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214.おはよう世界

「……ふわぁ……っ……ん……」

 あくびをしながら、目を覚ました僕はゆっくりと上体を起こした。

 眠い。眠い。眠い。

 眠気を抱えたまま僕は目を擦り、何となく辺りを見回す。

 すぐ近くにはリシア。僕に抱きつく形で、静かに幸せそうに寝ている。

 そんなリシアに抱きつくように寝ているのはサラ。普段は整えられた髪も今はボサボサで、パジャマが所々はだけている。

 少し遠くには銀髪赤眼美少女姉妹。お互い抱き合いながら向かい合いながら、小さな寝息を立てながら寝ている。

「……僕が最初に起きたのか」

 確認するように声に出してそう呟き、僕はため息をついた。

 昨日の夜は酷かった。全員の寝相があまりにも酷すぎて、全然眠れなかった。

 若干ズキズキと痛むつむじに手を添えながら、僕は昨日の出来事を思い出す。いつの間にか眠ってしまっていたが、何が原因で何が要因で何をきっかけに僕は眠ったのだろうか。それが気になって。

 思い出す、思い返す。されど何も思い浮かばない。

(まあ……別にどうでもいいかっ)

 僕は小さくため息をついてから、両腕を天井に向け伸ばし、それと同時に全身を伸ばす。

 ほんの少し大きな声で唸りながら全身に力を入れ、それを抜くと同時に大きく息を吐く。これで全身がスッキリとした感じになった。固まりが取れて非常にいい気分だ。

「……さてと」

 小さくそう呟き、僕は器用に体を動かし、抱きついているリシアを起こさないように、慎重に彼女から離れる。

 彼女の束縛から逃れると同時に僕は立ち上がり、改めて身体を伸ばしてから、誰も踏まないよう何も踏まないよう、僕はゆっくりと部屋の外に出た。


 *


「はいエイジ。あったかいものどうぞ。コーヒだよ」

「あったかいものどうも……リシア」

 朝の十時辺り。僕以外の全員も起きた休日の朝。僕たちはいつもと同じように、全員でリビングに集まっていた。

 椅子に座っているのは僕とリシアの二人だけ。残りの銀髪赤眼美少女姉妹とサラは、ソファーで溶けている。

「いい朝だねぇ……私、毎日こんな朝を迎えたいな」

「……そうだな」

 ココアを口に含みながら、何気なく呟くリシア。僕はそんな彼女の言葉に同意しつつ、コーヒーを口に含む。

 シンプルに苦いコーヒー。だがどこか癖になる。だから好きだ、リシアの淹れてくれたコーヒーは。

「あ、リシアお姉ちゃん。ちょっといい?」

「ん? どうしたのサラちゃん」

 と。サラに呼ばれたリシアはココアを机に置きすぐに立ち上がり、僕の元から離れサラの元へと向かう。

 ちょっとそれに寂しさを感じながら、僕は彼女の背を見送りながら、一口コーヒーを飲む。

 苦い。

「やほっ! エイジお兄ちゃん!」

「……へ? ティアラちゃん……?」

 と。いつの間にか現れたティアラちゃんが、僕の隣に席に座りながら、元気よく話しかけてきた。

 僕はそれに反応し彼女の方を向き、コーヒーを机の上に置き彼女の目を見る。するとティアラちゃんはどこか嬉しそうにニコッと笑みを浮かべ、僕の脇腹を突いてくる。

「昨日の約束……果たしに来たよ! 早速始めようよ!」

 手をグーにして、おーっと言った感じにそれを振り上げるティアラちゃん。

 僕は何となく彼女の手振りを真似しながら、力強く頷いた。

「うん……頼むよティアラちゃん」


 *


「というわけで庭にやってきたよ! お姉ちゃんから借りた便利道具、ツゴーイーイナーも作動済み! だから始めよう! エイジお兄ちゃんの調教各種虎の巻!」

「えっと……よろしくお願いします」

 午前十時を少し過ぎた頃。僕はティアラちゃんと二人っきりで、庭に出ていた。

 何故ティアラちゃんと二人で庭にいるのかと言うと、彼女に僕を鍛えてもらうために。

 先日の騒動、ティアラちゃん暴走騒動。それを経験して僕は、自分があまりにも弱すぎることを改めて実感したからだ。

 せっかくクティラと契約して、ある程度人間を超えた力を持っているというのに、それを全く活かせていなかった。避けるだけ騒ぐだけで僕は、リシアに頼り切りだった。

 そんな自分を変えるために、僕は恥を忍んでティアラちゃんに頼んだのだ。僕を強くしてくれ、戦えるようにしてくれと。

 本当はクティラに頼んでも良かったのだけれど、何となくティアラちゃんの方が頼りになりそうだったから、僕は彼女にお願いをした。あとクティラは絶対僕を揶揄うし、それが面倒くさそうで。

「とりあえずエイジお兄ちゃんは初歩中の初歩、ビームを撃てるようになりたいんだよね?」

「まあ……うん。とりあえずは」

「というわけで私! ビームのエキスパートを呼んでおきました! ではどうぞ! さあエイジお兄ちゃん! 拍手でお迎えください!」

「え、あ、うん……」

 僕はとりあえず、ティアラちゃんに言われた通りに拍手をする。あんなに凄い力を持っているティアラちゃんをして、ビームのエキスパートと呼ばれる人。一体どんな人なんだろう。

