257.ぼっち・ざ・ぶっく!
(ホラー……歴史……エッセイ……どれも気分じゃないな)
リシアと別れ、図書室に着いた僕は、読みたい本を見つけるため本棚を物色していた。
どうせ暇なのだからと、端から一つ一つ見ている。授業以外で図書室に来る機会なんてほとんど無いし。
(アイドルの写真集……ラノベ……漫画!? 高校って凄いな……)
一つ一つ、一歩一歩歩くたびに確認していく。ラノベと漫画はともかく、写真集って図書室で見るものなのかな? 一応本ではあるけれど。インタビューとかも載ってるか。
(……んー……まあこれでいいか)
僕は、目についた一冊の本を手に取った。ジャンルはコズミックホラー、そこそこ好きなジャンルだ。
選んだ本片手に、本棚の群れから抜け出して、僕は座る場所を探す。
なるべく人が居ない席がいいな。勉強とかしてたら邪魔だろうし、知らない誰かが近くにいる状況で本を読みたい人なんて少ないだろうし。
(意外と人いるな……高校生ってこんなに勉強する生き物だったのか)
教科書や問題集を二、三冊広げノートにカリカリ書き込む者。シンプルに問題集一冊に集中する者。大学や専門学校のパンフレットを複数机の上に展開し、吟味する者。多種多様だけどみんな、自分の将来を考えて勉学に励んでいる。
なんか自分が情けなくなってきた。もう高校二年生なのにまだ何も考えていないからだ。一応、テキトーな大学に行く予定ではあるけど、そのテキトーな大学を探してすらいない。
(まあ……まだ時間あるし……最悪三年になってから考えればいいよな)
現実逃避をして、改めて手に持った本を握り直して、僕は座る席を探す。
絶妙に座りづらい雰囲気と配置。大きい机の席には一人は座ってるし、一人席はすでに埋まっている。
(陰キャにこの状況で席を選べは無理がありすぎんだろ……)
僕は思わずため息をついてしまった。自分の情けなさと、この状況に呆れて。
仕方がない。せめて同じ陰キャっぽい人がいる所に座ることにしよう。いつまでも本片手に立ってると変に思われるだろうし。
と言うわけで、僕は改めて辺りを見回す。
一人で机の半分を広げた教材で埋めている男子。彼のところはやめておこう。邪魔したくないし。
ほお杖をしながら漫画を読んでいるツーブロックの男子。見た目と態度が典型的な陽キャすぎる。何で図書室にいるんだろうと思わず首を傾げたなるが、それは我慢。偏見はあまり持ちたくないから。
両手で丁寧に本を持つ、サイドに編み込みがある女の子。異性が座っている場所は論外だ。絶対変な誤解されるし、何より女の子が一人で座っているところに向かう男子とか側から見たらちょっとキモい。特に僕みたいな陰キャは。
(……ん? あの子……最近どこかで見たような? 同じクラスだったっけ?)
先ほど見た女の子。僕は彼女に何故か、見覚えがあった。
ので。思わず視線を戻し彼女を見てしまう。少しボサボサ気味の、サイド編み込みが特徴的な女の子。無表情で本に視線を向ける姿は文学少女そのもの。
(……あ、やばっ)
僕の視線に気づいたのか、彼女は少し顔を上げ、こちらに顔を向けてきた。
見ていた事がバレないように、僕は急いで振り返り彼女に背を向け、本棚に向かい歩き出す。
やった後で思ったがこの態度、見ていた事がバレバレな気がする。対応ミスったかも。
だからと言って改めて振り返って彼女の様子を伺う事なんてできない。それで目が合ったりしたら僕は終わりだ。
(……もうちょっと本を選ぶフリしよ)




