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235.恥ずかしいっっ!!!

「あ……あのー……サラちゃん……?

「うがががががぁ……! 最悪最悪最悪最悪最悪最悪最悪最悪……! うにゅにゅにゃにゃにゃにゃぁ……! ぐぐぐ……ギギギ……ほんと最悪……あーもー……! ああもうああもうああもうああもうああもうああもう……ぅ!」

(サラちゃん、おかしくなっちゃった……)

 サラちゃんがエイジの部屋に向かってから三十分くらい経った頃。突然、サラちゃんは全力ダッシュでリビングに戻ってきて、超全力で私に抱きついてきた。

 物凄い力。そんなに痛くはないけれど、圧迫感は感じる程度の力。サラちゃんの全身全霊の抱きつきに、違和感と疑問は感じつつも、私は少し喜びを感じていた。

 だってサラちゃん可愛いから。可愛い可愛い。

「もうぅ……ぅぅうう……! 恥ずかしすぎてほんっっと死にそう……! 何あれ何それなんなのこれもう……! お兄ちゃんの顔……もうまともに見れないよぅ……!」

(な、何があったんだろう二人の間に……)

 ぎゅっと。ぎゅっとぎゅうっとぎゅぎゅぎゅっと。顔を真っ赤にしながら私に抱きついてくるサラちゃん。そんな彼女の頭を私はそっと優しく撫でながら、ゆっくりと首を傾げた。


 *


「エイジー?」

 サラちゃんが私から離れ、クティラちゃんに何やら問い詰め始めたので、私は部屋に戻って以来姿を見せない幼馴染の部屋の前に立っていた。

 コンコンっと軽く、拳を作ってドアをノック。だけど返事は返ってこない。足音も聞こえない。

「エイジ……? 大丈夫……だよね。サラちゃんの様子から察するに」

 もしもエイジに何か大変なことが起きたら、それまで一緒に部屋に居たサラちゃんが騒いでいるし、慌てているはずだ。何かしらの出来事で沸いた羞恥心で大騒ぎはしているけど。

「寝てる……? うーん……こんなお昼から?」

 私はなんとなく顎に指を添え、小さく唸りながら考えてますアピールをする。

(……開けてもいいよね。私、幼馴染だしっ)

