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218.そうか

「はいリシアお姉ちゃん。包帯あったよ」

「ありがとーサラちゃん。ラルカ、動かないでね。まずはここをこう……そしたらこうして……次にああして……更にそうして……出来たら次はとりゃ……うんよし! 出来たよラルカ」

「リシアちゃんありがとー……いててっ」

「ごめんなさいラルカお姉ちゃん……痛い?」

「いいっていいってこんなの! この前のアーちゃんのガチ殺しビームより全然平気へっちゃら!」

 突如始まったラルカとティアラちゃんの戦いは、ティアラちゃんの勝利で終わった。

 ラルカがそこそこの怪我をしたので、当然修行は中断。結局やれた事は、おりゃあと力を込めると魔力を溜められる、と言う事だけ。

 その溜めた魔力も自分ではどのくらい溜まっているのか実感できないし、魔力というものを認識すらできていないので、実質何も出来ていないし、全く成長できていない。

 僕は思わずため息をついてしまう。一朝一夕で得られると思ってはいなかったが、この調子では僕が戦えるようになるまで、どれくらいの期間がかかるのだろう。

 最低限戦えるようになるまでに、ティアラちゃん暴走騒動のような事が起きたら僕はまた、何も出来ず情けなくリシアに守ってもらうことになるんだろうか。

(……嫌だな)

「どうしたエイジ? そんな不満そうな顔をして……」

 と。いつの間にか目の前に現れたミニクティラが、ドヤ顔を浮かべながら僕の膝の上に座ってきた。

 そして、彼女は見上げるように僕を見る。

「悩み相談ならいつでも受け付けているぞ? クティラちゃん相談室に持ち込めば万事解決だ」

「……初めて聞いたんだが?」

「当然だ。今この瞬間、作ったのだからな」

「……そっ。実績無しか」

「だから作ろうとしているのではないか」

 クティラの冗談をテキトーに聞き流し、僕はゆっくりと首だけ振り返らせ、ラルカたちの方を見る。

 包帯だらけで幕末の亡霊のようになっているラルカ。そんなラルカの頭を撫でるリシア。その隣に座るサラとティアラちゃん。四人は四人だけで楽しそうに会話に花を咲かせている。

 あんなに凄い戦いを繰り広げていたのに、ティアラちゃんもラルカも余裕そう。特にラルカは、一見重症なのに一番元気だ。

「……ふふふ。どうだったエイジ。我が妹、ティアラの凄まじさ、目の前で体験したのだろう」

 と。クティラがドヤ顔をしながら、僕の腹を突いてそう言った。

 ので。僕はラルカたちから視線を逸らし、下を向きクティラを見て、感想を述べる。

「凄かったよ……クティラも本気を出せばあれくらい、出来るのか?」

「む……答えは否だ。私程度では無理だな……例え成人して力を得たとて、今のティアラにすら敵わないだろう。それほど差がある……私とティアラの間にはな」

「……今はどうなんだよ。僕と契約をして、完全一心同体になっている今。成人した吸血鬼と同じくらいの力が出せるんだろう?」

「うむ……まあ、ギリギリティアラより弱い、くらいだな」

「……そうか」

 どこか遠い目をして話すクティラに、僕は少し疑問を覚えた。

 あまりにも異常に彼女は、ティアラちゃんを持ち上げている気がする。才能の差、とかは僕にはよくわからないが、それでも自分を卑下しすぎだと思う。

 普段から自信満々なドヤ顔をしたり、基本偉そうに喋る彼女はどうしてそこまで、ティアラちゃんに対しては遠慮がちなんだろう。

 本当に嫉妬しているだけなのだろうか。本当に自身に嫌悪感を抱いているだけなのだろうか。クティラのする、ティアラちゃんへの遠慮は。

「……む? どうしたエイジ。考え込んだ顔をして」

「……なんでもないよ」

 僕はクティラに察せられないよう、興味を持たれないよう、彼女から顔を逸らしそう答える。

 完全一心同体とは言え、結局は他人。どれだけ考えても想像しても、僕の思い浮かべるクティラの気持ちは、僕の知っているクティラが抱く気持ちで、目の前にいるクティラが抱いている気持ちとは絶対にイコールにはならない。

 疑問を抱くことがまず間違っているのかもしれない。ならばもう、考えるのはやめた方がいいのかも。

 兎にも角にも、今は一日でも早く強くならなくては。

 僕はそっと拳を握り、一人そう違った。

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