248.行くまでが面倒くさい
「うむぅ……三連休もついに終わり、今日から学校か。思えば金曜日にティアラが来てからまだ四日……時間の進みが異常に遅い気がするが、そこは大した問題ではない。学校に行かなければならない義務感が私を、私たちを憂鬱とさせる……そうだろう? リシアお姉ちゃん」
「ぴぇ? まあうん……でも私、学校は好きだからそんなに嫌じゃないかな……」
「それは同感だ。ただ行くのが面倒くさいのだ」
「あ、それに私も同感」
火曜日の朝。目が覚めた私とクティラちゃんは仲良く横並びになりながら、鏡の前で着替えていた。
ティアラちゃんがやってきた金曜日、エイジとサラちゃんがデートをした土曜日、友達みんなで集まった日曜日、エイジとサラちゃんがギスギスした月曜日。それらが終わってやってきた平日、今日は登校日。
クティラちゃんに言われてるみると確かに。いつもの三連休よりかなり長く感じた。二、三ヶ月は経ってる気がする。
(こんなものかな髪型……ところどころ跳ねてるけどいいや……眠いしめんどい……)
「この制服を着るのも久しぶりだ……うむ、制服とは楽でいいものだな。一々色々考えずに最低限整った服装を纏えるのだから」
「そうだねー……」
何気ない、他愛ない会話を交わしながら私たちは準備を進めていく。
クティラちゃんがほっと一息、つくと同時に私も一息。どうやら私たち二人同時に身支度を終えたみたい。
入り口に近い私の方から先に動き、扉を開けて洗面所を出る。それと同時に後ろから足音、きっとていうか、間違いなくクティラちゃんの足音。
ピシャリと扉が閉まる音。クティラちゃんが扉を閉めた音。ちゃんと扉を閉められて偉いと思う。私はよく開けっぱなしにしちゃうから。
そんなどうでもいいことを考えながら、私たちは会話するでもなく横並びになりながら、真っ直ぐにリビングへと向かう。
「……おはよう、リシア」
「うんっ。おはよう、エイジ」
リビングに着くと、一番最初に起きたのか、エイジがどこか眠たげな顔をしながらソファーに座り、手を振りながら挨拶をしてきた。
だから私も同じように挨拶をして、手を振りかえす。こういう何気ない朝の挨拶、私大好き。
「ふふふ……どうしたエイジ? 浮かない顔だな」
と。私の隣に立つクティラちゃんが腕を組みながら、ドヤ顔をしながら煽るようにエイジに問う。
言われてみると確かに。エイジはどこか浮かない顔をしていた。学校に行くのが嫌なのかな? 確かに連休明けだし、私もちょっと嫌かも。
「どうしたもこうしたも……僕、まだ銀髪赤眼美少女なんだよ」
「それがどうかしたのか?」
「行けないだろ……学校」
「……あー」
「ぴぇ……」
そうだ。よく考えたらエイジ、今は完全一心同体状態で、銀髪赤眼美少女お兄ちゃんなんだった。
漫画やアニメみたいな事になってるのに、漫画アニメみたいに、エイジは自分が女体化することをクラスに公表していない。だから女の子状態で学校に行くのは無理なんだった。
(えー……エイジ今日休みなの? 私も休もうかなぁ……)
なんてことを考えながら、私は小さくため息をつく。
流石に頻繁にズル休みするわけにはいかないし、もうすぐテストもあるし、行っておかないと駄目だよね。普通に考えたら。
「ふむ……そうだなエイジ。ギリギリまで待つしかないなお前は。完全一心同体状態が解除されるか否か」
「別に言われなくてもわかってるけど……」
「と、とりあえず朝ごはん食べよっか! エイジ! クティラちゃん!」




