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201.妹ヒロインが多すぎる

「ふふふ……というわけでだ皆々様。よくぞ集まってくれた……まずは自己紹介と行こうか。私が議長のクティラ・ウェイト・ギルマン・マーシュ・エリオット・スマス・イン・ヤラ・イププトだ。よろしく頼む。ちなみに、最近の趣味はエイジの本棚漁りだ」

「えー……書記として愛作さんに雇われました、咲畑咲です。なんかよくわかんないけど……よろしくお願いします。最近の趣味は……えーっと……特にないです」

「はーい! ラルカでーす! この世で最も偉大で最高の究極ウルトラ魔女目指してまーす! 好きなものはアーちゃん! 推しは当然アーちゃん! 恋人はアーちゃん! そしてアーちゃんのお姉ちゃんです! えっとねぇ……最近の趣味はお酒! そう酒! 飲まずにはいられないッ!」

「安藤リシアです……エイジの幼馴染です。えっと……最近の趣味……サラちゃんの可愛い写真を撮ることかな……です」

「……愛作エイジです。最近の趣味……は……コーヒー?」

「私が呼んだだけあって多種多様だな……さて、ここからが本番ここからが重要ここからが肝心要! 始めようではないか……本日のメインイベントをな」

「……いや、呼んだ理由話せよ」

 日曜日の午後。僕とリシア、ラルカと咲畑さんはクティラに召集をかけられ、僕の部屋に集まっていた。

 どこからか持ってきた机を並べ、どこからか持ってきた椅子に座らされ、僕たちは彼女が言う通り、今まさに何かしらの会議を始めようとしてる。そんな雰囲気を、ここにいる者はクティラ以外誰も概要すら知らないのに纏っている。

「では……改めて、始めようではないか」

 机の上に肘を置き、手を絡ませそれで口元を隠しながら、瞳を真っ白に輝かせながらクティラがそう言った。

 何も知らない僕たちは、彼女が議題を告げるのを待つことしかできない。

「……早く言えよ」

「そう急くなエイジ……急がば回れ、急がば回れだ」

「……いいから言えよ」

「……では始めるとするか。第一回! 兄姉会議をな!」

「……何それ?」

 まるで盛り上がっているかのように叫ぶクティラ。彼女の意図とは正反対に、それを聞いた僕たちは全員同時に首を傾げた。

「えー……今回の議題はこれだ。妹多すぎ問題、だな」

 いつの間にか手に持っていた細いリモコンのようなボタンをポチッとクティラが押す。すると、彼女の背後に備え付けれていたモニターが光り「妹が多すぎる」と言う文字がデカデカとそこに映し出された。

「私、エイジ、リシアお姉ちゃん、ラルカにはそれぞれ妹がいるわけだが……エイジ、お前の妹は何人だ?」

 ビシッと僕を指で差して問うクティラ。質問の意図が分からず思わずまた首を傾げそうになるが、それはせずに、僕はとりあえず答えることにした。

「……一人だけど?」

「うむ、知っている。次! ラルカ!」

「んえぇ……? なんですかぁ……?」

 僕の次に指を差されたラルカは、缶ビールを片手にそれを口に含みながら、へにゃへにゃした様子で返事をする。

 顔が若干赤く、肌もところどころ赤い。どう見ても飲みすぎな状態。久しぶりに会ったけど彼女、こんな酒豪キャラだっただろうか?

