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202.シスター・ミーティング

「改めてこんにちは! 進行を務めさせていただきます! クティラ・ウェイト・ギルマン・マーシュ・エリオット・スマス・イン・ヤラ・イププトの妹の、ティアラ・ウェイト・ギルマン・マーシュ・エリオット・スマス・イン・ヤラ・イププトです! 最近の趣味はお姉ちゃんとラブラブすること! 皆さんよろしくお願いします!」

「若井アムルです……。最近の趣味は……えーっと……ショート動画とかかな」

「ひ、広末ケイです……! 書記やります……! 最近の趣味はえっと……色々あるけどカラオケが一番です……!」

「愛作サラです。お兄ちゃん……愛作エイジの妹です。よろしくお願いします。最近の趣味は……えっと……絵を描くことです」

 日曜日の午後。私、愛作サラは変なことに巻き込まれていた。

 どこからか持ってきた机を並べ、どこからか持ってきた椅子に私たちは座らされ、何かしらの会議を始めようとしているティアラちゃんをみんなで見ている。

「それじゃあ早速始めましょう! 第一回! 妹弟会議!」

「……ねえサラちゃん。これ何?」

 ティアラちゃんが元気よく手をあげて開会を宣言。すると同時に、若井先輩が耳元に手を添えながら、そう囁いてくる。

「ごめんなさい……わかんないです」

 私はほんの少し首を傾げながら、申し訳ない気持ちを込めながらそう答える。

 だって本当に知らないんだもん。こんな会議をするなんて、始めるだなんて。

「あのティアラちゃん……私、一人っ子なんだけど参加してもいいのかな……?」

「はい! もちろんですケイさん!」

「……お兄ちゃんたちは何してんだろ」

 元気よくテンポよく進行するティアラちゃんを見ながら、私はなんとなくため息をついた。

 お兄ちゃんたちは今、何故か私たちだけを置いてお兄ちゃんの部屋に向かっていった。正直に言うと、私もあっちのグループに入りたかったかも。お兄ちゃんとリシアお姉ちゃんがいるし。

「さてさて皆さんお待ちかねの議題はこちら! お姉ちゃんとどうやってラブラブになるか! ですッ!」

「ティアラちゃん……一応私、お兄ちゃんしかいないんだけど」

「リシアお姉さんがいるから無問題!」

「んぇ……まあ……そうかも」

 ビシッと指を差され、大声で叫ぶティアラちゃんに私は物怖じしてしまう。だってすごく自信満々に言うから。クティラちゃんそっくりのドヤ顔で。

「はいはーいティアラちゃーん。私、別にお姉ちゃんとそんなに仲良くならなくてもいいんだけど」

 と。若井先輩が手をあげティアラちゃんに意見する。するとティアラちゃんはその場で立ち上がり、器用に足を動かして物にぶつからずに一回転をする。そしてそれを終えると同時に、ビシッと人差し指で若井先輩を差した。

「アウトォォォ!」

「アウト!?」

「そう……アウトだよアムルお姉ちゃん! 姉妹は仲睦まじくなければならないと、何かしらの生命が誕生したその時に実は決まっているんですッ! お姉ちゃんは妹を愛し……妹はお姉ちゃんを愛し……! そうして絆を深め、親愛をより深め! ラブになるのッ! 決まっているからには……それを成し遂げなければなの!」

「えー……別に姉妹だからめちゃくちゃ仲良しにならなきゃいけないなんて道理なくない……?」

「ふふん……アムルお姉ちゃんもまだまだ! まだまだ! まだまだだね!」

「さ、三回も言うほど……?」

「わ、私も仲良くしてた方がいいと思うな……! せっかくの姉妹なんだから……!」

「……別に……そんな……仲良くしたくないってわけじゃないし……あーもーサラちゃん! ぎゅー!」

(若井先輩かわいそ……)