「ふはははははは……! 待たせたね……いいや寧ろ待たされたッ!」

 と。僕が拍手をし始めると同時に、どこからか聞き覚えのある笑い声が聞こえてきた。

 確かに聞いたことのある声、聞き覚えのある声、絶対に知っている声。だが微妙に顔が思い浮かばない。

「ふははははッ! ふはッ! ふはッ! ふはははははははははははははッッッ!」

 尚も姿を表さずに笑い続けるエキスパート。だんだんイライラしてきた。早くしろと叫びたくなる。だが僕は教えを乞う立場、それ故強い言葉は出せないので、必死に我慢する。

「お待たせ皆さん私が来たよ! 究極最強最高無敵を夢見るウルトラハイパーミラクルビューティキューティ魔女! そーんな! このラルカ・エメ・ジェメレンレカ・ジテム・ジタドール・ヴゼムジュビアン・ラフォリアムテージュ・アドレを呼んだのはそう! そこにいるティアラ・ウェイト・ギルマン・マーシュ・エリオット・スマス・イン・ヤラ・イププトちゃんだよね!」

「はいっ! ティアラ・ウェイト・ギルマン・マーシュ・エリオット・スマス・イン・ヤラ・イププトです!」

「ティアラ・ウェイト・ギルマン・マーシュ・エリオット・スマス・イン・ヤラ・イププトちゃん! このラルカ・エメ・ジェメレンレカ・ジテム・ジタドール・ヴゼムジュビアン・ラフォリアムテージュ・アドレをお招きいただきありがとう!」

「いえ! こちらこそ! ラルカ・エメ・ジェメレンレカ・ジテム・ジタドール・ヴゼムジュビアン・ラフォリアムテージュ・アドレお姉ちゃん!」

(カタカナばっか……)

 わざとか、とツッコミたくなるほどわざとらしく、各々の長い名前を律儀にフルネームで呼ぶティアラちゃんとラルカ。

 ていうかそうだ。先の笑い声。どこかで聞いたと思ったらラルカだ。なんだか随分久しぶりに見る気がする。

 一応先日の全員集合パーティーにもラルカは居たが、会話を交わした覚えがないからだろうか。本当に久しぶりな感じ。

「あはっ! やほやほエイジちゃんお久しぶり! そういえば昨日は居なかったよね? どこに行ってたの?」

「え!? あー……あ……いや、色々あって……」

 忘れかけていたが、そういえばラルカには面倒くさい設定があった。

 それは、彼女は女の子の僕しか知らないという設定。初めて会った時、僕は完全一心同体だったが故、本来の男の姿でラルカと会ったことはないのだ。すぐに妹の若井さんを見つけて、家から出ていったし。

(……あれ? そういえばなんで若井さんとラルカ……名字というか……ファミリーネーム? が違うんだろう……?)

「ふーん……兎にも角にもお久しぶりだね! 会えて嬉しいよ超嬉しい!」

 僕が疑問を思い浮かべると同時に、両手をパンっと合わせ、花が咲いたかのような満面の笑みをラルカは浮かべる

 中身と違って見た目は可愛い、というより綺麗だから、時折こういう仕草をされるとドキッとしてしまう。まあ、すぐに発する言葉で台無しになるから、一瞬しかならないけれど。

「それじゃあエイジお兄ちゃん! 早速ラルカお姉ちゃんに教えてもらおっ! ビームの撃ち方!」

「へ……? エイジお兄ちゃん? ドユコト?」

「そゆこと!」

「ほー……エイジちゃん、中々やっべぇ趣味してるね」

「……ラルカにだけは言われたくない」

 ニコニコ笑顔のティアラちゃん、同士を見つけたかのように嫌な笑みを浮かべるラルカ。対照的な笑みを浮かべる二人が、僕を見てニヤニヤとする。

「まあまあそれじゃあ兎にも角にも兎にも角にも! 銀髪赤眼美少女エイジちゃんにご指導、させていただこうかな! この超絶天才ガチヤバマジヤバウィッチ、ラルカ・エメ・ジェメレンレカ・ジテム・ジタドール・ヴゼムジュビアン・ラフォリアムテージュ・アドレが!」

 瞬時に取り出した箒をくるくると回し、それと同時に自身もくるくると回転させ、止まると同時に箒の先端でラルカは、僕をビシッと差す。

「次回に続くッ!」

「……次回ってなんだよ?」

「言ってみただけ! かっこいいでしょ……? ふふんっ。では改めて! 次回に続くッ!」

「わーい! 次回に続く次回に続く!」

(今更だが大丈夫なのかな……ラルカに任せて)

「ふふふふ……! まーあ!? この私にかかればー!? 一日でエイジちゃんをめちゃかわキラかわめたかわ系銀髪赤眼魔法少女にする事なんて容易い容易い容易いことなんですけどー!?」

「わーい! 銀髪赤眼魔法少女エイジお兄ちゃんだー!」

(……ダメそう……!)

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