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241.重い想い思いすぎてぐちゃりんこ

「……ねえお姉ちゃん。エイジお兄ちゃんとサラお姉ちゃん、まだ部屋に居るね」

「うむ……まぁ……まだ四時だしいいんじゃないか? リシアお姉ちゃんもあまり気にする様子見せずに本を読んでるし……夜ご飯の時間になれば二人ともリビングに来るだろう」

「お姉ちゃんが言うならそうなんだろうけどさぁ……私はちょっとだけ……心配になってきたかなぁ」

 そう言って私は、お姉ちゃんの肩から手を回し、椅子に座っているお姉ちゃんにぎゅっと抱きつく。

 そして思い返す思い出す。昨日の一昨日の、愛作兄妹の様子を。

 仲良さげな二人。エイジお兄ちゃんは一見冷たいけれどサラお姉ちゃんにちゃんと構ってあげてるし、彼女のことをちゃんと見ていた。

 サラお姉ちゃんも。恥ずかしいからか少し強気な感じでエイジお兄ちゃんに接していたけれど、目は誤魔化せてないし言葉の端々に好きが見え隠れしてた。

(……なんだか思い出しちゃう。家にいた時のお姉ちゃんと私を……)

 仲が良かったのに。あんなに一緒だったのに。よくわからない所ですれ違っちゃって、お互い素直な気持ちを見せられなくて隠しちゃって、だからどんどん拗れていっちゃって。

(……それがダメだってわかってるのに、それでも辞められないのは……変えられないのは……どうしてなんだろ)

 私はお姉ちゃんをさらに力強くぎゅっと抱きしめる。なんだか怖くなってきて、お姉ちゃんに私から離れてほしくなくて、ずっと一緒にいたくて、離したくなくて。

 こうやって抱きしめて気持ちを察してとアピールすることはできる。多分エイジお兄ちゃんもサラお姉ちゃんも、普段から察してほしいとアピールすることくらいはできてると思う。

 だけど、その行動を取るきっかけとなった好意を、伝えるべき、伝えたいと思っている相手に素直に伝えることはできない。普段は何気なく好きだよ、とか言えちゃうのに。改めて思って想って思い返して伝えようと思うと、声にならない。

 きっとエイジお兄ちゃんとサラお姉ちゃんは今、普段できない、シラフじゃ出来ないその行動をしてしまったから困ってるんだと思う。互いを求める好意、互いを求めすぎた行為、それで生じた再認識。それに戸惑ってしまっているんだと思う。

 エイジお兄ちゃんはサラお姉ちゃんが好きだし、サラお姉ちゃんはエイジお兄ちゃんが好きだけど、二人が素直に好きだと伝え合っているのを私は見たことがない。

 だけどリシアお姉さん曰く、二人は吸血欲求に駆られ結果、相手に素直に好意を伝えて、ちゅーをしてしまったらしい。

 だったら恥ずかしい恥ずかしいってなって、互いに顔を合わせるのが恥ずかしくなっちゃうのは当然じゃない? 会いたいのに会いたくなくて部屋に引き篭もっちゃうのもわかる気がする。

 私だってお姉ちゃんと目と目とを合わせて好きだよと伝え合ったら思い合ったら、しばらくお姉ちゃんの顔、見れないかもしれないし。

 いざ私がお姉ちゃんとそんな感じになっちゃった時、私はどうするのかな? 何も思いつかない。だから、エイジお兄ちゃんとサラお姉ちゃんをフォローする考えが浮かばない。

「……どうしたティアラ? 私の顔を見て」

「んにゃ!? えっ……と……なんでもなーい」

 そんなことを考えながらお姉ちゃんを見ていたら、その視線を感じたお姉ちゃんに指摘されてしまった。

 だから私は恥ずかしくなって、プイッと顔を背けながら言い訳をする。

(……ほら。今は別に喧嘩とかしてない私でも……お姉ちゃんに見られたら聞かれたら何かしら察せられたら……恥ずかしくなっちゃうもん)

 お姉ちゃんの思惑と意図と考えはわからないけれど、それでも好きな人にジッと見られて、認知されて、興味を持たれたら、それだけで誰だって恥ずかしさを感じてしまう。

 エイジお兄ちゃんとサラお姉ちゃんはそれをより激しく、真正面から、直接、お互いにやっちゃったんだと思う。

 大好き好き好き大好き同士なのに。厄介だね、人を想う気持ちって。

(……でも……ここまで長く引きこもる程じゃない気がする……)

 と。私は共感を感じていた二人に対して少しだけ疑問を抱き、思わず首を傾げた。

「……ティアラ、何か悩み事があるなら相談に乗るぞ?」

「……んにゃ? ありがとうお姉ちゃん……でも、今はいいかな」

「むぅぅ……クティラちゃん相談室大不況だな……」

「……お姉ちゃんまた変なこと言ってる」

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