259.お留守番
「暇だなぁ……」
お姉ちゃんも、サラお姉ちゃんも、リシアお姉さんも、エイジお兄ちゃんも居ない愛作家のリビング。そこに一人、ソファーに座りながらお留守番をしている私はボソッとそう、呟いた。
一人でゲームをするのは飽きた。しかもゲームは一日一時間と決まっているから、今日の私はもうできない。
本を読もうにもイマイチやる気が出ない。文字ばっかりの本なんかより、ふわふわな日常系漫画読みたい。一応エイジお兄ちゃんの部屋を物色したけど、私の求めている漫画はなかったのでがっかり。
ちなみに、サラお姉ちゃんの部屋は探してない。お姉ちゃんから許可が出ているのがエイジお兄ちゃんの部屋だけだから。
「……んにゃ」
出たのはあくび。暇だから、つまんないから、やる事ないから。
私も魔法を使って学校に入学しようかな。でも、エイジお兄ちゃんがそれは辞めろって言ってたしなぁ。
(お姉ちゃんは良いのズルくない……? もしかしてお姉ちゃんとエイジお兄ちゃんってデキてる? そんなわけないか……リシアお姉さんいるし)
もう一度あくびをしてから、私はなんとなくぴょんっと飛び跳ねるように、ソファーから降りる。
「……んにゃ?」
直後。背後からガラスの割れる音が聞こえてきた。
ガシャーンとかバリーンとか。オノマトペで表現するならそんな感じの高く大きい音が、私の耳を少し痛めつけてくる。
「居たかヴァンパイア……目撃情報頼りに来たがよもや……こんな所に居たとは。その銀髪……やはりあのクティラの妹か」
「誰?」
やけに低い、偽物バリトンボイスみたいな声で話しかけてくる誰か。その声が聞こえてきたのは私の背後、つまりガラス戸の方。
私はゆっくりと振り返る。そこに居たのは、髭をボーボーに生やしていて、髪がボサボサで、左手に大きな鎖鎌を持っている不審者だった。
「聞きたいか気になるかこの俺が……自己紹介しておいてやろう。我はヴァンパイアハン──」
「ティアラビーム」
「──タァァァアアア!?」
ヴァンパイアハンターさんが自己紹介をする直前、得意げな顔をする彼に私はなんとなくムカついたので、ぶっ飛ばすためにビームを放った。
一瞬でそれに飲み込まれるヴァンパイアハンターさん。こんなのも避けられないんだと、つい呆れてしまう。
ヴァンパイアハンターさんがビームに包まれながら、愛作家を追い出されると不思議なことに、彼が割ったガラス戸が綺麗に直った。まるで、最初から壊れてなどいなかったかのように。
多分これアレだ。お姉ちゃんが使ってるツゴーイーイナーの効果だ。なんか便利な結界を展開して、それを閉じたら壊れた建物とか不都合な存在が綺麗さっぱり無くなるアレ。
「……どうして私がここにいるってわかったんだろう? お姉ちゃんに会いに行くまでの間に、血を分けてもらった人たちがチクったのかな? 別にいいけど……」
状況を確認するために、あえて私は考えを口に出しながら、頭を回してみる。
けれどすぐに考えるのをやめて。はぁ、と私は一息ついてから──
「誰でもいいから早く帰ってこないかなー……」
と。そう呟きながら、全身の力を抜いて倒れ込むように、私はソファーに寝転んだ。




