17.作戦会議開催閉会
「さてどうするか……」
「ていうかなんでクティラちゃんは急に現れたの?」
「かくかくしかじかってわけだ」
「へえ……お兄ちゃん、そう言うことなら言っておいてよね」
僕とサラ、クティラの三人は僕のベッドの上に座りながら、会議を始めていた。
どうやってクティラの存在を誤魔化すか、という会議だ。
「妹が出来たとかどうかな……クティラちゃん私より小さいしイケるよきっと」
「バカか……リシアは数年前までこの家に出入りしていたんだぞ? その時クティラが居なかった事情をどう説明する」
「あ、そっか……」
僕とサラ、クティラは三人で唸り始める。
何も思いつかない。一番ベストなのはクティラの存在を認知させないことだったのだが、それはすでに失敗している。
だからこそクティラがこの家にいる理由、現れた理由を説明しなければいけないのだ。
それが全く思いつかない。銀髪の赤い眼を持つ美少女だなんて、どう説明すれば納得させられるんだろう。
「お父さんかお母さんに隠し子がいたとか……?」
「……一歩間違えたら大問題になりそうだからダメだな」
「留学生がホームステイしに来ました! とかは……?」
「家の主人たる両親がいない状態でホームステイって無理がありすぎじゃないか……?」
「……キャラメルのおまけだったとか?」
「もう少し真面目に考えろよ」
「だああああああ! じゃあ私ばかりじゃなくてお兄ちゃんも考えてよ! 意見出したらそれに文句言うだけのすっとこどっこいクソお兄ちゃん!」
「ぐ……っ!」
僕はつい気圧される。正論と大きな叫び声に押され、つい後退り。
サラの言ってることは正しい。正しすぎる。だから僕も必死に脳を回転させ、考える。
「……遊びで黒魔術本を使ったら成功しちゃった、とかどうだ?」
「意味わかんないから却下!」
「えっと……竹林を散歩していたら光る竹があって、それを割ったら中から女の子が。とか?」
「まんまじゃん。かぐや姫? って聞かれるじゃん」
「ぐ……じゃあ! 宇宙から飛来してきた地球侵略を目論む戦闘民族だったとかはどうだ! 大人しいのは頭を打ったから!」
「バカじゃないの!? 宇宙人なんているわけないじゃん!」
ビシッと僕を指差しながら、サラは立ち上がってそう叫ぶ。
ムカッときた。僕も思わず立ち上がり、サラを指差しながら叫ぶ。
「お前のキャラメルのおまけよりマシだろ!」
「はあ!? バカお兄ちゃん! 間抜けお兄ちゃん!」
「んだとコラ! 虚弱貧弱無知無能な妹が!」
サラが睨んでくる。僕もそれに合わせ彼女を睨みつける。
思わず僕は拳を握りしめた。それと同時に、サラも拳を握りしめる。
やはり僕たちは兄妹のようだ。血が繋がっていて、同じ親から生まれた似たもの同士。
これはもう、このケンカはもう、殴り合いで解決するしかない──
「サラ! ミラクルスペシャルウルトラスーパーメガトンパンチィ!」
「エイジ! ミラクルビーチフルスーパーバリバリパンチィ!」
「落ち着けバカ兄妹」
「あいたっ!」
「いてっ!」
僕とサラの拳が交わる寸前、クティラが目にも止まらぬ速さで動き、僕たちを軽く蹴飛ばしてきた。
はあ、とため息をつくクティラ。呆れた顔で僕とサラを見てくる。
「シンプルに遠い親戚、って事でいいだろう……そんなに深く悩む事じゃあない」
それを聞いて、僕とサラは同時に目を合わせ、呟いた。
「……それでいっか、お兄ちゃん」
「……うん」
*
「というわけで! 親戚のクティラちゃんでした! 今遊びに来てるんだよ!」
「親戚のクティラだ。クティラ・ウェイト・ギルマン・マーシュ・エリオット・スマス・イン・ヤラ・イププトという名前だ。よろしく頼むぞリシアお姉ちゃん」
「……名前長いね」
いまいち腑に落ちないような顔をしながら、リシアが呟く。
そして彼女は僕をチラッと見てから、静かに呟いた。
「……海外の子?」
ほんの少し首を傾げ、頭の上に文字通りはてなマークを浮かべるリシア。
僕は何も言わずに、クティラの手を引っ張った。
「リシアはサラと何か話があるんだろ? 僕とクティラは邪魔しないように部屋に戻ってるよ」
「ん? あ、うん……ごめんねエイジ」
「じゃあ私の部屋行こっかリシアお姉ちゃん」
僕はクティラの手を取って、サラはリシアの手を取って、それぞれの部屋へと向かっていく。
とりあえず何とか誤魔化せたみたいだ。僕はそっと、安堵のため息をついた。




