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196.理解しているからこそ不安なこの立ち位置

「……もう午後五時五十五分五十五秒頃かぁ」

 私は、膝枕をしてあげてるクティラちゃんの頭を撫でながら、ポツリと呟いた。

 ティアラちゃんはお手洗いに行っているのでいない。そのせいか、彼女がいる時よりもクティラちゃんが私に甘えている。気がする。

「……存外遅いものだな、エイジたちの帰り」

 と。クティラちゃんがギリギリ聞こえるくらいの声量で呟く。

 私はそれに共感を得て、何も発しはしないが小さく頷く。

 せっかくの土曜日なのに。せっかくのお泊まりデーなのに。エイジとサラちゃんとあまり一緒に居られないのは正直悲しい。二人のことが大好きだから。

「……リシアお姉ちゃん。聞きたいことがあるのだが?」

「んー……?」

 クティラちゃんが私を見上げながら言う。私はそんな彼女に敢えて視線を向けずに、了承の意を伝えるために小さく唸る。

 それを察してくれたのか感じ取ってくれたのか。クティラちゃんは一度寝返りを打った後、話を再開した。

「リシアお姉ちゃんの思う、妹とはなんだ?」

「え? サラちゃん」

「……そう言うことではなくてだな」

 返事を間違えてしまったからか。クティラちゃんがどこか呆れ気味にため息をつく。

 それが太ももに当たり、少し生暖かくそしてこそばゆい。人生で初めてかもしれない、太ももに向かってため息をつかれたの。

「一応和解できたとは言え……やはり私は心配なのだ。ティアラの望む、クティラ・ウェイト・ギルマン・マーシュ・エリオット・スマス・イン・ヤラ・イププトとして彼女接していられるのか。妹の望む……理想の姉妹関係を築けているのか」

「……それで、どうして妹の定義について私に?」

「リシアお姉ちゃんは私が見てきた中で最も姉らしく最も妹と友好な関係を築き保てている、スーパーウルトラお姉ちゃんだからだ」

「んー……そう言われてもなぁ」

 正直、私は返答に困っていた。私の思う妹像、私が日頃感じている妹像について答えればいいんだろうけれど、そんなの普段意識していないから言語化が難しい。

 私はサラちゃんが可愛いから、あの子がとってもいい子で可愛いから。そして、私に素直に可愛く大胆に華麗に丁寧にダイレクトに甘えてくれるから、私もそれに全力で返しているだけ。

 クティラちゃんに対しても、ティアラちゃんに対してもだ。彼女たちが私を姉として、目上の人として、頼れる人として、信頼できる人として、甘えてもいいんだと素直になってくれて。そうして私を形作ってくれるから、私は私として彼女たちを甘やかして撫で撫でしてあげられるのだ。

「私にとって妹とは……ティアラとは……大切な家族だ。私の良くないプライド故彼女に対し嫌な気持ちネガティブな感情及び嫉妬心を抱くこともあるが、それでも私を姉として慕い信頼し信じてくれる……物理的にも精神的にも、一番近くにいてくれる大切な存在……それが私にとっての妹だ。だがそれだけでは足りない気がするのだ……価値観のアップデート、それをすべきなのではないかと……私はここ最近思うようになった。ティアラとの喧嘩を経て……再度リシアお姉ちゃんの凄さを認識したが故にな」

「えー……それだけ考えてるなら、それだけでも充分だと思うけどなぁ。クティラちゃん、深く考えすぎなんじゃない?」

「……うむぅ……だが……」

「だってさ……それだけ考えちゃうほどティアラちゃんのことを愛してるなら、もう十分理想のお姉ちゃん、できてるんじゃない? ティアラちゃんだって傍目から見たらクティラちゃんにデレデレだけど……」

「……それでも心配なものは心配なのだ」

「……そっ。クティラちゃん、本当にティアラちゃんのこと……大切に想っているんだね」

 私からプイッと顔を背け、私の太ももにそっと手を添えるクティラちゃん。そんな彼女を私は、微笑みながら撫でてあげる。

「クティラちゃん……そんなに完璧を求めなくてもいいんじゃない? 人間完璧な人なんてこの世に一人もいないよ? 誰だって欠点があるし、一人じゃ出来ない事だってたくさん。でも、自分ができないこと、自分だけじゃ出来ないことがあっても、それが出来る誰かはきっといる。当然逆も然り。それを理解して、補い合って、助け合って、わかりあって、信頼関係築いて、そうして生きていくのが人間だと私は思うな……。あはは……なんてね。ただの女子高生が何人生語ってるんだーって感じだよね」

「……リシアお姉ちゃん」

「ん? なになに?」

「私は一応……人間ではなく、ヴァンパイアだ」

「……それは……それじゃん?」

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