「答えろと言ったのだ。お前の妹の人数をな」

「妹ぉ……? 私の妹はぁ……アーちゃん! そうアーちゃん! アーちゃん……ラァァアアブッッッ!」

「ぴえぇ!?」

 ラルカは彼女の愛する妹の名を叫びながらリシアに抱きつく。当然リシアはそれに驚き、変な悲鳴を上げてしまっていた。

 そんなラルカの様子を咲畑さんはどこか冷めた表情で見ていた。呆れているのか、それとも嫌悪感を抱いているのか。それは、僕には分からない。

「うむ、そうだな。ラルカの妹も一人、アーちゃんただ一人だ」

「そうらよー……そうだよ! 私の愛する妹はたった一人……そう! アー! ちゃん! なの! です! ビシィ!」

「……あの、私、咲畑ですけど」

 酔ったラルカに指を差された咲畑さんは、困惑気味に訂正する。

 だがそれに特にこれといった反応はせずに、ラルカはリシアから手を離すと、ふらふらと立ち上がろうとするが、足に力が入らなかったのか、すぐにまた椅子に座った。

「……さて、問題はここからだ。リシアお姉ちゃん、リシアお姉ちゃんは今……妹が何人いる?」

 相変わらず肘をつきながら、クティラは冷静な口調でリシアに問う。

 するとリシアは困惑気味に、右左と交互に視線を動かした後、首を傾げながら答えた。

「あの……私一応……一人っ子なんだけど……」

「否ァ!!!」

「否ァ!?」

「そうとも否だともリシアお姉ちゃん……ッ! リシアお姉ちゃんにはいるはずだ……たくさんの妹がなッ!?」

「ぴ……ぴぇ……!?」

 リシアが驚き変な声を出すと同時に、クティラがガタッと大きな音を立てながら立ち上がる。

 そして彼女はその場で何故かくるりと一回転をしてから、ビシィッと人差し指でリシアを差した。

「サラは実質的に妹だろう……!?」

「ぴ……! あ、でもうん……サラちゃんは妹かも」

「そして私も妹だ! リシアお姉ちゃんのな!」

「ぴぇ!? そうなの!?」

「そしてそしてティアラまでも妹だ! 慕っているだろう……リシアお姉ちゃんをお姉さんと!」

「う……そう言えばティアラちゃんも私のこと……しかも思い返せばあの子達も慕ってくれてた……!」

「妹が多すぎるのだ! リシアお姉ちゃんには!」

「……だからどうだってんだよ」

 よくわからない茶番を繰り広げる二人に、僕はつい、呆れ気味に言ってしまった。

 確かに言われてみればリシアはお姉ちゃんとよく慕われている。何せこの家に住む住人、僕以外の全員が彼女を姉と慕っているのだから。

 僕は一度、なんとなくため息をつく。そして、この茶番を僕以外の人はどう見ているのかが気になり、辺りを見回す。

 ラルカは顔を真っ赤にしながら、また新しい酒を開けていた。止めた方がいいのだろうか、このアルコール中毒魔女は。

 咲畑さんはと言うと、存外ニヤニヤとしながら、楽しげに二人のやり取りを見ていた。意外かも。

 と、ここで。咲畑さんがゆっくりと手を上げた。

 当然それに反応するクティラとリシア。二人は一旦会話を止め、静かにゆっくりと咲畑さんの方を見る。

「一応私も妹キャラなんだよねぇ……」

「む……そうなのか? 咲」

「そうなんだ……」

「だから私も安藤さんのこと……リシアお姉ちゃんって呼んじゃおうかな♡」

 ニコッと、どこか悪戯っぽく笑みを浮かべる咲畑さん。

 そんな彼女を見て、彼女の発言を聞いて、リシアとクティラは目を見開き、驚いた様子を見せた。

「ぴぇ!? なんでそうなるの!?」

「また増えたぞリシアお姉ちゃん……! マズイな……このままで十二人……否ッ! 十三人の妹が出来てしまうぞ!」

「十三人!? なんで!? ていうかなんで十三人って言い切れるの!?」

「そうすでに決まっているからだッ!」

「決まってるの!? すでに!? 誰が決めたの……!?」

「お姉ちゃん、お姉ちゃま、お姉様、おねぇ、姉様、ねえや、姉君様、姉上様、お姉たま、姉貴、姉くん、姉ちゃま、ねえちゃん……多種多様な呼ばれ方をするだろう……」

「ぴぇ……そんなに……ぴぇ……!」

「では次の議題はこれで決まりだな! リシアお姉ちゃんと十三人の妹をどうするかだ! 咲! モニターの表示を変えろ!」

「……はーいっ」

 ビシィと咲畑さんを指差すクティラ。すると咲畑さんはそれに頷いて返事をし、いつも間にか持っていたリモコンのボタンを押す。

 すると。モニターに表示されている文字が「妹が多すぎる」から「お姉ちゃん大好き♡」へと変わった。

「さぁ……我ら兄と姉の力を総括させ、この問題に立ち向かおうぞ!」

「んー……? おー! 最強の魔女の力見せたるぞー……おお……おー!」

「十三人……覚えられるかな十三人も……ぴぇ……ぴぇ……」

「……帰っていいかな、僕」

 変なことを自信満々に言い放ちドヤ顔を披露するクティラ。それを真に受け、オロオロと辺りをキョロキョロ見回したり、手を絡ませたり解かせたりして慌てるリシア。酒を飲みながら体全体を動かしながらしどろもどろに叫ぶラルカ。どこか楽しげに、ノートに何かを書き込んでいく咲畑さん。

 僕はそんな彼女たちを見ながら、思わずため息をついてしまった。

(……これじゃ僕、クティラに言われたまんま、冷笑系主人公だな)

 とは言え、ノリについていけないのだからしょうがない。そう、しょうがないじゃないか。

 僕はそんな自分に、こんな状況に、もう一度ため息をついてから。机に腕枕を作り、ゆっくりとそこに伏せ

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