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278.目覚めの朝

「……朝。朝……朝……朝ってどうしてこんなにキショいの……? 朝って……明後日もきっとキショい……最悪……来るなよ朝……でも浴びなきゃ太陽……うげぇ……吐きそう……」

 目が覚めてしまって、起きてしまった私、夢見館ルルは仕方なく目を擦りながら、ベッドから起き上がった。

 ずっと夢の世界に居れたらいいのに。最近は変な男の子が入ってきてあまり居心地良くないけど。

(……自分の思想を好き勝手に他人にぶつけて優越感に浸るのはちょっと気持ちよかったけどね……よくよく考えたら最低なことしてるな私……だから友達いないし出来ないんだろうなぁ……出来ても長続きしないんだろうなぁ……作んない……作れてない今が正解なんだろうな……悲しいなぁ……寂しい……)

 朝から最悪な気分だ。いつも通りではあるけれど、本当に最悪な気分。

 特に平日の朝は最悪だ。朝ごはんを食べなきゃいけない、制服に着替えなければいけない、登校しなければいけない。余りにもやる事が多すぎる。面倒くさすぎる。だから気力が無くなっていく。

(……私、社会に出た時やっていけるのか? いけないな……最悪親の脛齧って生きよ……)

 今日は口の中がやけに粘つく。乾いている感じもする。どうしてだろう、口呼吸になっていたりしたのかな。

 どうでもいい。寝ている時の私なんて、現実世界を生きる私のことなんて。

(……夢を実感できる人間でよかった。もしもこの最悪な現実を夢だと誤認してしまっていたら、ずっと悪夢を見ている事になるもんね。睡眠必須就寝必須な人間が、幸せを感じる一時に醜くて汚い穢らわしいクソみたいな世界で生かされるなんてあってはならないもの……絶対に……)

 ふわぁ。とあくび。ふわぁぁ。とあくび。あふぅ。とあくび。

 眠すぎる。寝ても寝ても寝足りない。だって起きていたくないから、人間はずっと寝るべきなんだから。

 部屋の若干嫌な空気も、行かなければならない義務に憂鬱にさせられることも、私の見る夢では一切感じない。

 好きな雰囲気の好きな世界で好きな事が出来る私が作った私による私のための私だけの世界。それが私の見る夢。

 そんな夢にずっと居たい、そんな夢をずっと見続けていたい。そう思うのってすごく自然だと思う。そこにしか居場所はないんだし。

(……今日は何曜日だ? 月曜日……はないか。昨日学校行ったし…。じゃあ火曜日……? あれ? この前三連休だっけ……ええと……引きこもってたからわかんない……いいやどうでも……スマホ見ればわかるし……見た時に確認しよ……)


 *


「ティアラちゃん、朝だよー?」

 朝、目が覚めた私、安藤リシアは諸々の準備を終わらせてから、私の部屋で眠るティアラちゃんを起こしにきていた。

 すやすやと、可愛らしい寝息を立てながら眠るティアラちゃん。本当は起こしたくないけれど、この子には規則正しい生活をして欲しいから。

(……あれ? ヴァンパイアと人間の規則正しい生活って同じ……なのかな?)

 思わず首を傾げてしまう私。でもクティラちゃんは朝早く起きてラジオ体操してたし、多分同じだよね。

 というわけで。私は改めて、ティアラちゃんを起こす事にした。

「ティアラちゃーん? 朝だよー」

「……んにゃ? んにゃああああああああああ……!」

 私が彼女の全身をユラユラと揺らすと、ティアラちゃんは目をうすらうすらと開けて、大きくあくびをしながら、猫のような声を出し、ゆっくりと起き上がった。

「……かわいっ」

 思わずそう呟いてしまった私。そんな私を、ティアラちゃんは目を擦りながら不思議そうに見て──

「……おはよー……リシアお姉さん……」

 と。ものすっっっっっっっっっっごく! 可愛い声で甘えるように、まるで天使が囁くように、ティアラちゃんは私に挨拶をした。

「……かわちい」

 私はそんなティアラちゃんを見て、改めてそう、呟いてしまった。


 *


(……なんか、変な夢すぎてずっと気になるな。僕が一体全体どんな夢を見ていたのか……)

 朝。もうすぐ学校を出る時間。制服に着替え終えた僕は一人、ソファーに座っていた。

 向かいの椅子にはクティラとサラが仲良さげに座りながら、楽しそうに朝ごはんを食べている。ちなみに僕はもう食べた。

(……そういえばティアラちゃんはどこに行ったんだ?)

 と。不在の銀髪赤眼美少女妹ヴァンパイアの所在が気になり、僕はキョロキョロと辺りを見回す。

 だが彼女の姿は見えない。まだ寝ているのだろうか? まあティアラちゃんは学校に通っていないから、別に寝ててもいいけど。

(……学校かぁ。何でかわからないけど今日はリシア休みみたいだし……あまり行く気起きないなぁ)

 昨日見た変な夢も相俟って、今日は朝からほんの少しだけ憂鬱な気分。

(……カバン、持ってきておくか)

 思わず吐いた、ため息の大きさに呆れつつ。僕はゆっくりとソファーから立ち上がり、荷物を取りに自分の部屋へと向かって行った。

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