 結論決定決行行動。私はドアノブに手をかけ、捻って直後扉を押して、エイジの部屋の中に入る。

 そこには。彼の部屋には。彼の部屋のベッドの上には。頭をベッドに埋め、お尻だけを高く上げ、絶望しているかのように倒れ込んでいるエイジが居た。

「わー!?」

 長年一緒にいる幼馴染の初めて見る姿に、見たこともない姿に私は思わず驚き、声をあげてしまう。

 それに反応してか。エイジが一瞬だけ顔を上げこちらを一瞥。だけど彼は何も喋らず声に出さず発さず、すぐにまた顔を埋めてしまう。

「な……何があったの……?」

「……なにも聞かないでくれ……」

「え、やだ。気になるもん……」

 とりあえず私は、変な格好で残念な感じになっているエイジの隣に座る。

 せっかく銀髪赤眼美少女なのに、顔は布団に埋まってて見えないし、ズボンからはみ出てる下着は恐らくトランクス。なんか、よくわかんないけど、ちょっとがっかり。

──そんなのはどうでもよくて。

「エイジ……サラちゃんと何があったの? 私に話してみよ……あの……その……ちょっと楽になるかも……?」

「……リシア……そうだな……その……」

 と、私が問うと。意外にもエイジは素直に顔を上げて、というよりは少しだけこちらに顔を向けて、じっと見つめてきた。

 彼はしばらく口をモゴモゴとさせてから、ゆっくりとそれを開く。

「サラと……超えちゃいけない一線を超えてしまった……」

「え」

「抱き合った……二人で……」

「え」

「……いっぱいちゅうちゅうした……」

「え」

「……正直気持ちよかった」

「え」

「……サラが……すごかった」

「え」

「……やばかった」

「え」

 エイジの言葉に、紡がれる話に、発するセリフに、私は何も言えなくなる。

(え……一線を超えたって……え? え? え? 気持ちよかったとも言ってたよね……そういえばサラちゃん恥ずかしがってた……抱き合い……気持ちよく……一線超え……え!? まさか!? まさかのえ!? 嘘でしょ!? したの!? 二人でしたの!? 二人でしちゃったの!? 兄妹でやっちゃったの!? 急に!? いきなり!? 突然!? 家に私もいるのに!? クティラちゃんもティアラちゃんもいるのに!? 二人っきりで!? エイジの部屋で!? ベッドの上で!? ゴールイン!? 嘘でしょ……え……でも……出されたヒントから推測できるのそれしないよね……? え? 本当に? マジ……なの? そりゃエイジとサラちゃんは仲良しだけど……ちょっと珍しいくらい仲良しの兄妹だけど……だけど……だけど……だけどもだけれど……そんなバカな……えー……サラちゃんならまぁ……うん……サラちゃんならいいけど……初めては私がー……ってそうじゃなくて!? ダメじゃない!? 兄妹とか流石にダメじゃない!? あ! でもでもでも……最近はなんだっけ……エルジービーティーみたいなのがなんたらって言うよね……兄妹愛も、兄妹同士もそれに含まれるのかなぁ……? だとしたら間違ってるのは私? そうだよね、愛の形は人それぞれだもんね。だけど兄妹は流石に……近親は流石にヤバくない……? いいのかなぁ……セーフなのかなぁ……世間が許すなら私も良いと思うけど……でもサラちゃん……えー……サラちゃんの方が私より先に経験するの……? なんかそれ嫌なんだけど……例えエイジが相手でも嫌なんだけど……サラちゃんには可愛い女の子でいて欲しいっていうか、いつまでも幼い私の自慢の妹な、穢れなき純真無垢なかわかわ妹でいて欲しいというか……サラちゃんにはそういう性的なもの知っていて欲しくないというか……なんかやだなぁ……サラちゃん……えー……サラちゃんもう……えぇ……サラちゃんの方が先に卒業って……しかもエイジで……ていうかもしかしてエイジも卒業……? 実妹のサラちゃんで初体験……? やば……流石にやばいよね世間体……。でもでもでも……! 私、エイジとサラちゃん大好きだし! 二人が本当の本当に本気でそれを望むなら私だけは味方でいなきゃ……! ずっと一緒って約束したもん……! 絶対絶対絶対一緒にいるもん……! じゃあじゃあ分担決めなきゃだよね……! 子育てとかどうしよう……三人もいるから……うまく分担すればきっと上手く行くよね……! えー……子供の名前どうしようかな……サラちゃんとエイジの子供だから……エラ? えー……エラはちょっとなぁ……ていうか二人の名前から取る必要もないよね……そもそも男の子か女の子かもわからないし。それじゃあ名前は後にして……とりあえず……ってあー! サラちゃん学校どうするんだろう!? 流石に無理だよね宿しながらの通学は……! ていうかバレたらサラちゃん退学……!? エイジもまさか退学……!? やばいどうしようどうやって誤魔化そう……! え!? 期間どれくらい!? 一年くらい!? 一年も登校しなかったら絶対退学じゃん……! でもワンチャン留年……ってダメダメ! 生まれてたら学校行く余裕なんてないよね!? ああもぅ……! 大変大変超超超大変だよ……! こ、子育てって大変……! この歳でまさかそう思う時が来るとは……!)

「……あの……リシア。さっきから色々ぶつぶつ聞こえてるんだけど……その……なんか、勘違いしてないか?」

「ぴぇ!? 勘違い……してないよ! 今必死に養育費をどう稼ぐか考えてるんだから!」

「……あの……さ。その……一線を超えたってのは……僕がサラの血を吸っちゃったって事で……」

「……ぴぇ?」

 呆れ気味に、申し訳なさげに。エイジが絞り出すように言う。

 私の想像していることをどうやって悟ったのかは不明だけど、兎にも角にもエイジは、私の想像する妄想を幻想で真相ではなく空想だと断じた。

 私はエイジの指摘を聞いて、その意味をすぐに理解して、変なこと考えちゃってる自分が恥ずかしくなって、それと同時に頬がだんだん熱くなってきて──

「ぴぇぇぇ……恥ず……恥ずかぁ……!」

 思わずその場に、倒れ込んでしまった。

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