205.幼き頃の記憶とのギャップが酷い
「はぁ……はぁ……アーちゃん……私……震えるよハートが……燃え尽きるほどにヒートだよ……うふ……うふふ……あははっ!」
「マジで辞めて欲しいんだけど……」
愛作家に遊びに来ていた私、若井アムルは今何故か、お姉ちゃんに捕まっていた。
ぎゅっと力強く抱きしめてくるお姉ちゃん。酒臭くてぶっちゃけ嫌。私の知ってるお姉ちゃんはこんなに酒臭くなかったもん。
「ねぇねぇアーちゃん……聞きたかったんだけどさぁ……?」
と。お姉ちゃんが瞳孔を渦巻かせながら、低い声色で、おどろおどろしい雰囲気で、私に話しかけてくる。
だから私は、思わず首を傾げながらお姉ちゃんの顔を見た。なんで急に低い声出してんだろう、この人。
「私気になってるんだよねぇ……アーちゃんさぁ……あの男の子とどういう関係なのよさ……?」
「男の子……? えっと……どっちの?」
「今もいる方に決まってるでしょ! えっとねぇ……あれ……名前なんだっけあの子……」
「……愛作エイジくん?」
「んわぁ? エイジくんじゃなくてエイジちゃんだよ……?」
「……? 別にどっちでもいいよ」
低い声色して、シリアスな雰囲気出してるくせに、どこかふにゃふにゃしているお姉ちゃんに私は呆れ、聞こえるようにはっきりと大きくため息をつく。
いくらなんでもお酒を飲みすぎだと思う。しかも一人だけ成人済みだから、一人だけ酔っ払っていて浮いている。身内として、正直見ていてとても恥ずかしい。
お姉ちゃんは連れてこない方が良かったかなと少し後悔。でもクティラちゃんが直接誘っちゃったみたいだし、それで来ないでなんて言ったら暴れそうだし、ていうか普通にそんな事言えないし。今日、私がこんな目に遭うのは必然だったのだろう。
ので。私はもう一度、お姉ちゃんに聞こえるようにため息をついた。せめてもの嫌味、せめてもの抵抗として。
「それで実際のところどーなのアーちゃん! あの男の子とアーちゃん、どういう関係なんさー!」
「……ただのクラスメイトだけど」
「はいダウトー! んなわきゃないじゃん遊びに来ててさー!」
「クティラちゃんに誘われたからなんだけど……」
「言い訳と建前を器用に使わないで!」
「……マジうざい」
最近、私はお姉ちゃんが嫌いになってきている気がする。最近のお姉ちゃんはなんていうか、しつこくてうざい。
いや、私が覚えていないだけで、昔からお姉ちゃんはこうだったのかもしれない。昔は幼かったから、私にたくさん構ってくれるお姉ちゃんって感じで懐いていた。けど実際の実態は、行きすぎたシスコンバカ。いつでもいつまでもアーちゃんアーちゃん五月蝿いし、しつこいし、依存しすぎている。
(……本気で嫌いにはならないけどさ。やっぱちょっと……距離取りたくなっちゃうなぁ)
私はもう一度ため息をつく。謎に自分の成長を実感して、それとお姉ちゃんのダメさを再度認識して。
「アーちゃん……お酒無くなったよぉ……持ってきたお酒がなくなりましたぁ……買ってきてちょ……」
「やだ」
「んぇえ……ペチって叩かないでよ……でもそんなアーちゃんが好きぃ……」
「……はぁ」