 みんなからほんのちょっぴり攻められたからか、若井先輩は目尻に一粒涙を浮かべながら、私に抱きついてきた。

 私はそれを拒むことなく全身で受け止め、ついでに頭を撫でてあげる。髪がサラサラのふわっふわのツヤツヤで撫で心地が良すぎる。すごいこの人。

「そう言えばアムルお姉ちゃんのお姉ちゃん、ラルカお姉ちゃんって凄い人だよね。なんていうか……すごく、自由って感じ」

「……そこが妹として一番嫌ーい」

「私は妹としてそこに魅力を感じるかも! サラお姉ちゃんはどう?」

「……え? ラ、ラルカを姉とした場合……?」

 若井先輩の頭を撫でながら、私は思わず天井を見上げる。

 急にラルカの姉としての魅力を聞かれても、正直何も思い浮かばない。同じ屋根の下を数時間過ごしたくらいで、私、全然ラルカと関わってないし。

 以前ファミレスでちょっと会った時もあったっけ? でもそれも数分だし。やっぱり私、ラルカのことをよく知らない。

 けれどそれでも思い浮かべなければ、何かしら答えなければいけない。だって、若井先輩とティアラちゃんが期待の眼差しをすごく向けてくるんだもん。

「あー……えー……おっぱいが大きい……とこかな」

 私はとりあえず、なんとなく印象に残っている部分を憧れとして答えた。確かラルカは、私の知り合いの中で一番胸が大きかったはずだ。

 うん、多分そうだ。あとはビーム撃てるくらいしか覚えてない。

「へー……サラお姉ちゃん、そこなんだ」

「……逆に言えばそこしか魅力無いって事でしょ? わかるよサラちゃん……そこ以外ダメすぎてそこしか思い浮かばなかったんでしょ?」

「えー……まあ……そうです」

 私の答えに対しての若井先輩の反応があまりにも酷すぎて、ラルカがちょっと可哀想に思えてくる。

 でも確かに。ウチに来た時も窓をぶっ壊して突撃してきたり、ビーム撃ってリシアお姉ちゃんとバトルしたり、散々だったような。

(……ティアラちゃんの言う通り、自由って言葉が似合うんだなぁ)

 私は思わずため息をついてしまった。またいつか、変な魔法を使って巻き込まれたりしたら面倒くさそうだなぁ、と。

「それじゃあラルカお姉ちゃんの話題はもう終わりねっ」

(……ラルカかわいそっ)

「というわけで次はリシアお姉さんの話題ね! リシアお姉さん凄いよね! 強い! 綺麗! 素敵の三拍子! お姉ちゃんには負けるけどぉ……それでもとっても素敵なお姉さんだよ!」

「リシアちゃんかぁ……私、同級生としてしか付き合った事ないしなぁ……お姉ちゃん力とかその辺はわかんないや」

「わ、私も安藤さんのお姉ちゃん力? はよく知らないなぁ」

「私は……」

 みんなに続いてリシアお姉ちゃんの魅力を語ろうとした時、私はそれを発する直前で止めてしまった。

 あまりにも沸きすぎたからだ。リシアお姉ちゃんの魅力、彼女の素晴らしいお姉ちゃんぶり、大好き好きすぎなリシアお姉ちゃんの素晴らしさが。

(やっば……これ、喋りすぎちゃうなぁ。一言で止めておこ)

 みんなの視線をほのかに感じながら、私は手を口元に添え、小さく咳払いしてから──

「私は……大好き。リシアお姉ちゃんが大好きだなっ」

「……へぇ。サラちゃんその言い方、ガチラブじゃん」

「そ、そうなんだねサラちゃん……!」

「サラお姉ちゃんもリシアお姉さんの事が好きなんだね!」

 どこかニヤニヤしながら揶揄うように言う若井先輩。しどろもどろに共感してくれるケイさん。両手を合わせ嬉しそうに微笑むティアラちゃん。多種多様な反応が、私の言葉に返ってきた。

 なんか、私だけ一人一人丁寧に反応されて恥ずかしい。最後に言ったからかな。

「あ、ねえねえサラお姉ちゃん!」

 と。ティアラちゃんが私の頬をプニプニと突きながら、ニコニコとしながら私の名前を呼ぶ。

 私がそれに反応し、思わず首を傾げると、それと同時にティアラちゃんはゆっくりと口を動かし──

「エイジお兄ちゃんとリシアお姉さん……サラちゃんはどっちが好きなの?」

「……へ!?」

 予想外の質問に、私は思わず大きな声を出しながら驚いてしまった。

 それと同時に、私に抱きついて若井先輩が手を離し、それで己の両耳を塞いだ。多分恐らくきっと、私の叫び声で耳を痛めたんだと思う。ごめんなさい。

(じゃなくてじゃなくてじゃなくてぇ……!)

 私は思わず頬に両手を添えてしまう。すごく熱い、めちゃくちゃ熱い、火傷してしまいそうなほどに熱い。

 胸がドキドキ高鳴っている。うなじに汗が滴る感覚。どこにも焦点を当てたくなくて、目がずっとキョロキョロと動いて動いて動きまくって落ち着かない。

「サラお姉ちゃん顔真っ赤……」

 と。ティアラちゃんがボソッと呟く。

 わかってはいたけれど、他人から改めて指摘されると、それをより実感してしまい、更に帯びる熱が熱くなっていく。

「サラちゃん……あはっ、可愛いじゃんっ」

「サラちゃんサラちゃん……! エイジくんと安藤さん……どっちが好きなのかな……!?」

 みんなの視線を鋭く感じる。顔が真っ赤な私を、恥ずかしがっている私を、答えたくない答えをこの場にいる全員がワクワクと期待しながら待っている。

 私は、ゆっくりと俯きながら、察してはいるけれど全員の顔を瞬時に一瞥し表情を把握。当然予想通り、全員が全員私に期待を向けていた。

 これはきっと、私が答え終わるまで終わらないのだろう。答えないと、答えたくはないけれど、それでも答えないといけない。

 私は、私は、私は。当然、私が好きなのは──

「……やっぱり無理ー!」

「あ! サラお姉ちゃん逃げた! 追いかけようみんな! 気になるもん!」

「絶対聞かせてもらうんだからサラちゃん! 魔法少女から逃げられると思って!?」

「わ、私は待ってようかな……」

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