219.撫でて
「ねえ、リシアお姉ちゃん」
包帯だらけのラルカを優しく撫でるリシアお姉ちゃんに、私は話しかけた。
「なに? サラちゃん?」
私の問いにリシアお姉ちゃんは、疑問符を付け首を傾げ、ニコニコ微笑む。
そんなリシアお姉ちゃんの頬を私は、なんとなーく突く。
「……えっと?」
困惑した表情のリシアお姉ちゃん。突かれた理由を知りたそうなリシアお姉ちゃん。
でもごめんなさい。特に理由なく突いたから私、リシアお姉ちゃんの期待に応えられない。
「……サラちゃん?」
突いたまま、ほっぺに指を当てたまま、何も言わない私に疑問を抱いたのか。リシアお姉ちゃんは更に首を傾げる。これ以上傾げたら折れちゃうかも、それくらいに。
どうしようかな。突いたはいいものの、何も思い浮かばない。次の言葉が。
「……ねえリシアお姉ちゃん」
仕方なく私はもう一度彼女の名を呼び──
「私のことも撫でて……」
と。ラルカを見て羨ましい気持ちが湧いていたから、私はそう言った。
するとリシアお姉ちゃんは何も言わず驚かず首を戻し、ニコニコ微笑んだまま私の頭を撫でてくれた。
「もうどうしたのサラちゃん? 甘えたい時期? それともラルカに嫉妬しちゃった?」
「……別に。本当に……なんとなく」
私はリシアお姉ちゃんに聞こえない程度の声量で呟き、そのまま彼女の手のひらに頭を預ける。
(リシアお姉ちゃん……なんとなく撫でてくれてるんだろうなぁ。なんとなくでも……望んだ通り撫でてくれるから……私、リシアお姉ちゃん大好き)
ゆっくりと目を閉じて、私はそのまま更に深く、リシアお姉ちゃんに身を預けた。




