとサラちゃんの事を考えていたのは間違いないと思うけど、それでどうして強くなれたんだろう。

「……リシアお姉さん、どうしたの?」

「んー……ん……ぴぇ……?」

 と。首を傾げながら、きょとんとした様子でティアラちゃんが私を心配するように、じっと見つめながらそう聞いてきた。

「なんか悩んでるよね……私でよかったら相談に乗るよ! ティアラちゃん相談室本日開業ですっ!」

「えー……かわい……ありがとティアラちゃん。でも大丈夫だよー」

「……んにゃ」

 天使そのものなスーパー良い子のティアラちゃんの提案を私は、心苦しくも飲み込まず、とりあえず彼女の頭を撫でながらやんわりと断る。

 そもそも何をどう悩んでいるのか私でも正直わかっていないのに、こんな変なことをティアラちゃんに相談するわけにはいかない。それに、ティアラちゃんが間接的に原因として、彼が私を襲ってきたのだから、それを知って変に責任感を感じて悲しい思いとかして欲しくないし。

 兎にも角にもこの問題は私一人で解決するべきだ。そうしたらいつも通りに、平凡で平和な平日を平坦に過ごせるのだから。

 隠し通せれば私一人がちょっとの間苦しむだけで済む。知らぬが仏、使い方が合っているか否かは知らないけれど、とにかく知らぬが仏だ。

「……ねえリシアお姉さん。私ね、聞かないでおこうかなーと思ってたんだけど……」

「……ぴぇ? な、何?」

 突然。真剣な顔で、本気と書いてマジと読む顔で、シリアスな顔で、私を本気で心配するかのような顔で。ティアラちゃんは改めて私に問い始める。

 だから私は思わず顔を逸らしてしまう。何だか恥ずかしくて、全てを見透かされている気がして、それがほんのちょっぴり怖くて。

「リシアお姉さんさぁ……まあ、私も何となーくノリで流しちゃってたけど……昨日の夜、大怪我してたよね?」

「ぴぇ!?」

「何でなの……? 私、普通に心配なんだけど……。だって普通の女の子はあんな怪我しないもん! 絶対おかしいよ! 教えて! 何があったの?」

「ぴぇぇ……それはその……あのぅ……えっと……」

 思わず頬を人差し指で掻きながら、すでに逸らしている顔を、私はさらに彼女から逸らす。

 痛いところを突かれた。なんて言うか、誤魔化し方が思いつかない。遠回しではなく直球で聞かれたから、人伝ではなくティアラちゃんが直接見て抱いた疑問だから、言葉の一つ一つに力強さがある。

 絶対に聞く、聞いてやる、聞き出してやる。そんな感じの、物凄い圧を感じる。

「隠したらエイジお兄ちゃんに言っちゃうからね、リシアお姉さんが大怪我をしていたの。きっとリシアお姉さん、その事はエイジお兄ちゃんに知られたくないでしょ……」

「ぴぇ……!?」

 またしても図星。凄く痛いところを突かれた。それを言われたらおしまいの言葉、私が逆らうわけにはいかない脅し、恐ろしい言葉の凶器。

 先程まで天使に見えていたとっても可愛いティアラちゃんが、とても可愛いのには変わりないけれど、恐ろしい小悪魔に見えてきた。

 この子。こんなにほわほわとしていて、ニコニコとしていて、すっごくすっごく可愛いのに、存外人の仕草や表情をしっかりと見ていて、その人の弱点や問題点を見抜いている。幼く見えるけどもしかしてティアラちゃんって、私よりも頭がいいのかもしれない。

(……て言うかティアラちゃんって何歳なんだろう)

「はーやーくー! 答えてよーリシアお姉さん!」

(ぴぇえ……! 抱きついてきた……! 可愛い……! 可愛いけど……可愛いけれどー! 我慢しなきゃ我慢しなきゃ何とか誤魔化さなきゃ……!)

「……教えて?」

──上目遣い。

──きゅるきゅるお目目。

──かわちい唇。

──温かくて柔らかい身体。

──可愛い。

──可愛い。

──可愛すぎる!

──負けた。

「えっとね……あの……お願いだからエイジとサラちゃんとクティラちゃんには言わないでね? その……かくかくしかじかで……」

「ふむふむ……」

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