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270.お姉さんと仲良くなりたいお年頃

「はぁ……すごい楽になった……。傷一つ残ってないし……ありがとうティアラちゃん」

「えへへ……お役に立てて何よりだよ」

 下着姿のまま、ふぅと一息吐きながら、私にお礼を告げるリシアお姉さん。

 素直な感謝を受け取れて私は、少しだけ胸が暖かくなった。ありがとう、ってちゃんと素直に伝えられる大人って素敵だよね。だから私、リシアお姉さんの事好き。

 それにしてもリシアお姉さん、どうしてあんなに傷だらけだったんだろう。お姉ちゃんはもしかしたらそうなっているかもと言っていたけど、正直私は外れると思ってた。だってリシアお姉さんがそんな傷負う理由が思い浮かばなかったし。

(あ……でも私が暴れてた時にリシアお姉さん大活躍してたよね……え? リシアお姉さんって……何者?)

 私は思わずジッと見つめてしまう。水色と白色のストライプ柄の上下お揃いの下着を着けていて、それを隠そうと服を着ているリシアお姉さんを。

 先程まで大怪我をしていた、と言うのを抜けば彼女は普通の女の子にしか見えない。エイジお兄ちゃんに恋をしている、普通の女子高生。

(普通の女の子……だよね……?)

 正直、今更リシアお姉さんが実は何かしらの怪物です、と言われても私は彼女を嫌いにはならない。寧ろ親近感を覚えてしまうかも。

 ヤバい。凄い気になってきた。聞いてみようかな。

「ねえねえリシアお姉さん……」

 チョンチョンっと。私がリシアお姉さんの肩を人差し指で突くと、彼女は一度全身をビクッとさせてから、ゆっくりとこちらに振り返った。

 突いた相手が私だと知って安心したのか、リシアお姉さんは、はぁとため息をついてから私の目を見る。

「どうしたのティアラちゃん?」

 傷は癒えたけど体力は戻っていないからなのか、どこか疲れた様子を見せつつも、ニコリと笑みを浮かべてくるリシアお姉さん。

 彼女の優しさに私はちょっと嬉しくなって、思わず抱きしめそうになったけどそれは我慢して、一度咳払いをしてから私は、気になっていたことを彼女に問う。

「あのねリシアお姉さん……リシアお姉さんって、人間なの?」

「ぴぇ!? そ、それどう言う意味……?」

 目を見開き驚きつつ、ゆっくりとリシアお姉さんは首を傾げる。

 この様子、この反応、多分リシアお姉さん、人間だ。心の底から驚いていると窺えるし、だから疑う余地もない。

(よくよく考えたら日本の女子高校生が強いのは当たり前だよね……アニメだとみんな強いし)

 くだらない杞憂で不安を覚えて、大好きな人を少しでも疑ってしまった私は、私自身に呆れて思わず苦笑する。

「その……あの……ティアラちゃんあのね……私ちゃんと人間なんだけど……」

「うん! わかってるよ♪」

「ぴぇ!? え……じゃあなんでさっき……」

「えへへ……なんでもなーいっ」

「……ぴぇ」


 *


「ねえねえリシアお姉さん。私、今日リシアお姉さんの家に泊まろうかな? いーい?」

「ん? うん……エイジとサラちゃんとクティラちゃんが良いなら私もオッケーだよ」

「やたっ!」

 ニコッと微笑みながら、ガッツポーズをするティアラちゃん。幼さ全開子供らしさ全開のその仕草に私は、思わず叫びたくなる。

 けどそれは必死に我慢する。流石に限界オタクすぎてアレだし、私にはサラちゃんがいるし。

(そんなことより……)

 ニコニコ微笑みながら、楽しそうに私の部屋を歩き回るティアラちゃんを見ながら私は、頬に滴る冷や汗を人差し指で軽く拭った。

(ティアラちゃんのさっきの質問……どう言う意味なんだろ……)

 先程、ティアラちゃんが私に投げた質問。人間か否かという問い。私はそれにとても驚いて、ビックリしすぎて、彼女の不思議そうな顔を首を傾げるその姿が頭から離れなかった。

(えー……。どう言う意味なんだろ……やっぱりあの大怪我は怪しかったかな……怪しいよね……なんで負ったのかを私、ティアラちゃんに伝えてないし……。ていうかあんな大怪我してたら普通死ぬよね……私よく死ななかったな……凄いかも私……でも普通の女の子ではないよね……そう見えたからティアラちゃんも聞いてきたんだよね……ぴぇ……もしもエイジとサラちゃんが見てたらどんな反応したのかな? ドン引きしちゃうのかな? でも二人とも私がヴァンパイアハンターって事は知ってるし……受け入れてくれるよね……。いやどうだろう……血みどろボロボロ女子高生と普通一緒に居られる? 怖くて避けちゃうかドン引きして逃げるかのどちらかだよね……でもエイジとサラちゃんが私にそんな酷い事するかな……でも私の方が異常なんだからされても仕方ないというか……ぴぇぇ……)

 嫌な妄想が脳裏に浮かぶ。私のとても悪い癖、一度ヘラったら無限にネガティブな想像をしてヘラり始めちゃう悪い癖。

 しかも厄介なのが、それを悪い癖とちゃんと自覚してるから、ネガティブ想像と合わせてそれも襲ってくること。ネガティブ想像と自己嫌悪のダブルパンチ、最悪だ。

(せっかく身体は治ったのに……体力とメンタルが……あぅ……)

 なんか疲れてきちゃった。もう夜遅いし、寝たいなぁ。

「ねえティアラちゃん」

 今夜泊まることになった天使に私は話しかけ、就寝を提案しようとする。

 しかし返事が聞こえない。辺りを見回すとティアラちゃんの姿が見えない。

(え……どこに行ったの?)

「ここだよ!」

「ぴぇ!?」

 私が心の中で疑問を浮かべるとほぼ同時に、ティアラちゃんが返事をしながら私の被る布団の中から現れた。

 元気いっぱいに返事をするティアラちゃんについ驚き、私は変な声を出してしまった。ちょっと恥ずかしくて、つい俯いてしまう。

「ねえねえリシアお姉さん、まだまだ夜は長いんだよ……」

「え……」

「たくさんお喋りしよ! 私、リシアお姉さんともっと仲良くなりたいの!」

「ぴぇ……!」

 ティアラちゃんの提案を聞いた時、私は一瞬だけ、嫌な気持ちになってため息を吐きそうになった。

 だって疲れてるし、眠いし、寝たいから。

 でも、だけど、それでも。私はまだ寝ずに、彼女に付き合うことを決意。

 だって提案してきた時の笑顔が可愛すぎて、天使そのものだったんだもん。

「ねえねえリシアお姉さん……いい?」

「……うんっ!」

 首を傾げながら、甘える様に問うティアラちゃんに私は、力強く頷きながら返事をする。

(よし……頑張って起きよう……! うん……!)

 決意して、決心して、私は両手をぎゅっと握り拳を作り、心の中で「えいえいおー」と呟いた。

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